• 木下龍太郎

    「336」
  • 京紅

    京紅

    枕の下を 泣きながら水が流れる 高瀬川眠るあなたに 背を向けてああ 京紅(きょうべに)でわかれ化粧の 紅を引く格子造りの 名残り宿想い出づくり 鞍馬(くらま)まで足を伸ばした 北嵯峨(きたさが)もほんの短い 旅だけどああ しあわせな夢を見ました 私なり欲を言ったら つらくなる女の恋の なきがらを流す夜明けの 高瀬川みら...
  • 幸せに遠い岬

    幸せに遠い岬

    海鳴りに 山背の風音(かざおと)交じっています漁火を 見つめる心が凍えています海にこの身を 沈めたら愛の傷あと 消えますかああ さいはての宿は幸せに一番遠い 岬のはずれです誰かしら 昔の恋唄うたっています同じよに 理由(わけ)ある女が泊っています酔って愚痴など 言い合えば痛み半分 取れますかああ さいはての宿は幸せに一...
  • あの人だから

    あの人だから

    あんな男と 別れなさいとお店の友だち みんなに言われるわ苦労ばかりと 思うけどわたしがいなけりゃ だめになるあの人だから 暮らしてみるわもうしばらくは嘘も平気で ついたりするが根っからいけない 人とは思えない駅へ迎えに 来るようなやさしい心も 持っているあの人だから 暮らしてみるわもうしばらくは若くないから 心のささえ...
  • 能登絶唱

    能登絶唱

    袂(たもと)でかばう 頬を打つ能登半島は あられ雪負けて弱音を 吐いたなら母を泣かせた 甲斐がない愛をつらぬく 道行は波も試練の 日本海親の目忍び 夏の旅キリコの祭り 恋路浜愛の証しに 女ゆえあの夜(よ)許した 何もかもまるで二人の 胸の炎(ひ)が燃えていたよな 海花火間垣(まがき)を抜ける 風の音能登半島は 虎落笛(...
  • 娘道成寺

    娘道成寺

    恋の「いろは」は 誰からも習わなくても 覚えます募る思いを 知りながら逃げる男の 憎らしさ待って 待ってください あなた娘ひとりの 道行(みちゆ)きは桜吹雪も 石つぶて越すに越せない日高川(ひだかがわ)……道成寺(どうじょうじ)初心な未通女(おぼこ)も 恋衣(こいごろも)着れば情けに 溺れます水じゃ消せない 未練火が肌...
  • 男華

    男華

    酒が入れば 喧嘩もするがやけに気が合う 男華腹を割っての 腹を割っての 話であれば俺も性根を 据えて聞く縁もゆかりも ないはずなのに同じ血筋か 前の世は惚れる女子は 惚れる女子は いつでも同じ意地がぶつかる 恋仇上げて呉れるか もしもの時は折れた線香の 一本も言えばお前は 言えばお前は にっこり笑い俺も一緒に 行くと言...
  • 夜まかせ

    夜まかせ

    見えないようだね 待ち人あなたも塞がらないのね 貴方の隣りも降られ同士の 関係(あいだ)ならこのまま別れちゃ 行けないね女は酸っぱい リンゴより完熟トマトよ 食べるなら北の男と 南の女で名前どうでも いいじゃない大人の恋は 大人の恋は 成り行きまかせ夜まかせどうするつもりよ 私を酔わせてとってもきれいさ 酔ってる女はこ...
  • 愛々傘

    愛々傘

    良いことだけの 一生ならばこの世に苦労の 二字はない片袖濡れても 肩寄せ合えば凌げる冷たい 冬時雨愛々傘は 愛々傘は貴方と私の こころ傘見た目は野暮な 番傘だけど畳めば明日の 杖になる一人じゃ気付かず つまずく溝(どぶ)も二人で避けてく 水たまり愛々傘は 愛々傘は貴方と私の きずな傘信じて待てば いつかは晴れる二人の人...
  • 道頓堀ブルース

    道頓堀ブルース

    遊びのつもりで 抱かれたはずなのにどうしていつまで 後を引く 後を引くどうやら私は 背伸びが出来るほど器用に出来ては ないみたい浪花おんなの 恋ざんげああ 青い灯 赤い灯道頓堀(とんぼり)ブルースよ男と女の 大人の恋ごっこ何度かしたけど 駄目だった 駄目だった心に消えない 貴方の面影が火が付く素肌に 水を差す浪花おんな...
  • 呼子恋歌

    呼子恋歌

    もつれた愛の 絆の糸は切るより他に ないのでしょうか女ひとりの…佐賀の呼子は 風待ち港旅の栞が 心の灯台(あかり)着いた私は 迷い舟眠れぬままに 寝酒に酔えばいいことだけの 想い出浮かぶ今は恋しい…あなた呼子は 泣き待ち港宿の名入りで 綴った手紙迎え来てとの 片便りあなたの胸に 戻れる風が祈って待てば 吹くのでしょうか...
  • 忘れ針

    忘れ針

    出直すための 二人の旅に仕立てたあの日の 夢紬(ゆめつむぎ)ひとりで片袖 通すたび襟元あたりが ちくりと痛い貴方が残した 傷かしらいいえ 未練という名の 忘れ針繕(つくろ)えなかった 努めてみても二人の間の ほころびは何度も縫っては みたけれどその度解(ほつ)れて 広がるばかり男と女の 夢違いそうね あの日の空しい 針...
  • 止まり木 雀

    止まり木 雀

    涙でうすめた水割りは飲めば飲むほど身に沁(し)みるお酒じゃ未練は消せぬのに今日も酒場へ通いづめあなたの心変えさせた罪は私にあるのでしょう…ああ 止まり木雀(すずめ)のひとり言 ひとり言駄々(だだ)っ子見たいに時々はあまえたいのね男って器用に出来てはいないから足りなかったの尽くし方あなたにとってその女性(ひと)はきっとや...
  • 幾松物語

    幾松物語

    口説く男は 山ほど居るが膝には乗せない 雄猫も浮かれ京都の お座敷だけど呑んだ振りして 捨てる酒桂小五郎に芸者幾松 芸者幾松 エ~操立て新選組の 目を逃れ物乞い姿で 身を隠す三条河原の 橋の下惚れた男の ためならばなんで惜しかろ この命人目忍んで 幾松が今夜も運ぶ 握り飯「桂はん お身体気つけておくれやすもしも もしも...
  • 冬運河

    冬運河

    女がひとり 乗る舟は折り紙細工 紙の舟誰か 誰か誰か心に 抱き止めて沈んだならば 身も凍る憂き世と言う名の 冬運河何度か恋の 時化に遭い舳さえ折れた 紙の舟なんで なんでなんで男は 罪つくりなじんだ酒に 酔いしれて今夜も流れる 冬運河女が夢を 載せるにはこれでも足りる 紙の舟誰か 誰か誰か私に 手を貸して二人で漕げば ...
  • 酔い雀

    酔い雀

    匂いだけでも 酔ったのに別れて知った 酒の味肌寂しさに 止まり木で今夜もひとり 酔い雀ああ 帰りたくないあなたの居ない あの部屋は壁の短冊 品書きはあなたの好きな ものばかり男の夢を あれこれと聞かせてくれた 差し向いああ 帰りたくないひとりにゃ広い あの部屋は店が暖簾を 仕舞い込む合図はいつも 終電車木枯らし走る こ...
  • 乗換駅

    乗換駅

    ほんのひと駅 ふた駅の短い旅で いいのです別れが辛く なるくせにわがまま言って 先延ばし乗換駅へ 着いたなら無理を言わずに 戻ります隣り合わせに 座れても他人の振りを 通します世間を忍ぶ 恋だからいつしか付いた 癖ひとつ乗換駅に 着くまでは肩にください ぬくもりを前は良かった やさしさが今では憎く なるのです涙の整理 ...
  • 忘れな草をあなたに

    別れても 別れても 心の奥にいつまでも いつまでも憶えておいて ほしいから幸せ祈る 言葉にかえて忘れな草を あなたに あなたにいつの世も いつの世も 別れる人と会う人の 会う人の運命(さだめ)は常に あるものをただ泣きぬれて 浜辺につんだ忘れな草を あなたに あなたに喜びの 喜びの 涙にくれて抱(いだ)き合う 抱(いだ...
  • トルコ桔梗

    トルコ桔梗

    あなたが別れ 告げた日にトルコ桔梗が 枯れました花にも心が あるのなら女の哀しみ 分るから私の代りにきっと生命を 閉じたのでしょう青むらさきも 寂しげなトルコ桔梗の 花の色あなたと暮して いた頃は時にはお水を 忘れても枯れずにだまって愛を見つめて いた花なのにひとりの夜は 長いからトルコ桔梗を 買いました無口な女に な...
  • 幸々音頭

    幸々音頭

    ハーアーアー(ソレソレソレ)泣きっ面には 運さえ逃げる(ソレソレ)えびす顔には 福が寄る(チョイサ)泣くも笑うも 一生ならば(ソレソレソレ)せめて陽気に 通りゃんせ端(橋)から端(橋)の皆々様へお手を拝借(ハイハイハイソレ)幸せ 幸せ 幸せ重なる(ハイハイハイ)幸々音頭ハーアーアー(ソレソレソレ)嫌になるような 長雨だ...
  • 人生海峡

    人生海峡

    今日からおまえと 漕ぎ出す船は夫婦(めおと)という名の さだめ舟生きる世間の 荒波に流されようとも 負けないで笑顔で越えよう 人生海峡心と心に 灯した夢が明日(あした)の灯台 道しるべ地図を持たない 旅だけど何とかなるとも 二人なら笑顔で越えよう 人生海峡必ず見つかる おまえとならば幸せ花咲く 宝島嬉し泣きする その日...