月詠み
「25」ナラティブ
産まれたことを嘆いた夜も生きる幸せを識る日もどれも一繋ぎのナラティブこれから起こることの果てに何が残る?一つの闇も許さない、幾多に灯る街の光はされどきっとそうして影を作って人知れず何かを枯らす歪な今も夢じゃないいつも事実は物語より奇怪な筋書きをなぞり僕を嘲け笑うまた流され誰かの意を承く?焦がれながら描いた夢も足掻きなが...秋うらら
色めいて秋うらら別れが近づいて花やいで晴れ霰(あられ)まだ僅か繋がるその葉に触れて落ちて秋の夜長 月の下 独り誰かのことを考えた見上げた ひび割れた空 ぽつり枝の隙から頬に触れた取るに足らないそう何気ない日々のどこかで近づいた終わりが見えて心は形を変えていつだって何かが足りないのねえ この手を取って連れ去ってみてよ色め...死よりうるわし
嗚呼 微睡みの先に映る悪夢また一つ、現実に変わるただの夢で終われば誰だっていつか死ぬけれどどこか他人事でいたんだたかだか数千の歴史のほんの一瞬の出来事パラペットの上に立ちながら乱れた息を整える遠いアスファルトの先に待つのはどんな自由?どう足掻いても同じ結末が待つとしてどんな明日を選ぶだろうそれすらも手のひらの上?今日死...導火
いつの間にか思い出は色褪せて掠れる命の火に焚べた夢は今もまだ光を放ついつか立てた誓いも自然と時効になるかなあの頃は水面の月へ闇雲に手を伸ばしていた正しさの全部が正しいわけじゃない本当に願うものを失くさないように打ち壊してよ 憂いも暗い夜も迷いないその意志で届かない、足りないからこそ望んで求めて征くんだ吹き飛ばしていこう...花と散る
さあ 嘘めく心の臓を奇なる恋の夢を飾るように騙して「ああ」忘れたくないこと忘れたいことがまた増えていく今日も無数の光を並べて眠る「どうでもいいけれど私以外皆幸せそうね」なんて言ってみたりしてほぞを噛む壊れぬように愛して言葉じゃ癒えないこの痛みを鎮めて夢を見るのにどうして眼を瞑らなきゃ駄目かわかった失っては増える些事な憾...春めくことば
ああ 言葉じゃ伝えきれない形のない憶いとかこの胸の痛みの理由を偽りなく描き出せればああ わからないことばかりだ心がどこに在るとかこの世で一番美しいものとは何かとかまだ言わないで答えはいつか見つけてみせるから今はただ歩こうどんな未来の図も古びる絵画もネガも褪せる今を 想いの丈も 忘れてしまうかなきっと望んで得た今日じゃな...夢と知りせば
褪せた世界が色づく瞬間を雨降りの後の明媚をどんな詩なら伝えられるのしがない人生の行く宛てない情を並べた慣れない景色を踏鞴を踏み歩く死ねない理由もどこかで失くしてきたそれでも今も息をする 明日を望んでいる思えば僕だってこんな滅入る季節に胸を躍らす子供だった変わらないこの心を色取る何かを探した夢と知りせば目覚めたくなんてな...救世主
教えてくれ世界の在り方をこの人生の意味と使い方を斯様な生き方でこの運命を、君を救えるのかどれもありがちなトラジディーばら撒いて咲いた痛みに後悔して逝く人生か問えど答えなど出ないが間違いがあるとすればそれは僕の存在だ月よ満ちて 暗を穿て罪には罰が要るだろう?愛は爛れ 哀はやがて明日を奪うだろう教えてくれ世界を変える術を願...逆転劇
例えばこの世の全部を滅ぼせる強大な魔法でさえ壊せない死んでも奪わせはしないこの心だけは誰にも凪いだ景色に咲かせる有卦 未曾有 夢想 浮かぶ瀬と希望理想で現実を薙ぐようなそんな番狂わせを叶えようか推敲の末 至る隘路で蒼天が翳る人生だってそれでも何かを信じて生きていた例えばこの世の全部を変えられる枯れ木に花を咲かせる程の奇...月が満ちる
過去になる今日と僕のこと白と黒の音 枯れた喉求める昨日と君の許また生きていこうと思えたこと何者にもなれない人生と嘆く僕に君が歌うんだ「それでも」そう 君はいつだって僕を照らす欠けない月だ僕は、何も知らないままでいれば失うものなどなかったと思うでも、譲れないものさえもない冷めた人間でいただろう誰の人生だって羨まないでも何...