• 寺尾紗穂

    「28」
  • 思い出どおり

    思い出どおり

    思い出どおり あしたになれば薄れてしまう 夜の憂いも思い出どおり 行き交う声が新しい朝 満たしてくれる思い出どおり ぬる風吹けばとけてきえゆく 恋の苦みも思い出どおり 夕陽に映えて青い面影 かろくうつろう私とあなたの美しく思い出どおり...
  • 狂女

    狂女

    女がまだきれいだったとき父と夫とぼうやとが続けて死んでいきました三人の影を抱きしめて女が床に臥せたとき国にいくさがおきました女の思うことおなじこと 思いはぐるぐるめぐる父さんどこへいったろうあの人今日も帰りが遅いぼうやよ早く出ておいで私はここで待ってるから兵士が家までやってきて立てと命じたときも女は同じ床の中三人の影を...
  • 口の角

    口の角

    なきたいときも苦しいときも口の角くいっとあげてごらんしんどいのはわかってるの言われたとおりにやってごらんせつないときも悲しいときもだまされちゃいけないよやるせないのもわかってるよ言われたとおりにやってごらん素敵な風があなたに吹きそうよ疲れたときもさびしいときも口の角くいっとあげてごらんしんどいのは分かってるよ言われたと...
  • 午睡

    午睡

    今日も凪いでる午後の海あなたと私と今日も傍には午後の海枕辺に潮騒どこか遠くへ連れてって言いながら眠りに...
  • 月の海

    月の海

    みやげやで手にしたガラスのこびんみたいに壊れやすい胸で 月を見ていたつつまれたびんのよにぼくらはおたがいを海辺の小さな家で三日だけ守りあった嵐の去る その真夜中月よぼくらに魔法をかけてくれ月の光は遊ぶ きみの澄んだ肌をさざめいてさざめいてさかなになってぼくはきみを泳ぐんだ波うってもうふたりで月を見ることはしないからとあ...
  • ハイビスカスティー

    ハイビスカスティー

    昼下がりのカフェは女の子のおしゃべりで出来てるチョコレートと生クリームで出来てるいちごとブルーベリーで出来てる君はぎこちなく席にいるまるで似合わないハイビスカスティーと一緒に君は私を好きだからどこにだってついてくる私が君を誘うのは君が私を好きだから眠い午後の会話は忘れる為にあるよな思い出話で出来てるポストカードと色えん...
  • 夕まぐれ

    夕まぐれ

    夕まぐれ 私ひとり踊る電線 カットして自由な空夕まぐれ 私ひとり愛したひとの今頃と愛した私のこれからと夕まぐれ 私ひとりお隣さんは中華かな私はひとり魚をおろそうか な夕まぐれ 私ひとりぼやけた月をぼやっと眺め自由な空夕まぐれ 私ひとり愛したひとの今頃と愛した私のこれからと自由な空...
  • 青春時代

    青春時代

    卒業までの半年で答えを出すと言うけれど二人が暮らした歳月を何で計ればいいのだろう青春時代が夢なんてあとからほのぼの思うもの青春時代のまん中は道にまよっているばかり二人はもはや美しい季節を生きてしまったかあなたは少女の時を過ぎ愛にかなしむ人になる青春時代が夢なんてあとからほのぼの思うもの青春時代のまん中は胸にとげさすこと...