• 北見恭子

    「49」
  • 桜前線

    桜前線

    「今年さいごの 桜じゃろうか」「何を云うのよ お父さん」浮かれ花見の 川堤(かわづつみ)先の父娘の 言葉が沁みる桜に人あり 涙あり偲ぶあの人 桜前線人の別れが 多くもなった変わる浮世の 日暮れ坂添えぬじまいの あの人にせめていっぱい 桜(はな)いっぱいにあの空埋めて しまうほど咲けよ匂えよ 桜前線父が耕し 守った土に母...
  • 石に咲く花

    石に咲く花

    雨の小さな ひとしずく‥石のくぼみに 紅い花長い月日を 雨風うけて一人ここまで 歩いて来たのいいえ いいのよ 悔いはない石に咲く花 私の夢は人を愛して 傷ついて‥泣いて沈んだ 過去もある夢と引きかえ 失くしたものを月を見上げて 数えた夜もいいえ いいのよ これでいい石に咲く花 根強い花よ女涙の ひとしずく‥夢の根雪を ...
  • おんな夢

    おんな夢

    忘れることが できない人はきっとわたしを 忘れているわ妻という名の まぼろしもこころ変わりの 哀しい嘘もみんな涙が 洗ってくれた追えば追うほど 逃げてく おんな夢いつかあなたと 旅した宿は夫婦(めおと)湯呑みと 揃いのユカタ蒲団ふたつを 寄せ合ってこころふたつを ひとつに重ね夢を見ました 同(おんな)じ夢を浮かぶ面影 ...
  • 女の旅路

    女の旅路

    辛い浮世の 迷い川浮いて沈むは 世のさだめ人は生きてりゃ 二度三度けつまずいては 立ち止まるソレ ヨイショ 負けるな 人生弱音 吐かずに…… 女の旅路探し求めた 情け川好いて好かれた 恋なのに月に叢雲(むらくも) 花に風惚れた男(おひと)は 露と消えソレ ヨイショ 負けるな 人生酒よ 酔わせて…… 女の旅路此処は一番 ...
  • 望郷月夜

    望郷月夜

    都会暮らしの 寂しさにみちのく津軽が 夢に出る昔を語る 母さんのあの声恋しい こんな夜は夜空(そら)を見上げりゃ まんまる月夜今ごろふる里 雪ん中お国訛りの 北風が戻っておいでと 戸を叩く囲炉裏火とろり 父さんは達者で酒など 呑んでるか窓の下行く 列車の屋根よ故郷(こきょう)の匂いを 乗せて来い今日をつなげば 明日(あ...
  • 博多夜雨

    博多夜雨

    帰っちゃいやよと あなたの背中縋(すが)ればあの恋 続いてた中州・那珂川 なみだ川ネオンの水面(みなも)に 名前を呼べば博多夜雨が 降りかかるボトルに描(か)かれた 相合傘が今夜もわたしを 泣かせるのあなた今頃 どのお店人形小路(にんぎょうしょうじ)に 想い出追えばどこか空似の 男(ひと)がゆく蛇の目のしずくを 振り切...
  • あなたが帰る港町

    あなたが帰る港町

    青い波止場に 汽笛も高く船が近づきゃ 雪さえとける冬の長さを 堪えた胸に熱いなさけの 土産を抱いてあなたが帰る 春がくる港町噂夜風に ふるえた鴎今日は羽搏く 明るく歌う橋のたもとに あの白壁に残る私の 涙を消してあなたが帰る 春がくる港町あなた好みの 絣を着れば海にまたたく 星まで燃えるそっと秘めてた 思いの花をみんな...
  • 小倉恋日記

    小倉恋日記

    嘆くまい 嘆くまいいずれの日にか 忘らるる恋と知りつつ 身を焦がす女の性(さが)の 哀しさは花より他に 知る人もなし侘び助(わびすけ)の 侘び助の椿の宿に ふりつもる赤い花びら 手に受けて名を呼ぶ今日に 比(くら)ぶれば昔はものを 思わざりけり怨むまい 怨むまい一夜(ひとよ)を永久(とわ)に 思うほどいのち与えて くれ...
  • オホーツク流れ唄

    オホーツク流れ唄

    こんなボロ船を 形見に残すからあとを継ぐ俺が 苦労するんだと親父怨んだ 日もあるがいまじゃしんから 海のとりこさ流氷くるまで 三月(みつき)が勝負ああ オホーツク 流れ唄海という奴は 気まぐれ者だよな時化て暴れてよ 凪いでまた笑う女ごころに 似ているぜにくい可愛い 君の面影夕陽に包んで 波間にすててああ オホーツク 流...
  • おんなの北港

    おんなの北港

    漁り火が チラチラ揺れて未練深酒(ふかざけ) 心にしみる忘れた つもりでも酔えば 酔えば なおさらに優しさを 優しさを 思い出す女泣かせの 北港 逢いたい…あなたひとすじに 愛してみてもはぐれ鴎か 男の心襟足 ほつれ髪なんで なんで またひとり悔んでも 悔んでも 遅すぎる遠い面影 北港 涙が…凍(こお)る嫌ですと あな...
  • おんな船唄

    おんな船唄

    船が出る日は 指までやせる「可哀想に」と かもめが啼いたいいえ 心は いつでも一緒港はるかに 網ひく人と共に船唄 うたうのさ時化(しけ)が続けば 噂も絶える「忘れちまえ」と 男が誘ういいえ 便りが なくてもいいの胸に残った 温もり抱いて恋の船唄 うたうのさ北の波止場で ただ待つ暮し「馬鹿な女」と 霧笛が笑ういいえ 馬鹿...
  • 北浜恋唄

    北浜恋唄

    北浜おんなにゃ 化粧はいらぬ銀のうろこで 肌ひかるべんちゃら言われて 嫁こにきたが漁に出たなら 三月(みつき)はおろか長けりゃ ふた冬 待つ苦労それでも嬉しい 漁師の女房膝っこかかえて ため息ついて他人(ひと)にゃこの態(ざま) 見せられぬ男の生き甲斐 海原千里(うなばらせんり)女の支えは 泣かせる情けひとりじゃ蒲団が...
  • 北前おんな船

    北前おんな船

    紅を落として 涙を捨てて揺れる船縁(ふなべり) 身を寄せる恋はうたかた 夢はまぼろしこれでいいのと 唇噛んでまかせた船は 北廻り舞鶴みなとが 遠ざかる髪のほつれを つくろう指にしみる潮の香 恋路浜男うつり気 女ひとすじ恨み残せば みじめなだけねいのちをかけた 人だもの越後の岬に 日が落ちる夜が明けたら 和服(きもの)を...
  • 斎太郎船

    斎太郎船

    どんとしぶきが 噛みつく舳先(へさき)夢に浮かれりゃ ふり落とされる捨てろ捨てろよ 女の未練情け無用の 千島の海は根性一本 根性一本 エトソーリャ命綱前は海 サヨー 後は山で小松原トエ アレワ エト ソーリャ大漁だエ港 塩釜 鴎の酒場惚れたはれたは 一晩かぎり捨てろ捨てろよ しょっぱい涙網を引く指 かためた拳胸のしこり...
  • 大漁華しぶき

    大漁華しぶき

    波をけちらし 港に入る船に五色(ごしき)の 旗が乱れ舞う海の神さま まる一年もわたしの大事な 大事な人を守ってくれて ありがとうエンヤー ヨイショ エンヤー ドッコイ濡れてうれしい 華しぶきはじめ豆粒 近づくたびに船の息吹きが 熱くつたわるよ潮のにおいは あんたのにおい枕をぬらした ぬらした夢に今夜は燃えて 泣いてやる...
  • 遠くを見ようよ

    遠くを見ようよ

    聞こえてますか あの森の声聞こえてますか この川の声サクラの嘆き 河鹿(かじか)の涙目を外らさずに 耳を傾け遠くを見ようよ このふるさとの遠くを見つめ 漕ごうよ夢を漁(すなど)る船に 群がる鳥も咲き競(そ)う花に とび交う蝶(むし)も地球の上で 生まれたものに要らないものは 何も無いのさどこかで縁(えにし)が つながっ...
  • 鈍行夢列車

    鈍行夢列車

    おまえさん 後ろへ走っているのかと特急電車に 笑われる私の人生 鈍行列車そんな私の うしろから励ますやさしい 人がいるみなさん ほんとに ありがとう鈍行列車は 鈍行列車は 山越え野越えあんたには 重すぎゃせんかと訊かれても捨てたら 死にます 夢荷物私は遅咲き 鈍行列車こんな私の 生きざまを見守るやさしい 人がいるみなさ...
  • 緋牡丹慕情

    緋牡丹慕情

    一枚二枚と はじらいながら夢の重ね着 脱ぎ捨てるここまで来たなら 戻れないあなたと墜ちます 罪の渕燃えて乱れて 緋牡丹はいのちを咲かせる おんな花枕のあかりを 吐息で消して閉じた睫毛に やどる露針ふむ思いの しのび宿身も世も失くした 闇の中泣いてすがって 緋牡丹はいのちをいろどる おんな花こがれて待つ夜は 死ぬほど長く...
  • 北海船うた

    北海船うた

    怒濤逆巻(さかま)く 北の洋(うみ)今日も出てゆく 沖底船(おきそこせん)船殻(がら)は100トン そこそこなれど北海トロール 俺らの命修羅場さながら かけ廻り意地と度胸の 大勝負(おおしょうぶ)獲物逃(にが)さぬ 手応えたしか海が育てる 俺らの魂(こころ)酒と盃 酌み交し唄は十八番(おはこ)の 男節笑う宴(うたげ)に...
  • 幻 舷之介

    幻 舷之介

    おはよう あなた 舷之介あたいの命を 半分あげてもっと生きてて 欲しかった男 荒波舷之介あなたの形見の ギターをひけば夜明けの海の 向うからきこえてくるの あの日の歌があたいを泣かせた 別れの歌が呼んでよ あなた 舷之介鎖を放して 出てきんしゃいといつもあたいを 笑ってた男 荒波舷之介あなたを愛せる 独身(ひとり)にな...