• 木村徹二

    「30」
  • アメリカ橋

    アメリカ橋

    風が足もとを 通りすぎてゆく久しぶりだねと 照れてわらいあって―アメリカ橋のたもと ふと通うぬくもりやるせない恋 埋(う)めた街角部屋の灯り石だたみ石だたみ 想い出続くいつかいつか 熱かった青春君は変わらない 月日は過ぎても髪を切ったので 少し若くなった―アメリカ橋のたもと 黄昏(たそがれ)が間近い煙草やめたの いつか...
  • 石狩挽歌

    石狩挽歌

    海猫(ごめ)が鳴くから ニシンが来ると赤い筒袖(つっぽ)の やん衆がさわぐ雪に埋もれた 番屋の隅でわたしゃ夜通し 飯を炊くあれからニシンは どこへ行ったらやら破れた網は 問(と)い刺(さ)し網か今じゃ浜辺で オンボロロオンボロボロロー沖を通るは 笠戸丸(かさとまる)わたしゃ涙で ニシン曇りの 空を見る燃えろ篝火(かがり...
  • 北酒場

    北酒場

    北の酒場通りには 長い髪の女が似合うちょっとお人よしがいい くどかれ上手な方がいい今夜の恋は煙草の先に 火をつけてくれた人からめた指が運命(さだめ)のように 心を許す北の酒場通りには 女を酔わせる恋がある北の酒場通りには 涙もろい男が似合うちょっと女好きがいい 瞳でくどける方がいい夢追い人はグラスの酒と 思い出を飲みほ...
  • みちのくひとり旅

    みちのくひとり旅

    ここで一緒に 死ねたらいいとすがる涙の いじらしさその場しのぎの なぐさめ云ってみちのく ひとり旅うしろ髪ひく かなしい声を背(せな)でたちきる 道しるべ生きていたなら いつかは逢える夢でも逢えるだろう時の流れに 逆らいながらひとりゆく身の 胸のうち俺は男と つぶやきながらみちのくひとり旅月の松島 しぐれの白河昨日と明...
  • 氷雨

    氷雨

    飲ませて下さい もう少し今夜は帰らない 帰りたくない誰が待つと言うの あの部屋でそうよ 誰もいないわ 今では唄わないで下さい その歌は別れたあの人を 想い出すから飲めばやけに 涙もろくなるこんな私 許して下さい外は冬の雨まだやまぬ この胸を濡らすように傘がないわけじゃないけれど 帰りたくないもっと酔う程に飲んで あの人...
  • 酔歌

    酔歌

    ぽつり ぽつりと 降りだした雨に男は何故か 女を想うひとり ひとりで 飲みだした酒に夢を浮かべて この胸に流すヤーレン ソーランヨ 都会の隅でヤーレン ソーランヨ 今夜も酒を風に 風にヨ 暖簾巻く風にヨ遠い故郷(くに)のヨ 父親(おやじ)を想うふらり ふらりと 居酒屋を出れば冬の近さが 心に吹くよヤーレン ソーランヨ ...
  • 北の旅人

    北の旅人

    たどりついたら 岬のはずれ赤い灯が点く ぽつりとひとついまでもあなたを 待ってるといとしいおまえの 呼ぶ声が俺の背中で 潮風(かぜ)になる夜の釧路は 雨になるだろうふるい酒場で 噂をきいた窓のむこうは 木枯まじり半年まえまで 居たという泣きぐせ 酒ぐせ 涙ぐせどこへ去(い)ったか 細い影夜の函館 霧がつらすぎる空でちぎ...
  • 津軽恋女

    津軽恋女

    津軽の海よ竜飛岬は 吹雪に凍えるよ日毎 夜毎 海鳴りばかり愚図る女の 泣く声か津軽の女よ別れうたひとつ くちずさむにごり酒に想い出浮かべかじかむこころの 空を見る降りつもる雪 雪 雪 また雪よ津軽には七つの 雪が降るとかこな雪 つぶ雪 わた雪 ざらめ雪みず雪 かた雪 春待つ氷雪津軽の女よ枕乱して 引き込む恋女愛に生きて...
  • 北の鴎唄

    北の鴎唄

    山背(やませ)が吠えれば こころも時化(しけ)る今夜はお前と 朝まで酒づかり荒くれ海にはョ-船もなくカモメが凍(こご)えてョ-鳴くばかりやん衆の港は 浜の女が情けの炎(ひ)を燃やすヤ-レンソ-ラン 飲み明かせ明日(あした)は別れる お前でも今夜はどっぷり 惚れてやる出たとこ勝負の 男の海は命も宝も オンボロ船まかせ情け...
  • 玄海ブルース

    玄海ブルース

    情け知らずと 嘲笑(わら)わばわらえひとにゃ見せない 男の涙どうせ俺らは 玄界灘の波に浮き寝の かもめ鳥紅い灯かげの グラスに浮かぶ影がせつない 夜更けのキャバレー酔うて唄えど 晴れない胸は銅羅(ドラ)よお前が 知るばかり嵐吹きまく 玄海越えて男船乗り 住く道ちゃひとつ雲の切れ間に キラリと光る星がたよりの 人生さ...
  • 旅の終りに

    旅の終りに

    流れ流れて さすらう旅はきょうは函館 あしたは釧路希望も恋も 忘れた俺の肩につめたい 夜の雨春にそむいて 世間にすねてひとり行くのも 男のこころ誰にわかって ほしくはないがなぜかさみしい 秋もある旅の終りに みつけた夢は北の港の ちいさな酒場暗い灯影に 肩寄せあって歌う故郷の 子守歌...
  • 山河

    山河

    人は皆 山河に生まれ、抱かれ、挑み、人は皆 山河を信じ、和(なご)み、愛す、そこに 生命(いのち)をつなぎ、 生命を刻むそして 終(つ)いには 山河に還(かえ)る。顧(かえり)みて、恥じることない足跡を山に 残したろうか永遠の 水面の光 増す夢を河に浮かべたろうか愛する人の瞳(め)に 愛する人の瞳(め)に俺の山河は美し...
  • 男の拳

    男の拳

    悔しい時や 苦しい時に男は自然と 力を手に込める不条理を 知るたびに振りかざしたくもなるけれど拳は相手に向けるものじゃないその覚悟 固く握りしめ胸に火をつける裏切りとか 哀切の中女も時には 力を手に込めるその細い 手を包み優しくほどいてやるものさ拳は自分を守るだけじゃなく愛してる 人の悲しみを拭う為にあるボロボロに 傷...
  • ハマナスの眠り唄 (アコースティックver.)

    ハマナスの眠り唄 (アコースティックver.)

    早く眠ってしまえよ悲しいことがあった日はきっと明日(あした)が 早く来るお前はハマナス 後ろから抱く俺は海笑えるように 笑えるように 早く目を閉じて膝を抱(かか)えてしまえよ立ちあがれない そんな日はがんばることは ないんだよお前はハマナス 後ろから抱く俺は海心配せずに 心配せずに 早く目を閉じて愚痴をこぼしてしまえよ...
  • 最後の酒

    最後の酒

    グラスふたつに麦のソーダ割やけに氷がカラリ鳴く今夜でふたり最後とはあなたも口にはせずにゆらりゆらゆらりゆれる街の灯は酔いか涙か最後の酒よ恋から愛に変わらない人と知っていたはず初めから「お互いさまね私たち」静かに強がるけれどきらりきらきらり髪を振り隠す悔いか迷いか最後の酒よ「それじゃ最後にあと一杯」思い出飲み干すようにゆ...
  • みだれ咲き

    みだれ咲き

    悲しみもあぁ苦しみもそれも人の常どうせ最後は散る身ならくよくよしている暇はない昨日の恥も今日の無念も花を育む雨となる夜桜の舞い散る様を見て微塵の悔いすら感じるものか花も命も咲けば散るのさそれがこの世の定(さだめ)なら派手に咲くのさ凛と散るのさ宵も浮世にみだれ咲き生まれた時代を恨むならお前が時代となればいい挑んだ負けと挑...
  • 海の祈り

    海の祈り

    果てしなき 海の彼方に水色の やすらぎを求めた友は 帰らない陸(おか)には住めない 依怙地(いこじ)な男が木の葉の船に つかまりながら蛙のように 歌っていると無線をくれた ゆかいなあいつあいつを呑んだ 嵐が憎い安らかに 眠れ友よと花を投げ 伏しおがむおれにも明日は 知れないが守っておくれよ おまえの力でオイルのしみた ...
  • 海の匂いのお母さん

    海の匂いのお母さん

    海の匂いが しみこんだ太い毛糸の チャンチャンコ背中をまるめて カキを打つ母さん 母さん お元気ですか案じております 兄貴とふたり海が時化(しけ)れば 時化るほどカキはおいしく なるという母さん あなたの口癖が土鍋を囲めば きこえてきますやさしい笑顔が 浮かんできます遠く離れた 子供らに海の匂いを くれた母わたしは 手...
  • 津軽平野

    津軽平野

    津軽平野に 雪降る頃はヨー親父ひとりで 出稼ぎ仕度春にゃかならず 親父は帰るみやげいっぱい ぶらさげてヨー淋しくなるけど 馴れたや親父十三みなとは 西風強くて夢もしばれる 吹雪の夜更けふるな ふるなよ 津軽の雪よ春が今年も 遅くなるよストーブ列車よ 逢いたや親父山の雪どけ 花咲く頃はよかあちゃんやけによ そわそわするネ...
  • 長崎は今日も雨だった

    長崎は今日も雨だった

    あなたひとりに かけた恋愛の言葉を 信じたのさがし さがし求めてひとり ひとりさまよえば行けど切ない 石だたみあゝ 長崎は今日も雨だった夜の丸山 たずねても冷たい風が 身に沁みる愛(いと)し 愛(いと)しのひとはどこに どこにいるのか教えて欲しい 街の灯よあゝ 長崎は今日も雨だった頬にこぼれる なみだの雨に命も恋も 捨...