• 北見恭子

    「49」
  • 高砂縁歌

    高砂縁歌

    高砂や親の許さぬ 男と逃げて式もせぬまま二十と五年浮世寒風辛らくはないが切れた親子の 絆に泣けた高砂や店も持てたし 繁盛もしたが何か足りない 銀婚祝いそれを子供が察してくれて呼んでくれたよ年寄たちを高砂やがんこ親父の勘当もとけてめでためでたの二十と五年金の屏風に遅まきながら祝い涙の 真珠が光る...
  • 望郷夢のれん

    望郷夢のれん

    お国なまりでぽつりと話すお客さんの 言葉がしみじみ恋しい なつかしい雨の横丁(よこちょう) 駅裏酒場泣いて別れた 妹を思い出させて 故郷が揺れる蝉じゃごんせん妹でござる妹泣くなよ 気にかかる惚れた男は忘れたけれど忘れないよ 妹の つんつん椿の 花えくぼ雨に汽笛がちぎれて消えてこころばかりが飛んで行く夢も昔の 故郷の空へ...
  • 夜ごとの涙

    夜ごとの涙

    あなたにあげた さよならを忘れるための 酒なのに毎夜につのる 恋しさの炎の中で 独り泣くなんでもないわ もういちど昔に戻る だけだもの男のように さりげなく微笑えば ゆがむ影法師もしもにかけた ひとすじの願いの糸も 切れぎれにいまさら誰を 裏街の灯影にかくす 恋の傷...
  • こころ妻

    こころ妻

    あなたの残した 吸い殻をかぞえる女に なりましたそばに居たって 遠いのに離れて待てば 一夜でも死ぬほど長い こころ妻あなたはどうして あなたなの私はどうして 私なの他の二人で あったならこの世の涯ての 涯てまでも離れずついて ゆくものをあなたに貰った 涙なら泣くのも たのしい しのび逢いそっと手のひら みせあって灯影に...
  • 浪花夢あかり

    浪花夢あかり

    思い通りに すらすら行けばおもろうないで 人生芝居泣いて笑って 苦労して尻切れとんぼの倖せを汗水ながして 追いかける道頓堀の 夢あかりお人好しでも 甲斐性がなくてもあんたはうちの 大事な人や逢うて三年 法善寺合縁奇縁の結び神なさけの柄杓で 水かけるお不動さまの 夢あかり浪花おんなのこの細腕に預けなはれや あんたのいのち...
  • 紅の舟唄

    紅の舟唄

    この舟が 酒田港に 着くまではわたしはあなたの こころ妻紅花とかした 恋化粧エンヤコラマカセの 舟歌に捨てて涙の 最上川 最上川少しでも 長く一緒に いたいから汽車には乗らずに 川下りあの山向うは 情け宿エンヤコラマカセの 舟歌にせめて濡らすな 別れ風 別れ風泣きません 泣けばあなたを つらくするみちのく短い 春の夜ふ...
  • 霧情の港

    霧情の港

    忘れたつもりのおもかげを思い出させて 今夜も霧が降るあんたはきっと帰ってきます半年待ったら 待たされついで紅いはまなす 枯れるまで北国育ちの 鴎には嬉しがらせる 嘘などつけないさあんたはきっと 帰ってきます涙を枕に 夜通し酔ってほろり歌った お立ち酒あんたの港はわたしだけ夢の灯りは 消さずに待ってるよあんたはきっと 帰...
  • 夫婦ちぎり

    夫婦ちぎり

    あなたひとりの からだじゃないと俺をみつめて からめる小指落ちた涙を 分けあいながら夫婦ちぎりの 酒をくむ俺の帰りを 待ってておくれ少しばかりの 不幸に負けてすねていたのと 泣き出すお前そんなお前に 幸せにあう花を咲かせて みたいから俺を信じて 待ってておくれどんな苦労も あなたとならば耐えて行けると すがってくれたひ...
  • 若狭恋枕

    若狭恋枕

    ついてゆけない連れてもゆけぬ恋を断ち切る 苦が酒の火照りを包む 浦見川乱れる髪も そのままに夜の湖 あなたとゆけば膝に群がる 波の花くらい顔した 竹人形の頬に見ました 恋の果て実れば知れる 蝶の罪隠して散らす 花の愛いつかあなたが気付いたときに熱い涙に して欲しい人目忍んだ 若狭の宿は月も五つに 割れて散るあなたと呼ぶ...