• 筒美京平

    「1384」
  • 合鍵

    合鍵

    鉢植えに水をやりふと思い出す今頃は枯れたはず不精なあなたの部屋のすみれたちポケットに眠ってた銀色の鍵散らかったレコードや本を片づけて待ってたあの頃海辺に捨てましょうか思い出にかけた鍵は貝穀のように閉じた哀しみに波が打ち寄せる誰にだって使えない合鍵があるそのドアの向こうには過去って名前の世界があるだけ海辺に捨てましょうか...
  • いかないで

    いかないで

    あぁ、いかないで あぁ、消えないであぁ、美しい 思い出よ、恋よ誰が奪うのか 何が悪いのか揺れる水の都 汽笛響かせる甘い夜を 重ね燃えた夏よ脆く崩れさったら 胸に風が‥いわないで あぁ、それ以上あぁ、目を閉じる 面影よ、夢よ霧の桟橋で 爪先を波に浸す愛に堕ちて 背中向けた人よ罪も罰もすべてを 知りつくして‥いわないで あ...
  • 色は匂へど

    色は匂へど

    ひと目で惚れちゃったその日に“あいうえお”夜明けの海を見てる私は阿呆鳥これでいいの 淋しかない私 気ままに 飛んで行くわ娘の時代なんて“おんな”に比べればしょせん子供だから泣けばすむ恋でしょだからおいで 哀しいなら遊ぼよ 朝までどうせあんたは しょうがない人夢ばかりの 恋しがり屋さんどうせ私は しょうがないもの色は匂へ...
  • 五分前

    五分前

    あと五分で バスが来るわ笑いましょ 素敵にちゃんと立って 顔を見せてそれなら街でも もてる嘘みたいね 五年前の少年の あなたが私もしも 若い時ならついて行く どこまでも春めく葡萄の下でくちづけして 笑ってたなにもかもが 華やいでた時間を 時間を 止めてあなたのためなら 私どんなことだってできたいやな歌も 歌えたのはあな...
  • 砂塵の町へ

    砂塵の町へ

    金色の馬車はゆく朽ち果てた白い壁の町蒸せる熱 匂う凪ここにも貴方の影はない砂が書いた地図を手にゆらりゆれて 心をみちびくあぁ炎の あぁ陽炎あぁベ一ルの肌に…あぁさすらう あぁ旅人そう胸狂おしく恋人を失った女たちの行列がゆくてのひらに掬う水灼けた喉を潤しながら…愚かな想いを嘲笑(わら)えゆらりゆれて 憑かれた瞳であぁ腸は...
  • 猫

    雨の日曜日は受話器をもてあそぴあの人じゃなけりゃすぐに切る何も言わないままあきらめきれない恋の境界線行ったり来たりの時間だけ鏡を横切る遠い町へ引っ越そうかな何もかもを投げ捨てて泣いてる 泣いてる ひざの子猫よしよしいい子 お前もひとりぽっち泣いてる 泣いてる 甘え声でお前を捨てて行けやしないね ほんと音を消したテレビ ...
  • 卒業

    卒業

    制服の胸のボタンを 下級生たちにねだられ頭をかきながら逃げるのね 本当は嬉しいくせして人気ない午後の教室で 机にイニシャル彫るアナタやめて想い出を刻むのは 心だけにしてとつぶやいた離れても電話するよと 小指差し出して言うけど守れそうにない約束は しない方がいい ごめんねセーラーの薄いスカーフで 止まった時間を結びたいだ...
  • 三ツ矢サイダーのうた

    三ツ矢サイダーのうた

    みんなで叩く 楽しいガラスの ピアノよシュン シュワワ 仔猫もあわてて 降りてきてあの音はなんだろ三ツ矢の 三ツ矢の 楽しいガラスの ピアノよシュン シュワワ 花咲く庭の 小鳥たちも歌いだしたよ君と夢に さまよう谷間の 木陰にシュン シュワワ シュン シュワワ泉が 湧いていたしあわせの泉よ君を胸に やさしく瞳を とじれ...
  • サマータイム・ブルース

    サマータイム・ブルース

    陽射しにゆらめく高層ビルの真下にグレイのバイクを止めたあなたの背中で仔猫のようにふるえた私の旅が終るのサマータイム・ブルース海辺で炎(も)えた恋だけがサマータイム・ブルース夏の都会で色褪(あ)せるもし青春が傷を負うなら私フラフラ歩きだすのよあー 八月の濡れた赤いくつ斜めに見つめる瞳の翳(かげ)が私の淋しさ引き寄せたのよ...
  • トロピカル・ランデブー

    トロピカル・ランデブー

    あなたと二人で旅するのならば楽園みたいな島がいい人魚の振りして波間をただよい月の彩(いろど)りに染(そ)まりたいトロピカル・トロピカル・ランデブー (必ずゆきましょう)星屑を敷(し)きつめた砂浜へ (必ずゆきましょう)トロピカル・ランデブー 小舟を漕(こ)ぎましょう天国に手が届く遠い島へ泳いで眠ってライムを齧(かじ)っ...
  • ロンリー・ガール

    ロンリー・ガール

    ひび割れた心が痛いわなぐさめるすべもない男なら酒を流してしびれさせるのでしょう黄昏(たそがれ)がブルーに変って憂鬱(ゆううつ)な舞台のようだわこの私 セリフを忘れたヒロインのようねあゝ想い出したらいけない顔の化粧がくずれる 涙がまた流れるあゝ派手なドレスに着がえて遊び仲間を誘って踊り明かしたらどうなのよ駄目 駄目 沈ん...
  • 今夜かしら明日かしら

    今夜かしら明日かしら

    あなたとまだ このまま 二人でいたいどこかで花さえ 香っているわいつもの道 あなたと 回り道して知らないところへ ゆきたい私あなた あなたの胸にいつか いつかは抱かれるの今夜かしら 明日かしら今夜かしら 明日かしら心がさわぐの今夜はまだ 家には 帰りたくないきれいな月さえ 昇ってきたわどうしてなの 自分で わからないの...
  • 悲しみのシーズン

    悲しみのシーズン

    それがふたりにとって 幸せというのなら頬の涙ふいて お別れしましょうそっと額にかかる 髪の長さが好きとほめてくれたことも 気まぐれなのねいいことも悪いことも あなたが教えてくれたから明日からは先のこと 恐くてたまらないまるで季節の花が 枝を離れるように訳も告げずあなた 離れてゆくのねほんの短い間 顔が合わないだけで愛は...
  • Kiss

    Kiss

    シーツの海に身体を浮かべて朝日の岸に流れついたのわざと飾った あなたの写真もう見つめても 胸痛まないウーン 心の傷あとウーン もうじき消える哀しい恋だったけどね想い出にKiss あなたの匂いしみたセーター 捨てたくてでも 途中で手が止まるわ想い出にKiss 自分に強くならなければと想うのにNever fall in l...
  • バナナムーンで会いましょう

    バナナムーンで会いましょう

    足をぬらしに来たビーチ夜の月は細い三日月とても 不思議こんな時間ねえだれかに めぐり会えそうよバナナムーンで会いましょう夏の浜辺で会いましょうなにも約束していないけれど白いハウスの灯りが消えるころに脱け出して来て海を見てる子がいたなら声かけてね 恥ずかしがらずにバナナムーンで会いましょう岸につないだボートもほらゆれてる...
  • しあわせの一番星

    しあわせの一番星

    夕焼けこ焼けで 家に帰る路小石をそっとける 明日も晴れる夕空背のびして 赤い屋根の上一番星ほら 見つけたばかりルルルルル 心に光るあの人の笑顔が明日もきっと元気でいると 胸をたたいた夕陽を追いかけ 母さん忘れてる道草あの子の 長い影法師ルルルルル 心に光るあの人の言葉がいつかはきっと どんな人にも幸福が来ると夕焼け細道...
  • 17才

    17才

    誰もいない海二人の愛を確かめたくてあなたの腕をすりぬけてみたの走る水辺のまぶしさ息も出来ないくらい早く強くつかまえに来て好きなんだもの私はいま生きている青い空の下ふたりの愛を抱きしめたくて光の中へ溶けこんでみたのふたり鴎になるのよ風は大きいけれど動かないでおねがいだから好きなんだもの私はいま生きているあつい生命にまかせ...
  • 芽ばえ

    芽ばえ

    もしもあの日あなたに 逢わなければこの私はどんな 女の子になっていたでしょう足に豆をこさえて 街から街行くあてもないのに泪で歩いて いたでしょう悪い遊び憶えて いけない子と……人に呼ばれて 泣いたでしょう今も想い出すたび 胸が痛む……もうあなたのそばを 離れないわ離れないわ 離れないわもしもあの日あなたに 逢わなければ...
  • 飛んでイスタンブール

    飛んでイスタンブール

    いつか忘れていった こんなジタンの空箱(からばこ)ひねり捨てるだけで あきらめきれるひとそうよ みんなと同じ ただのものめずらしさであの日しゃれたグラス 目の前にすべらせてくれただけ…おいでイスタンブールうらまないのがルールだから愛したことも ひと踊り風の藻屑飛んでイスタンブール 光る砂漠でロール夜だけの パラダイス胸...
  • マスカレード

    マスカレード

    恋人に捨てられた あの娘はサロメの衣裳悪い女に見られたくって裸足で踊るジルバ近づく俺は今日も あわれなドン・キホーテ真面目なのさと言えば言う程 笑い者なんだね手持ちのカード 取り換えるように別な誰かに なりすましうまくかわしなよ うまくかわしなよ悲しみってやつは めざといからねああ南へ行こうよ 夢に見たエルパソ国境越え...