なかにし礼
「636」喧嘩のあとでくちづけを
あなたにしてみれば ささいなことでも私にしてみれば きがかりなの私は弱い弱いおんなと 知ったからあなたのそばでなけりゃ生きてはゆけないの嘘でもいいから こっちを向いて喧嘩のあとで くちづけをあなたにしてみれば ささいなことでも私にしてみれば きがかりなの鏡の上にそっと あなたの悪口をルージュで書いたあとは涙を見せないわ...幸せだったわありがとう
女一人残して あなた旅に出るけど私うらまないのよ幸せだったわ ありがとうほんの三月ばかりの 恋は季節みたいにみじかかったけれども幸せだったわ ありがとう涙をみせないで さよならを いってるくらいあなたは 私には とってもやさしい人だった私ウブじゃないけど こんな恋は初めて夢をみてるみたいに幸せだったわ ありがとうあなた...いつか男は去って行く
あなたのくちづけには 嘘がある他の女の人の匂いがするの水がもれるように木の葉が散るようにあなたはわたしの手から離れてゆくのね男はいずれ去って行く去った男は帰らないあなたのさよならには 嘘がある他の女の人の影がよりそうの糸が切れるように扉がしまるようにあなたはわたしの胸から逃げて行くのね男はいずれ去って行く去った男は帰ら...今度生まれてくる時も
声かぎり 歌いつづけ生命かけ 愛してきた幸せだった わたしの人生季節季節が 美しかった今度この世にわたしが生れてくる時もあなたとめぐり逢って愛するでしょう目の前に あなたがいて唇に 歌があった苦しい時も 悲しい時もあなたと歌が ささえてくれた今度この世にわたしが生れてくる時もあなたと歌をきっと愛するでしょう今度この世に...