• 岡千秋

    「1197」
  • 初めてのひと

    初めてのひと

    抱いてほしさに ふるえる肩に指も触れない 好きなひとそうよあなたが 初めてのひとどうぞ大人に してほしい してほしいこの指 この胸 この心あなたひとりに あなたひとりにささげたい紅もつけずに 恥じらいながら甘いくちづけ 待つ私そうよあなたが 初めてのひときっと大事に してほしい してほしいこの髪 この頬 この命あなたひ...
  • 花の舟

    花の舟

    化粧おとせば 鏡の中に母に似てきた 私が映るおとぎ話しの 夢でもいいの 夢でもいいの幾つになろうと 恋を追うおんな悲しい 花の舟惚れた男が 飲む酒ならば肌で温めて あげたいものよ涙もろくて 情けにあつい 情けにあついみちのく育ちの せいなのね肌が淋しい 花の舟風に流れる 浮雲なのねゆくえ見えない 女の旅路泣いた数より ...
  • 命ゆきどまり

    命ゆきどまり

    川面を渡る 身を切る風に骨をきしませ 漂う舟よ日がな一日 この川を上り下りの 時代(むかし)もあった他人(ひと)に踏まれて おまえと哭いた夜に追われて あなたと泣いたここがふたりの ゆきどまり月は冴えても そぼ降るしぐれ忘れ去られた舟よ もの言わぬ舟よ在りし日の歌でも 風に聴いているのか命枯れても 未練はないさついてゆ...
  • 螢の恋

    螢の恋

    わたしが螢に 螢になってあんたのもとへ 帰ってきたらせめてその晩 ひと晩くらい誰も抱かずに 飲んでていなよ恨んじゃいないさ いい奴だったけど倖せだったら 悔しいからねAh あと三月 たったの三月そうすりゃ涙も 涸れるからAh あと三月 数えて三月寝たふりしてたら 悲しいよ…あんたわたしが螢に 螢になってあんたの部屋で ...
  • めおと雲

    めおと雲

    わたしの心に 浮かべた雲はこの世でひとつの お守りね苦労したぶん これから先は思い出いっぱい つくりましょうねあなたとふたり あなたとふたり めおと雲悲しくなるのよ ちぎれる雲は笑っちゃいやです 恥ずかしい今度生れて 出逢ったときも一緒になれると 約束してねあなたとふたり あなたとふたり めおと雲この手にのせてね 夕や...
  • 益荒男

    益荒男

    生きてゆくのが 死ぬよりつらい誰にもあるさ そんなとき俺の背中に 手をまわし叱ってくれる 母が居たあの故郷に 借りてきたまごころだけが 道づれさ胸の中まで さらけて見せりゃ似たような奴が ついてくる数じゃないんだ 数よりも大事なものは 真実だ一人でいいさ この胸を汲みとる友に 出逢えたら惚れた女を 裸で守り世間を敵に ...
  • 浪花人情

    浪花人情

    なんぼ上手に 儲(もう)けてみても持って死なれる 銭はない浪花人情 紙芝居……酔うて 見栄きる ド甲斐性なしにつくす可愛い ゝ おまえという女(おんな)生まれついての 極楽トンボ苦労水掛け 法善寺浪花人情 しのび雨……愚痴もこぼさず 傘さしかけてほろり泣かせる ゝ おまえという女空を見上げりゃ 通天閣はドンとどでかい ...
  • 恋の河

    恋の河

    夜の深さに 急(せ)かされて恋の行方が 見えませんあなたと指を からめてもおんなの夢は 遠すぎるわかっています あなたもつらい何処(どこ)へ流れる… 恋の河季節忘れた 北向きの部屋に飾った 紅の花淋しさだけが つのる頃抱かれて今夜(きょう)も 花になるあなたの胸で 散らせてほしい風が哭(な)きます… 恋の河星に運命(さ...
  • 石楠花の雨

    石楠花の雨

    先にお行きよ お前から何も言わずに 背を向けて 背を向けて傘はふたつに 離れてもおもいでだけは この胸に濡れて切ない あぁ 石楠花の雨優しかったよ いつの日も他の誰より この俺に この俺に好きで別れる わがままを責めてるような 泣きぼくろ肩に冷たい あぁ 石楠花の雨きっとつかめよ しあわせをうしろ姿に ひとり言 ひとり...
  • 一世一代

    一世一代

    明日(あす)の決まった 人生なんてこの世に生まれた 甲斐がない泥んこぬかるみ 乗り越えて信じたこの道 独(ひと)りゆく一世一代勝負賭けるさ おとこの夢に俺の生きざま 嘲笑(わら)った奴に見せたい魂(こころ)の 意地ひとつ可愛いおまえにゃ すまないがお預けなんだよ 色恋は一世一代負けはしないさ 浮世の風に他人(ひと)を泣...
  • 霧笛の波止場

    霧笛の波止場

    船が航(で)るたび 女が泣いた港は涙の 溜り水海の男は 薄なさけ帰っちゃこないと 霧が降るそれでも私 待ちますあなた悲しみ波立つ 霧笛の波止場潮の匂いを 残して消えたつれない背中が 目に浮かぶ肌の温(ぬく)みで 燗(かん)をしたお酒でもいちど 酔わせたい死ぬまで私 待ちますあなた未練が流れる 霧笛の波止場愛の灯台 面影...
  • 女のけじめ

    女のけじめ

    男がひとり 女がふたりどちらが 泣くのでしょう三角波ですねさようなら さようならあなたお世話に なりました駄目と駄目と駄目と知りつつ ついてゆく恋は私に出来ません これ以上辛くはないと 言うのは嘘よお酒よ お前だけしばらく 仲良しねすがりたい すがりたいそれが私の 本音です他人(ひと)が他人が他人が聞いたら 笑うけど憎...
  • 木屋町の女

    木屋町の女

    傘のしずくを 目で追いながらまわす未練の 糸車雨の木屋町 紅殻格子 紅殻格子口じゃきれいに 別れた筈の夢がせつない 高瀬川濡れた袂を情けでしぼりわざとくずした水鏡弱い女が さだめに負けて さだめに負けてほろり散らせた こころの蕾祇園葉ざくら 恋化粧泣いて三条 こがれて四条渡り切れない なみだ橋やせる思いに 西陣しめて ...
  • ソーランおんな節

    ソーランおんな節

    浮世波風 きびしさに泣いてにげたらアー あんたのまけよやる木 負けん木 たえる木が やる木 負けん木 たえる木が明日の夢まで 花咲かすヤーレン ソーラン ソーラン ソーランよさこい ソーラン北の女は 心意気なめちゃいけない 女だと熱い心はアー はんぱじゃないよ好きというなら 純情を 好きというなら 純情をリボンで飾って...
  • 涙の川

    涙の川

    愛していると 言われたら女はうれしい それだけで寄せては返す さざ波の涙の川に 小舟を浮かべまよわずに はなれずにああ夢を漕ぐこの世にあなた あなただけ他にはなんにも いらないわ雨風じっと 堪えしのぎ来る日の春を こころに描きささえあい はげましてああ夢を漕ぐどこかにきっと この舟を繋げるふたりの 橋があるあなたの愛に...
  • 北へひとり旅

    北へひとり旅

    あきらめた 筈なのになぜに消えない こころの寒さどこへ行く…宛もなく 夜汽車乗り継ぎひゅる ひゅる ひゅる 海が泣く みなと町夜の函館 流れてひとりうらんでも 憎めないそんな女の 切なさ弱さ 爪を噛み…瞼をとじて 涙こらえてほろ ほろ ほろ 過ぎた日が また浮かぶ窓に潮風 釧路が近いきらめいて 燃えつきて せめて別れを...
  • あずさ川

    あずさ川

    離れていたって 心は一緒背伸びして見る 遠い空恋しさひとつ 逢いたさふたつ肩にハラハラ 散る紅葉(もみじ)追えばあなたの 重荷になるわここで待ちます あずさ川女でいるのが 哀しい夜は胸のほくろが またうずく淋しさひとつ 逢いたさふたつ一人手酌で 飲むお酒凩(かぜ)の音にも あなたを捜す季節流れる あずさ川涙でみがいた ...
  • 越後平野

    越後平野

    枯れ葉散らして 吹く木枯しが夢も連れてく 晩秋の町遠くはぐれた あの温もりを追えば未練も かじかんで かじかんで…越後平野は 冬間近小千谷(おぢや)つむぎの 残り香抱けば紅の名残りに 涙がにじむたどり着けない この恋だけどせめて逢わせて もう一度もう一度…越後平野の 冬銀河北風(かぜ)に飛び立つ 冬鳥たちよどこへ行くの...
  • 母ありき

    母ありき

    母ありき 野菊の人よ帰らない 帰らない 心の人よ夕やけ小径(こみち)を 歩いたね一緒に童謡(うた)を 歌ったね「おかあさん おかあさん…」そっと呼んでもあゝ…故郷(ふるさと)の 風にちぎれる母ありき 涙の人よ会いたくて 会いたくて 悲しい人よふたりで東京へ 行ったよね一緒に汽車に 乗ったよね「おかあさん おかあさん…」...
  • 函館みなとから…

    函館みなとから…

    函館みなと あとにして翔べない鴎が 海峡越える女泣かせる 風と波あなた…沁(し)みるわ あなた…寒いわ振り向きゃ遥かに 滲(にじ)む街灯り街灯りあなたの夢に 最後までついては行けない わたしが悪いこんな別れを 我がままをどうか…許して どうか…このままあの日の愛には 二度と戻れない戻れない船から汽車に 乗り継げば想い出...