• 岡千秋

    「1197」
  • 春ふたつ

    春ふたつ

    やっと見つけた 倖せはまわり道した 贈り物二人で出かけた 北の町遅い桜が 嬉しくて…ずっとこれからは ゆっくり咲いて生きてゆきます 春ふたつソメイヨシノが 降る中でそっと咲いてた 白い桜(はな)桜の名前は 「雨宿(あまやどり)」まるで小さな 傘のよで雨が降る夜は この桜(き)のように二人さします 傘ひとつ白い桜の その...
  • 母一輪

    母一輪

    子供の頃から 好きでしたシャボンの匂いと エプロン姿夜明けの鳥より 早く起き夜更けの星より 遅く寝るつらい体は 笑顔でくるみ優しく咲かせる 母一輪「お母さん。私は元気でやってます 心配しないでね」何年たっても まだ届く泥付き野菜の ふるさと便り泣き顔見せない 母さんが初めてこぼした あの涙上り列車の ホームの端で手を振...
  • 母情歌

    母情歌

    愚痴もこぼさず 涙も見せずここまでわたしを 育ててくれた苦労を刻んだ その顔のしわの数だけ おんなを生きた母よ 母よ 母情歌夢はわが子の しあわせですと小さなえくぼで 応えてくれた死んでも返せぬ その愛をこんどわたしが お返しします母よ 母よ 母情歌白いほつれ毛 愛しむような仕草がわたしの 泪を誘う今日まで背負った そ...
  • 月下美人は恋の花

    月下美人は恋の花

    とても離れちゃ いられないのにさめたふりして あなたをじらす女ごころを やさしく包むあなたに酔って ひざ枕一年一度の 夜に咲く月下美人は 恋の花 恋の花逢えば逢うほど 愛は足りないなのに一夜で 終りだなんて夏の背広に こぼれる秋を抱きしめながら 泣きましたこの恋 たとえ 一夜でも私 一生 忘れない 忘れない儚なけりゃこ...
  • 海峡エレジー

    海峡エレジー

    港日昏(ひぐ)れて 鴎が啼(な)いて岬燈台 灯(ひ)がともる今頃船は海峡の 海峡の上他人になるのね 今日からふたり追ってゆけない こころが辛い…ついてゆけない なみだが苦い…あなた忘れた 手編みのマフラー頬にあてれば また泣ける今頃船は海峡の 海峡の上この指こぼれた 倖せひとつ悔いはしないわ 抱かれたことも責めはしない...
  • ソーラン鴎唄

    ソーラン鴎唄

    おまえは俺の 恋港(みなと)だと照れて微笑(わら)った 陽灼け顔海を離れて 故郷(ふるさと)捨てて遠い都へ 行ったひとヤーレンソーラン ソーランソーラン 鴎唄届けてあげたい あのひとに岬に赤い ハマナスが咲いて二度目の 夏が逝(ゆ)くせめて三ヶ月(みつき)に 一度や二度は声を聞かせて 元気だとヤーレンソーラン ソーラン...
  • 出さない手紙を書いてます

    出さない手紙を書いてます

    三軒茶屋から 引っ越しました二匹の猫も 一緒です猫好き大家の おばさんが時々遊びに 来ていますあんたと暮らして わかったことはいっぱいあった 気がしますあんたが大嘘 つく時はいつでも小鼻が ふくらんだそれでも別れりゃ 淋しくて出さない手紙を 書いてます切手がわりに 口紅押しあてて春夏秋冬(はるなつあきふゆ) よく笑った...
  • お別れ波止場

    お別れ波止場

    二人で暮らした 港町やっと掴んだ 幸せなのにひとり旅する 冷たいあなた私を置いて 何処へゆく船が出て行く 夜霧を連れて涙こぼれる お別れ波止場雲間に隠れる 月明かりひとり飲んでは 涙に暮れて遠い他国の 夜風に吹かれ心は寒く ないですか霧に霞(かす)んだ 連絡船に乗せて下さい お願いだから遥かな旅路を 追いかけて辿り着い...
  • そんな恋酒場

    そんな恋酒場

    男は 二(ふた)種類(とおり)子犬型(こいぬ)か 野良(のら)猫型(ねこ)なのかひと夜(よ)の 恋をするならばどちらが 素敵かしら赤いグラス とまり木 そんな恋酒場少しふらちな夢みる 甘い罪人いいじゃない あやまちも一度の 人生だもの女は かごの鳥いつもは 従順(おしとやか)でもひと夜の 恋をするならば夜空に 羽ばたく...
  • みぞれ酒

    みぞれ酒

    女にだって ひとりきり酔って泣きたい 夜がありますあなたに あなたに逢いたすぎてどうしていいか わからない心の寒さに 飲み干すお酒凍りつきます みぞれ酒夜空に浮かぶ 三日月を胸に突き刺し 死ねるならばあなたを あなたを憎まないでこのまま愛を 貫ける素肌の熱さに 抱かれたあの夜(よ)溶けてゆきます みぞれ酒ふたりの小指 ...
  • 北の絶唱

    北の絶唱

    これが最後 すべて懸けた 恋でしたぷつり切れた 赤い糸が やるせない北へ北へと 行(ゆ)く旅は窓に広がる 冬景色ここで点々 血のしずく雪に散らせば 雪に散らせば…しねますかひとりですが 今夜泊めて 下さいと告げる胸は 心細く こわれそう北へ北へと 行く旅は白い吐息も 邪魔をする凍りつくよな 淋しさは醒めて悲しい 醒めて...
  • 紅しぐれ

    紅しぐれ

    心変わりを 疑いながら女哀しい 待ち化粧しとしと雨降る こんな夜あなたがそばに いて欲しいこの恋は 終わりでしょうか涙に濡れる 紅しぐれ離さないよと 私を抱いて逢えば優しさ くれる人男の狡(ずる)さが わかってもあなたを今は 失くせないこの恋は 遊びでしょうかため息ひとつ 紅しぐれつらいだけです 愛してみてもいいのそれ...
  • 赫い棘

    赫い棘

    砕け散った心 バッグに詰めて出てゆく私を ひきとめないでこのドアを開けて 過去に戻れるのなら愛を知らない女に 帰りたい私の涙が 赫(あか)い棘(とげ)のように愛をあなたに 刻みこむの悲しむあなたも 嘘じゃないけど裏切るあなたも 本当のあなたタイをはずしながら 繕(つくろ)う言葉不実なあなたに 疲れ果てたわあの甘い時間(...
  • 酒場でひろった子守唄

    酒場でひろった子守唄

    居酒屋で 冷奴(やっこ)肴に 熱燗飲めば若者達(わかいやつら)の 笑い声そこにお前がいるようで思わず捜す自分を嗤(わら)うたった一人の倅(せがれ)のくせに俺より先に逝くなんて小さな頃の面影が酒に浮かんで泣いている大バカヤローの お前にうたう酒場でひろった子守唄振りかえりゃ 仕事ばかりの 明け暮れだった男同士の 酒さえも...
  • 気がつけばいつでも夕陽

    気がつけばいつでも夕陽

    気がつけば いつでも夕陽出逢いの数だけ 別れがあると知ってはいるのに 淋しいですね渚の足跡 夕波千鳥淋しくないか 泣きたくないか気がつけば いつでも夕陽海辺のお店の 苦めのコーヒーふたりの暮らしの 残り香のよう金色小道が 夕陽に続く渡ってゆこか もうひとりきり気がつけば いつでも夕陽悲しみ数えりゃ この手じゃ足りぬ幸せ...
  • 豆桜

    豆桜

    富士のふもとに 咲く花はうす紅化粧の 豆桜富士がきれいに 見られるように背丈かがめた 富士桜わたしあなたの腕の中あなたの夢を じゃませぬようにちょっとかがんで ついてゆく白い湯煙 見上げてる箱根桜も 豆桜谷の深さも 苦労の山も覚悟承知の 恋だからわたしあなたの腕の中二人の夢を 叶えるまでは耐えて咲きます 豆桜わたしあな...
  • みちのく山の宿

    みちのく山の宿

    風に舞いこむ リンゴの花を帯にはさんで 涙ぐむ愛して尽(つ)くして 燃えつきてそれでも未練に しのび逢いみちのく湯けむり 山の宿人目気にする 哀しい運命(さだめ)窓の向こうは 川の霧今夜はこの手を この指を涙で結んで 夢みたいみちのく湯けむり 山の宿逢えば苦しい 逢わなきゃつらい抱いてください 思いきり命をかぎりと 恋...
  • おんな花火師 花舞台

    おんな花火師 花舞台

    夜の美空を 焦がして上がる花火一輪 おんな伊達 おんな伊達技のいろはは 目で習う恋は二の次 三の次おんな花火師 心意気掛けた襷(たすき)の 白帯と長い黒髪 五尺の身丈(からだ)女いつ咲く 身を結ぶ燃えてはかない 命の花にこころ燃やした あで姿 あで姿娘盛りの 胸のうち締めた晒しの 奥の奥おんな花火師 男武者闇に花咲く ...
  • 人生すごろく

    人生すごろく

    道で拾った 百円玉も所詮 自分の ものじゃない品物購(か)って 物喰ってしあわせ買える はずがないそうさ人生 すごろく勝負女は男で 変わるもの男は図太く 生きなされ…ついてゆく エンヤコラサッサ泣いてこぼした 昨日の汗はいつか肥やしの 種になる種ならいつか 花も咲く貧乏ぐらし えじゃないかそうさ人生 すごろく勝負涙は笑...
  • 男の挽歌

    男の挽歌

    燕が低く 空を飛ぶ雨が未練を 連れてくる何年男を 生きてても払いきれない 寂しさだけは背中を丸め 裏通りくぐる酒場の 縄暖簾誰にも見せない 古傷が飲めば今夜も あゝまた疼(うず)く男の胸の 奥の奥なぜか消せない 女(ひと)がいる今頃どうして いるのやらおまえ浮かべる コップの底に小さな店に 流れるはやけに昭和の 恋歌(...