• 岡千秋

    「1197」
  • おとこの挽歌

    燕が低く 空を飛ぶ雨が未練を 連れてくる何年おとこを 生きてても払いきれない 寂しさだけは背中を丸め 裏通りくぐる酒場の 縄暖簾誰にも見せない 古傷が飲めば今夜も あゝまた疼(うず)くおとこの胸の 奥の奥なぜか消せない 女(ひと)がいる今頃どうして いるのやらおまえ浮かべる コップの底に小さな店に 流れるはやけに昭和の...
  • くちなしの白い花

    くちなしの白い花

    つらさ淋しさ 分け合いながらお酒がのめたら いいねと笑うくちなしの白い花 くちなしの白い花荒れたその手を かくす奴幸せあげたい この俺が酔えばほんのり 目許を染めて無邪気にもたれる 可愛いおまえくちなしの白い花 くちなしの白い花甘い香りの 黒髪に心ふるわす 夏の夜くちなしの白い花 くちなしの白い花雨に咲く花 白い花守っ...
  • 紅の宿

    紅の宿

    宿の灯りも 吹雪に燃えて渡る逢瀬の 夢一夜身体はじける 汗と息おんな命を くれないにあなた あなた抱いて下さい 紅の宿ひとの噂の つぶてを受けて罪な運命(さだめ)に 泣いていいそうよ華ある ひと時に酔える私が うれしくてあなた あなた夢もうつつの 紅の宿口に出したら 嫌われそうで声を殺して 指を噛む秘めるおんなの 姫鏡...
  • 母ざんげ

    母ざんげ

    母と言う身を 忘れなければ果たせぬものやら ご奉公お家騒動 若君様を守るためとは 言いながらわが子にさせる 毒味役毒は食うなと 叱るが常を毒と見えたら 食えと言う倅 千松 許しておくれ生みの母でも この母を鬼と呼ばずに 何と呼ぶ 何と呼ぶ「これ、千松。若君様へお見舞いの御お菓子、我先に手を出すとは、何たる不調法じゃ」「...
  • 雪簾

    雪簾

    赤ちょうちんが…雪にちらちら ゆれているここは花園 裏通りひとりぼっちで 飲む酒は遠い昔と かくれんぼ今じゃ帰れぬ 故郷(ふるさと)が胸のすき間で 見え隠れ夢という奴ぁよ…とうの昔に 捨てたけど忘れられない 国訛(なま)りこんな姿を おふくろが生きていたなら 何歳(いくつ)やら酔えば涙に なるものを詫びる心に 積(つも...
  • 片隅の愛

    片隅の愛

    煙草を吹かしてはあなたの真似をふたりの合図 秘密の音はノックを待って24時それなのに… それなのに…シュビシュビシュヴァ シュビシュヴァ結ばれないままでそう… そう…貴方には 片隅の愛ひとりで眠るたび冷たい夜が合わせた胸の 激しい過去にノックを待って24時それなのに… それなのに…シュビシュビシュヴァ シュビシュヴァ傷...
  • あぶないふたり

    あぶないふたり

    酔えば悪さしたくなるでしょうなんでわかる俺の癖がそんな時も こんな時もお酒のせいシャレた小さな店で男と女が…すねたように飲んでそんな仕草見せて今夜だけでも…恋!嘘!夜…ふたり酔った素振りなどは見せないね別に深い意味はないわ何かあるぜ 何もないわ好きにさせてシャレた小さな店で男と女が…ちょっと待って今はそんな言葉聞いて今...
  • 人生舞台~私は旅人じゃない~

    人生舞台~私は旅人じゃない~

    故郷を離れ 早や幾年月ここまでどうにか 歌ってこれた雪降る駅から 動き出した人生辛いことも悲しいことも 今では懐かしいああ、私には 歌があったから心支える 夢があったからただ季節を 通り過ぎただけの私は 私は… 旅人じゃない人生は舞台 春夏秋冬日本のどこかで 歌ってこれた振り向くことより 元気でいる人生目覚めた朝 湧き...
  • ひとり北夜行

    ひとり北夜行

    駅に着くたび 汽車は止まるのにあなたの面影を 降ろす駅がないこの胸が この髪が この指が夢の続き また恋しがる意気地なしです…夜が冷たい ひとり北夜行白いカバンと あなたへの手紙抱きしめ ただ一人 乗った終列車書きかけた サヨナラの その先に愛の花は また咲きますか生きられますか…ベルが泣いてる ひとり北夜行返し忘れた...
  • あきらめ上手

    あきらめ上手

    愛したことに 嘘はないけれど隠せはしないわ 世間(ひと)の眼に男のあなたは 将来(あす)があるちいさな噂も 傷になるだから別れて ゆくけれどあきらめ上手な 女と云わないであなたとふたり ひとつ屋根の下できれば暮らして みたかった過去あるおんなは 幸福(しあわせ)になってはいけない 運命(さだめ)ですだから綺麗に 身をひ...
  • 待子は神戸で泣いてます

    待子は神戸で泣いてます

    世間知らずの 泣き虫に惚れたと言ったわ やさしく抱いた今日はひとりの メリケン波止場あなた今頃 どちらの港待子は神戸で 泣いてますきっと帰るの なぐさめがせつない霧笛に 消されたあの夜海の男は 気まぐれ鴎知っていながら 尽くして燃えた待子は神戸で 泣いてます淋しがり屋の あの眸(ひとみ)探してさまよう 南京町(なんきん...
  • 絆雪

    絆雪

    しばれるはずの 雪なのにおまえがいれば あたたかい春まだ浅い 北国のしあわせ探す 道の駅連れて来たのさ 俺のふるさとへ二人にはらはら 絆雪もたれて眠る 細い肩子供に戻り おやすみよ都会の傷を せせらぎが洗ってくれる 清らかにこころ裸で 俺に飛び込めよ涙を拭えと 絆雪はるかに続く 白い道明日に向かい 歩き出す大事な愛を ...
  • 夜明けの酒場

    夜明けの酒場

    俺でいいなら 胸で泣きなよ無理にお酒で 逃げないで恋に破れた 傷跡は時のしずくが 想い出にする兄貴ぶるよな 柄じゃないけど昔愛した 女(ひと)に似ている遠慮するなよ ここでお休み白いうなじを 横たえてつらい別れの 理由(わけ)なんて鍵をかけたら 言わなくていい俺の心が 急にうずくよ痩せた肩先 触れてみたくてどんな夜でも...
  • おんな花火節

    おんな花火節

    女だてらに 火の粉を浴びて空に描きたい 夢がある好きで繋(つな)いだ 家業じゃないかなにがなんでも やり通す春夏秋冬 いつだってアアンア…アンア…どんと咲かすぞ 夢花火ときに切ない 夜風にぬれて傍に寄りたい 人がいる赤い仕事着 似合っちゃいても浴衣なんかも 着てみたい心を離れぬ この想いアアンア…アンア…いつか咲かすぞ...
  • 袰月海岸

    袰月海岸

    赤い絵具を ぶつけたように燃える夕陽よ なぜ寒い なぜ寒い今の倖せ あなたの愛をすてて都会に 行けるでしょうか夢を選んだ 女のこころ許してください 袰月(ほろづき)海岸生まれ育った 海辺の町は人も情けも あたたかい あたたかい夢を叶えて ふたたびここに帰るその日は 来るのでしょうか竜飛颪(たっぴおろし)か 風花舞ってな...
  • 天竜峡

    天竜峡

    心からあなたを愛した 夏の日のやさしい時間は 巻きもどせない綿虫が 風に舞う 細い道儚い命の いとおしさ天竜峡は 山深くなぜか涙が こぼれて落ちるたわむれに鐘をついたら ジンときてふさいだ気持ちが すこしは晴れたあの頃は 二人して しあわせを築いていけると 信じてた天竜峡は 霧の中せめて心に 明かりがほしいあなたから身...
  • 志摩半島

    志摩半島

    イカダをぬって 遠ざかる二人をひきさく にくい船行っちゃいやです 行かないで 行かないでカモメのように 泣きながらいっしょに行けない 私ですああ 浜木綿が散って悲しい 志摩半島このままここに 住みたいと私をうばった 船の陰捨てちゃいやです 捨てないで 捨てないで明日をさがす旅ならば終ってください この町で風に途切れる ...
  • 君津・木更津・君去らず

    君津・木更津・君去らず

    潮の香せつない 見染(みそ)めの松で別ればなしを するあなた人眼をしのんで 愛したふたり今さら他人に 戻れない君津・木更津 君去らずあなた…あなた… お願いひとりにさせないで浴衣で踊った 港のまつり花火みたいに 燃えた恋あなたと出逢って 初めて知ったおんなの歓び しあわせを君津・木更津 君去らずあなた…あなた… お願い...
  • 出船桟橋

    出船桟橋

    あなたには海がある 夢があるわたしには縋(すが)りつく 胸もない笑顔で見送る はずなのに旅立つ背中の 憎らしさ行かないで… 行かないで…出船桟橋 涙の雨が降るこの指がこの髪が 愛しいと夜明けまで手まくらを してくれたいつかは迎えに 来るという約束信じて ひとり待つ忘れない… 忘れない…出船桟橋 涙の雨が降るせつなさと恋...
  • 北の海峡

    北の海峡

    北へ行く船に乗る 港桟橋は寒さこらえる 人ばかりあなたから 出来るだけ遠くと決めた 旅なのにいたい いたい 血がにじむ夜の海峡あゝせつない わかれ雪海鳴りが窓ゆする さびれ港宿屋根が歯ぎしり 夜泣きする酔うほどに さみしさが氷柱(つらら)になって 恋しがるつらい つらい やるせない爪のさきまであゝ泣いてる 未練です海峡...