• 岡千秋

    「1197」
  • 女の倖せ

    女の倖せ

    きれいなだけで 見ないであなた過去があります わたしにも夜のよごれた 水だって生きてゆくため 飲みましたそんな女の 酒と涙をわかってほしいのよ あなたにだけはいつものままの おまえでいいと触れるくちびる 熱い息あなた泣けます うれしくて離さないでね この腕を春の日射しに 忘れかけてた笑顔が少しずつ もどって来ますしばら...
  • 望郷の橋

    望郷の橋

    故郷の香りが 恋しいときはいつも来たわね この陸橋へ二つ並んだ 線路の果てにそうよふたりの 津軽が見える背伸びしながら 歌ったねお国訛(なま)りで …よされ節詰襟(つめえり)ボタンと お下げの髪が肩を寄せ合い 上りの夜汽車風の匂いも 乾いた街にゃ馴染(なじ)めなかった 初めのうちは夢の暦(こよみ)も 幾年(いくとせ)か...
  • 孫が来る!

    孫が来る!

    花なら野道の タンポポかそれとも真赤な チューリップ三つ(みっつ)ちがいの 姉・妹(あねいもと)はじめて飛行機 子供旅孫が来る 孫が来る 孫が来る土くれだった 春つれて四国の里から 孫が来る俺達夫婦も 言うなれば駆け落ちみたいに できた仲ひとりむすめが 真似をして瀬戸内海を 飛び越えた孫が来る 孫が来る 孫が来る羽田の...
  • 父娘酒

    父娘酒

    おまえとこうして 二人きり飲むのは何年ぶりだろういっぱい話を したいのに泣けてきちゃうよ お父ちゃん電話をしろよ 時々は 母ちゃんにせめて今夜は 父娘酒「お父ちゃん…今日まで、ありがとね。」「何だよ、急に。そんな湿っぽい話は、明日にしろよ。」「お父ちゃん、いいから黙って聞いて!私、幸せになるからね。約束するからね。もう...
  • ウィスキー

    ウィスキー

    淋しき男が 抱いて寝るおまえのかわりの ウィスキー口をすぼめて 寒さをこらえりゃヒュルリ北風 心を叩く恋をなくした 男はコロコロコロコロ 転がる落葉行くあてないのに この足がおまえの家路に 行きたがる悲しき心の やりどころ酒場の片隅 ウィスキー昔夢なら 預けるほどあった可愛いおまえを 知るまえならば恋をなくした 男はコ...
  • 長良川艶歌

    長良川艶歌

    水にきらめく かがり火は誰に想いを 燃やすやらあなた あなたやさしい 旅の人逢(お)うたひと夜の 情けを乗せてこころまかせの 鵜飼い舟好きと言われた 嬉しさに酔うて私は 燃えたのよあなた あなたすがって みたい人肌を寄せても 明日は別れ窓に夜明けの 風が泣く添えぬさだめと 知りながらいまは他人じゃ ない二人枕(まくら)...
  • 夢しずく…

    夢しずく…

    とどろき流れる 大河の水もはじめはほんの ひとしずく胸にふるさと 抱きしめながら自分を信じて 一歩ずつ夢は夢で 終わらせないさ男いちずの 夢しずく…いくつもしずくが 大地にしみていのちの森が よみがえる時に笑顔で 背中を押して支えてくれたよ この俺をきっときっと 幸せにするお前いてこそ 夢しずく…いく年(とせ)しずくが...
  • 男の坂道

    男の坂道

    男は背中に 顔がある沁みた苦労が 書いてある綺麗事では 渡れないまして茨(いばら)の 浮世道夢を体に 巻きつけて登る男の坂道を情けを受けたら 手を合わし恩を返すも また男見栄や飾りは 捨てて行く人は人なり 人と成り花は夜桜 八重桜登る男の坂道を命をあずける 人がいる命あずかる 人がいるそれを夫婦(めおと)と 云うのなら...
  • 酒とふたりづれ

    酒とふたりづれ

    路地にこぼれる 流行歌(はやりうた)聴けば昔が 近くなる男と女の 酒もいいひとり手酌の 酒もいいおもいでばかり 浮かぶ夜は酒よおまえと ふたりづれ夢を肴に 酔いしれたあれは三十路(みそじ)の 半(なか)ば頃今更わびても もう遅い惚れて別れた あのおんな心が寒い こんな夜は酒よおまえと ふたりづれ紺ののれんの 向こうから...
  • あゝ…恋挽歌

    あゝ…恋挽歌

    あなたが幸せ くれたのにあなたが幸せ 壊したの憎み切れない 人だから私許して しまうのよ心も体も 忘れられないあゝ…恋挽歌あなたが笑顔を くれたのにあなたが笑顔を 奪ったの胸の痛みも 傷跡も他の男(ひと)には 見せないわ吐息に虚しい 涙隠してあゝ…恋挽歌あなたで待つこと なれたのにあなたは待っても 来ないのね苦いお酒を...
  • 雨の函館

    雨の函館

    雨の…函館 女がひとり褪(あ)せたくちびる 紅を引くほかの男に この身あずけて断ち切るはずが 断ち切れずだめな…だめな…だめな…私ね港あかりに 未練がうずく馬鹿な…女と 自分を責めて一夜かぎりの 宿を出る濡れた三叉路 右に曲がれば鹿部(しかべ)の町へ ゆけるけどさむい…さむい…さむい…私ねいのち千切れて 運命がにくい雨...
  • 山鹿慕情

    山鹿慕情

    うらむ気持よりも 幸せでしたたとえ短い 月日でも愛し合えたわ ふたりしてあゝ 山鹿を… 忘れないあなたがいるから いつまでもいつか雨に濡れて 八千代座(やちよざ)通り歩く私の 肩抱いて寒くないかと なぐさめたあゝ あの日の… やさしさが心の底まで しみましたあなたいるかしらと はかない夢を抱いてさまよう 鞠智城(きくち...
  • 海峡かもめ

    海峡かもめ

    凍えるような 指先をそっと吐息で 温める群れをはぐれた かもめが一羽渚の砂で 淋しそうあなたに逢いに はるばるとひとりで来ました 海峡越えてあなたに二度と 逢うまいと誓う心も 無駄でした恋にせつなく 泣いてる胸をも一度逢って 伝えたい愛したころの 思い出が涙ににじむの 燈台灯り冷たい海に 身を投げて愛の苦しみ 忘れたい...
  • ぬくもり酒

    ぬくもり酒

    胸の痛みを 消すために飲んだお酒の はずなのに飲めば飲むほど あの人の腕に抱かれた ぬくもりが忘れられない 忘れられない思い出酒場別れ涙の せいかしら路地の灯りも うるんでる泣けば泣くほど あの人の言葉やさしい ぬくもりを酒といっしょに 酒といっしょに飲みほす私あんな男と 恨んでも惚れた私が 悪いのね酔えば酔うほど あ...
  • 博多俄雨

    博多俄雨

    仮設舞台で 見初(みそ)めた人としゃもじ叩いて 踊って浮かれ川面(かわも)にネオンが 消える頃女心は ゆらゆらと辛い切ない ないものづくし募(つの)る思いを 那珂川へ博多どんたく 俄雨(にわかあめ)裸締めこみ 男の匂い後(あと)を追っても 叶(かな)わぬ掟(おきて)背中にかかり湯 泡沫(うたかた)の浴衣(ゆかた)一枚 ...
  • あなたに決めました

    あなたに決めました

    いろいろあれこれ あったけどあなたに あなたに 決めました肩を寄せれば ぬくもりが胸の隙間(すきま)に こぼれますまわり道した めぐり逢い今夜は酔っても いいですか いいですかいろいろあれこれ あったけどあなたに あなたに 決めましたつらい過去(むかし)の 傷跡はそっと笑顔で 隠します情け重ねた 赤い糸この恋信じて い...
  • 女漁師

    女漁師

    波が荒れても 沖に出る海は厳しい 勝負の世界ねじり鉢巻 船を出す漁を極める この身体男勝りの 女漁師と 人が言う負けず嫌いの この私漁師の世界に 飛び込んだキツイ仕事に 耐えるのも惚れた惚れたよ この海に男勝りの 女漁師と 人が言う女なんかにゃ 出来るかと悔し涙を バネにして白い波けり 荒海へ親方さえも 舌を巻く男勝り...
  • 三陸海岸

    三陸海岸

    出船だ 出船だ 錨を上げろ活きが勝負の サンマ漁三陸漁師の 底力ひと荒れふた荒れ 天まかせ無事を祈って 日和山海の男の 心意気そんなあんたに ほれたのさあんたも私も 海っ子育ち沖じゃサンマが 待っている男の仕事場 命がけ三陸海岸 好漁場大漁旗が 空に舞う海の男の 心意気そんなあんたに ほれたのさ三陸漁師の 底力ひと荒れ...
  • 女ひとり酒

    女ひとり酒

    女の涙か 雨が降りますこぼれるため息 にじむ店灯りひとりの酒は こんなにつらい酔えば 恋しくて今ごろ誰と どこで雨やどりあなたに逢いたい せめてもう一度離れていました いつか心が知らずにいたのは ばかね私(あたし)だけひとりの夜は こんなに寒い酔えば せつなくてつめたい雨に 消えたうしろ影あなたに逢いたい せめてもう一...
  • なにわ情話

    なにわ情話

    水の流れと 人の世はままにならない 浮き世川意地があります 浪花の女です涙こらえる 天満橋(てんまばし)あんたの夢に つきあって苦労承知で ついて行(ゆ)く遅い帰りを 待つ夜は胸にしみます 淋しさが情けあります 浪花の女です恋の噂は 聞かぬふり月日を重ねて またひとつ結ぶ絆の 泣き笑いしみる川風 向い風今日も二人に 吹...