西條八十
「226」赤い靴のタンゴ
誰がはかせた 赤い靴よ涙知らない 乙女なのにはいた夜から 切なく芽生えた恋のこゝろ窓の月さえ 嘆きをさそう何故に燃えたつ 赤い靴よ君を想うて 踊るタンゴ旅ははてなく 山越え野越えて踊る肩に春はミモザの 花もにおう運命かなしい 赤い靴よ道は二筋 君は一人飾り紐さえ 涙でちぎれてさらばさらば遠い汽笛に 散り行く花よ...いつも貴方のことばかり
三味線もっても 上の空お銚子もっても 上の空あの晩あなたに 逢ってからこころはからっぽ 上の空そうよほんとよ あれからはいつもあなたの ことばかり ことばかりお稽古してても 上の空映画を見てても 上の空ぼんやりしてると 笑われてわたしがわたしで 無いわたしそうよほんとよ あれからはいつもあなたの ことばかり ことばかり...