西條八十
「226」しあわせはどこに
街には楽しい 人の波空にはあかるい バラの雲燕もおどるよ 青い風それなのに わたしは独り たゞひとりしあわせは あゝ しあわせはどこにわたしは都の 片隅の名もない野の花 乙女花咲く日も散る日も 君知らずさみしさよ わたしは独り たゞひとりしあわせは あゝ しあわせはどこにくもらぬこゝろの 真珠だまのぞけば悲しい 恋の傷...哀愁日記
山のひと夜の ゆきずりの愛の言葉を 忘れかね涙ぐみ清いやさしい 眸の君を呼べば都の 夕日が紅い雨の降る日は 窓のそと風の吹く夜は 星の空あのひとはいつもどこかで わたしを見てる涙ぐむよに いとしむように弱い乙女の ゆく途はいつも沙漠の ひとり旅幸福は見えぬ小鳥か 消えゆく虹か愛の泉の 湧く街恋し...