• 北島三郎

    「202」
  • 城

    石垣(いしがき)の 石の声松(しょう)・竹(ちく)・梅(ばい)の 風の声耳を澄(す)ませば 歴史(れきし)の歌に出会(であ)えるだろう 逢えるだろうああ 城ありて 涙も熱い甍(いらか)には 天(あま)の川(がわ)北斗(ほくと)の星も 冴(さ)えわたる森羅万象(しんらばんしょう) この世のことは運命(さだめ)が描く 絵巻...
  • 男の涙

    男の涙

    おまえを一人で 死なせるものか死ぬときゃおれも 一緒だよ苦労ばっかり かけてきたばかな男の 目になみだあまえておくれよ むしゃぶりついて今夜はやけに 寒いなあ医者がみすてた からだでもきっと癒すぜ このおれが云うてくれるな すまないなどと妻という名は だてじゃない来年春にゃ ふたりして観音さまへ 詣ろうなァー...
  • 関東流れ唄

    関東流れ唄

    義理に生きても いのちはひとつ恋に死んでも いのちはひとつふたつあるなら おまえにひとつ分けてやりたい このいのち親のゆるしを もらってこいと故郷へ帰した かわいいあいつあんなきれいな 瞳をしたやつをなんで汚さりょ この水にここが勝負と でてゆくときはせめてにっこり 笑っておくれ俺は男で おまえは女しょせんどこかで 泣...
  • 仁義

    仁義

    (セリフ)お控えなすって!手前 生国と発しまするところ関東です天に一つの陽があるようにこの世に道理がなくてはならぬどんな立派な素ぶりよりひとはこころだこころをすててどこへゆく(セリフ)早速のお控え有難うござんす義理で始まり仁義で終るいっぽん道だよおいらの旅はどうせ短い いのちならぱっと燃やして世間の隅を 照らしたい(セ...
  • 青い背広で

    青い背広で

    青い背広で 心も軽く街へあの娘と 行こうじゃないか紅い椿で ひとみも濡れる若い僕らの 生命の春よお茶を飲んでも ニュースを見ても純なあの娘は 仏蘭西人形夢を見るよな 泣きたいような長いまつげの 可愛い乙女今夜言おうか 打明けようかいっそこのまま 諦めましょか甘い夜風が とろりと吹いて月も青春 泣きたい心...
  • 裏町人生

    裏町人生

    暗い浮世の この裏町をのぞく冷たい こぼれ灯よなまじかけるな 薄なさけ夢もわびしい 夜の花やけにふかした 煙草のけむり心うつろな おにあざみまゝよ火の酒 あおろうと夜の花なら 狂い咲き霧の深さに かくれて泣いた夢が一つの 思い出さ泣いて涙が 枯れたなら明日の光を 胸に抱く...
  • 男の純情

    男の純情

    男いのちの 純情は燃えてかがやく 金の星夜の都の 大空に曇る涙を 誰が知ろ影はやくざに やつれても訊(き)いてくれるな この胸を所詮 男のゆく道はなんで女が 知るものか暗い夜空が 明けたなら若いみどりの 朝風に金もいらなきゃ 名もいらぬ愛の古巣へ 帰ろうよ...
  • 国境の町

    国境の町

    橇(そり)の鈴さえ寂しく響く雪の曠野(こうや)よ町の灯よ一つ山越しゃ他国の星が凍りつくよな国境(くにざかい)故郷はなれてはるばる千里なんで想いがとどこうぞ遠きあの空つくづく眺め男泣きする宵もある行方知らないさすらい暮し空も灰色また吹雪想いばかりがただただ燃えて君と逢うのはいつの日ぞ...
  • 金色夜叉

    金色夜叉

    熱海の海岸 散歩する貫一お宮の 二人連れ共に歩むも 今日限り共に語るも 今日限り僕が学校 おわるまで何故に宮さん 待たなんだ夫に不足が 出来たのかさもなきゃお金が 欲しいのか宮さん必らず 来年の今月今夜の この月は僕の涙で 曇らして見せるよ男子の 意気地から恋に破れし 貫一はすがるお宮を 突き離し無念の涙 はらはらと残...
  • 上海だより

    上海だより

    拝啓御無沙汰しましたが僕もますます元気です上陸以来今日までの鉄の兜の弾の痕自慢じゃないが見せたいな酷寒零下の戦線は銃に氷の花が咲く見渡す限り銀世界敵が頼みのクリークも江南の春未しです隣りの村の戦友は偉い元気な奴でした昨日も敵のトーチカを進み乗取り占領し土鼠退治と高笑い彼奴がやれば僕もやる見てろこんどの激戦にタンクを一つ...
  • 上海の街角で

    上海の街角で

    リラの花散る キャバレーで逢うて今宵別れる 街の角紅の月さえ 瞼(まぶた)ににじむ夢の四馬路(すまろ)が 懐かしや泣いて歩いちゃ 人眼について男、船乗りゃ 気がひけるせめて昨日の 純情のままで涙かくして 別れようか君を愛して いりゃこそ僕は出世しなけりゃ 恥しい棄てる気じゃない 別れて暫し故郷(くに)で待てよと 言うこ...
  • 人生の並木路

    人生の並木路

    泣くな妹よ 妹よ泣くな泣けばおさない 二人して故郷をすてた かいがない遠いさびしい 日暮の路で泣いてしかった 兄さんの涙の声を 忘れたか生きてゆこうよ 希望に燃えて愛の口笛 高らかにこの人生の 並木路...
  • 戦友

    戦友

    ここは御国を何百里はなれて遠き満州の赤い夕陽に照らされて友は野末の石のした思えば悲し昨日までまっさき駆けて突進し敵をさんざん懲したる勇士はここに眠れるかああ戦いの最中にとなりに居ったこの友のにわかにはたと倒れしをわれは思わず駆け寄って軍律きびしき中なれどこれを見捨て置かりょうか「しっかりせよ」と 抱き起し仮ほう帯も弾の...
  • 海鳥の島

    海鳥の島

    潮が変われば にしんがもどるにしんがもどれば せがれがもどるじいさんひとり にしん場あとで海をみつめる オロロン…オロロンの島天売 焼尻 遠くはないがシベリアおろしが 波さわがせるオンコの林 牧場を歩くあれも旅人 オロロン…オロロンの島むかしばなしは にしんに尽きてみじかい夏は もうすぎて行く北へ帰るか 海鳥たちの声が...
  • 運

    運のない奴ァ どこまでも振った賽の目 凶と出るじたばたしたって 世の中はお前一人じゃ どうにもならぬ勝負はその日の 時の運嫁に行くなら それも運ついてくるなら それも運右か左か わからないどっちにしたって お天道さまが西から出てくる 訳はない運は自分で 開くもの何もしなけりゃ 逃げられるせくなあせるな 手を抜くないざと...
  • 沖縄の女

    沖縄の女

    泣いたらだめよと言われたらこらえた涙があふれだす逢えてよかった 肩だきよせて古都の高台 さまよえば赤いデイゴの 花盛りさんごのかんざし 髪にさしやさしくみつめる 那覇の女シュロの葉かげに そよそよそよぐ風に情が あるならば留めておくれよ 沈む陽を別れはきたけど もうおれの心はここへ おいてゆく白い浜辺よ みどりの椰子よ...
  • 斧

    大森林に 立ち向い斧をふるたび おやじを想う白い大地に 男の夢をあ…賭けたおやじの 青春はいまも錆びずにいまも錆びずに ここにある両手に余る 切り株を力まかせに ひきずり起こしゃあせと涙の 苦労の花よあ…強いおやじが 泣いた日を斧は見ていた斧は見ていた 知っていたおやじがくれた ど根性 斧といっしょに 受けついだのさ俺...
  • 肩に二月の雪が舞う

    肩に二月の雪が舞う

    肩に二月の 雪が舞う音もたてずに 降り積るお別れします 今日かぎり言ったばかりの その人の肩に二月の 肩に二月の雪が舞う肩に五月の 雨が降る一人あるきに ふりしきる馬鹿な私に にあいですすねたばかりの その人の肩に五月の 肩に五月の雨が降る肩に九月の 風が吹くジーンとたたいて 吹きぬける生まれ変わって まいりますきめた...
  • 黒潮漁歌かつお船

    黒潮漁歌かつお船

    薩摩生れの 黒潮育ちかけて磨いた 根性かもめ男度胸の 一本釣りだ越える赤道 かつお船波のしぶきを まともにかぶり鰹群見つけりゃ 命が燃えるまった無しだぜ 一本釣りだでっかいかつおが 空に舞う明日は母港だ 祭りも近い雲の切れ間に あの娘が浮かぶ俺とお前の 一本釣りだ待っていてくれ かつお船...
  • 残雪

    残雪

    俺がやらなきゃ 誰がやるどうせ一度は 散る命義理と恩義を サラシの奥に抱いた男の 肩先を馬鹿な奴だと たたく雪済まぬ許せと 背にかけりゃ泣いているよな 襟足がたまらない程 又いじらしいうらみましたぜ この稼業恋という字を 消した雪さわぐ心に 冷酒をくんで三途の 川をゆく地獄参りの 一本道さぐいとにらんだ 男影つつむ今夜...