• 北島三郎

    「202」
  • さぶ

    さぶ

    本当の職人仕事は 血を絞り骨を削って得るものだがんばろうぜ! なあ さぶよぐずとわらわれ あほうと呼ばれ耐えた修行の 日陰道だれもわかっちゃ くれないけれど曲げてくれるな さぶよ さぶ人も通わぬ 山奥に咲いた紅葉(もみじ)の こころ意気ぐずでいいじゃないか 言わせておけよじっくり生きる辛抱と正直がおまえの宝だ なあ さ...
  • 修羅の川

    修羅の川

    誰の涙か 男の胸をぬらす木(こ)の葉(は)の 露しぐれ筋を通して 阿呆で生きて堕(お)ちて転べば ア… 修羅の川女やさしい 一夜(ひとよ)の縁(えにし)抱けば小袖が また濡れる未練ばかりの 旅路の果ては西か東か ア… なさけ川貸した情けより もらった恩を抱いて背中に 風が哭くそんな時節に 命をはって渡る男の ア… 修羅...
  • 職人

    職人

    真を込めて 尽くしたあとのあとの一手が 値打ちを決めるこれが職人 男の仕事頑固一徹も いいじゃないか理屈や真似で できない技を肌で覚えた この手で決めるこんな男の 小さな意地が支えているさ 世の中を上には上の また上があるいつか世間を 揺さぶるような腕を磨けと 師匠(おやじ)の声が今も聞こえる あかね空あかね空...
  • 十九のまつり −まつりパートII−

    十九のまつり −まつりパートII−

    祭りの夜に あの娘が泣いたよ別れが辛いと すがって泣いた踊ればまぶしい 絣(かすり)のゆかたか細い指先に 月影白いあの娘の涙がなつかしいあれは十九の 秋祭一年あとの 祭りの季節にあの娘は黙って お嫁に行った真っ赤な夕陽の 小川の道を泣き泣き馬の背に 揺られて行ったあの娘と別れた悲しみが俺の勇気の 湧きどころ祭りが恋し ...
  • 男の母港

    男の母港

    男の腹には 海があるぽつんと灯りが ひとつある生きることにも 疲れたときは流れ舟 こわれ舟 迷い舟涙を捨てに 来いと言う雪より冷たい 雨が降る酔うほど切ない 酒になる北の夜空に 面影追えば流れ舟 こわれ舟 迷い舟汽笛が遠く 哭(な)くばかり夕陽は燃えて 色あせず想いは胸に まだ熱い波に抱かれて 漂いながら流れ舟 こわれ...
  • 尾道の女

    尾道の女

    北国の 町からきたよ潮風に ふかれて来たよあゝ 尾道あの娘がここに いるという噂の町の ともしびが泣けとばかりに まぶたにしみるしあわせが 待っててくれるそんな気が したんだ俺はあゝ 尾道さびれてのこる 色街(はなまち)ののみ屋の椅子に こしかけりゃじんとひゞくぜ 霧笛の音が逢えないと わかっていてもいちどだけ きてみ...
  • ギター仁義

    ギター仁義

    雨の裏町 とぼとぼと俺は流しの ギター弾き“おひけえなすって手前ギター一つの渡り鳥にござんす”峠七坂 手を振って花の都へ 来てから五年とんと うきめの 出ぬ俺さ風の冷たさ 身に沁みる俺は落葉か ギター弾き“おひけえなすって手前おけさおけさの雪の越後にござんす”故郷想えば 初恋の死んだあの娘も 生きてりゃ廿才俺もあん時ゃ...
  • 銀座の庄助さん

    銀座の庄助さん

    銀座柳が なびこが散ろがそれはうき世の 風次第おれは銀座の 庄助さん 庄助さん親の意見にゃ なびかぬけれど酒ときいたら わきめもふらず飲んでこの世を ヨー ホイホイはしご酒女房もらえと もちかけられてコップもちゃげて 高笑いさても気ままな 庄助さん 庄助さんおれの彼女は お酒と決めたかわい徳利よ ちょいとこっちゃおいで...
  • 喧嘩辰

    喧嘩辰

    恋とゆう奴あどえらい奴だ俺を手玉に とりやがる惚れてなるかと力んじゃみたが泣かぬつもりを泣かされてたまらなくなる俺なのさひとつ張られりゃみっつ張りかえすこれが男の 意気地だぜおっとどけどけこの横車あほう承知でおしとおすやぼな御意見 無用だぜ殺したいほど惚れてはいたが指もふれずにわかれたぜなにわ節だと笑っておくれケチな情...
  • 足跡は明日へ続く

    足跡は明日へ続く

    ふり返る 空の彼方に待ちわびる 母がいるふり返る 時の彼方に涙ぐむ 女(ひと)がいる数えきれない 出逢いがあって数えきれない 別れがあって歩いた道は 乱れていても足跡は 足跡は 明日へ続くやがてくる 春を信じて別れたね 雪ん中負けないで 生きてゆこうと呼び交わす 空遠く忘れられない 思いがあって拭い切れない 涙があって...
  • 兄弟達よ

    兄弟達よ

    何が不満で いじけているのか望みはいつでも 半分さまわり道こそ 人間をでっかくつくって くれるのさなあ 人生の 兄弟達よ何がつらくて 泣きごと言うのか涙で咲く花 ありゃしないまわり道こそ 他人(ひと)さまの人情(なさけ)や熱さを 知るところなあ わかるだろ 兄弟達よ何がこわくて 小さくなるのかひらき直りも 必要さまわり...
  • さだめ道

    さだめ道

    同じ幹から 分れた枝も表と裏では 実もちがうたとえ日陰で 育ってもお天道さまを 恨まずに生きてゆくのさ さだめ道人と言う字は ふたりの出会い寄りそい支えて 生きている浮くも沈むも 世のならい涙が落ちた 道ばたにいつか咲くのさ 夫婦花(めおとばな)いのち天から さずかり受けて男はみがいて 返すもの熱い情けは 腹ん中つらさ...
  • 男の一念

    男の一念

    我慢辛抱 束ねて背負い意地をつかんで 立ち上がるむかい風なら 真っ向(まっこう)勝負かけて試練の 人生(みち)を行く男の一念 ひとすじに運のわるさに 足踏みしてもくやし涙は かみしめて生きる男は 根性一途絆信じて 行くからは揺るがぬ一念 ふところに握る拳は いのちの拳誠実(まこと)つらぬく ためにある枯れちゃいないぜ ...
  • おとこの潮路

    おとこの潮路

    北斗の向こうに きみがいる生きる証を 熱い何かを海に求めた 旅立ちをわかってくれて ありがとうきみのためにも ゆかねばならぬ波瀾万丈 おとこの潮路嵐の向こうに きみがいる海を愛して 海に分け入る海の苦労の 七重(ななえ)八重(やえ)信じてくれて ありがとうきみのためにも 耐えねばならぬ波瀾万丈 おとこの潮路夕陽の中にも...
  • 修羅の橋

    修羅の橋

    男縛るにゃ お金はいらぬ義理のほそ紐 あればよい親に貰うた 五体(からだ)を張って渡る仁侠 修羅の橋行けば戻れぬ なみだ川こんな街にも 肋骨(あばら)が燃えて肉に火がつく 恋もある縦につないだ よさほい仁義横にからんで しめらせるあの娘おぼこな ネオン花時はあの娘に 男をつくり消えてゆくだろ 俺の影浮世横目に 盃伏せて...
  • 石松おとこ花

    石松おとこ花

    酒と喧嘩は ならぬと意見され石松頼むと 親分(おや)の目にここに大役 代参(だいさん)引き受けて粋な啖呵(たんか)は まっぴらごめん富士も見送る 急ぎ足刀納めて 讃岐の戻り道石さん立派と おだてられよせばいいのに 騙され呑む酒が五臓六腑(ごぞうろっぷ)に 沁み渡り悪い奴らは 都鳥肩に振り分け 晒(さら)しに長脇差(なが...
  • 清水の暴れん坊

    清水の暴れん坊

    富士を背中に 東海暮らし生まれながらの ど根性義理と情けを 道連れに縞(しま)の合羽が 揃いぶみ清水港の あゝ男伊達惚れて担いだ 駿河の御輿命預けて 修羅の川渡り切るのさ 付いて来いはやる心に 茶わん酒清水港の あゝ勇み肌馬鹿は死ななきゃ なおらねぇそんなセリフも どこ吹く風と見えぬ片目に 隠...
  • 男の人生

    男の人生

    花の咲く道 茨(いばら)の道も人はそれぞれ 運命(さだめ)を歩く義理を背負って 真実(まこと)を抱いて奥歯かみしめ 生きてきたふり向けば 五十年男の人生さ暗く寂(さみ)しい 世の中だってじっと見つめりゃ 灯りが見える苦労なやみは 月日の川に流し渡った 星の数おまえには ありがとう男の人生さ夢の一文字(ひともじ) 近そで...
  • 桜月夜

    桜月夜

    さくらの花びら 目を細め見上げるおまえの 笑い顔振り向けばいろいろ あったよなつまずきながらも この世坂越えた二人に あー 花吹雪おまえにいつでも 支えられ今日まで何とか 頑張れた口には出さぬが ありがとう苦労をしたぶん かけたぶん今度おまえに あー 恩返しおまえと二人で またいつか花見をするんだ この場所でしみじみと...
  • 北の漁場

    北の漁場

    いのち温(ぬく)めて 酔いながら酒をまわし飲む明日の稼ぎを 夢に見て腹に晒(さら)し巻く海の男にゃヨ 凍る波しぶき北の漁場はヨ 男の仕事場サ沖は魔物だ 吠えながら牙をむいてくる風にさらした 右腕の傷は守り札海の男にゃヨ 雪が巻いて飛ぶ北の漁場はヨ 男の遊び場サ銭のおもさを 数えても帰るあてはない二百浬(カイリ)を ぎり...