• 北島三郎

    「202」
  • 恩

    大地に根をはる 草や木に小さく咲いてる 花もある世間と言う山 人の山ひとつの魂ひとつのこころ この命くらべて見るのさ 身の丈を一度や二度やら つまずきは誰にも何処にも あるはずさ嵐に会う日も あるだろう上から下へと吹かれて転び また立ってあせらずくじけず たくましくこの親あるから 今があるお世話になったさ むくいたい立...
  • コスモス日和

    コスモス日和

    倖せは 平凡がいい子供は 多い方がいい仲良く やれたらいい流れるままに やればいい娘よ 愛する人を 信じてはるかにせめて 思い出だけは 置いてゆけあしたは晴れる 秋桜(コスモス)日和(びより)幼いお前が 今も心に人生は おだやかがいい笑顔は 毎日でもいい労(いたわ)り あえたらいい優しくされて いればいい娘よ 最後の夜...
  • ああ・おふくろょ

    ああ・おふくろょ

    おふくろの 夢を見た菜の花畑で 微笑ってたおふくろよ 幸せだったか おふくろよ小さくなった 両の手を最後にそっと 撫でた夜台所の 片隅で時々隠れて 泣いていたおふくろよ 苦労してたな おふくろよ思ったことの 半分もしてやれなくて 悔やむだけ年月を 何気なく数えていつしか 親の年齢おふくろよ 幸せだったか おふくろよ守っ...
  • 加賀の女

    加賀の女

    君と出逢った 香林坊の酒場に赤い 灯がともるああ 金沢は 金沢は三年前と おんなじ夜が静かに俺を 待ってる町だ忘れられよか 天神橋のたもとにのこる 物語りああ あの女も あの女もおもいの糸の 細白糸をかけるか遠い 都の空に謡曲がふるふる 加賀宝生の木洩れ陽青い 石だたみああ 金沢は 金沢は身も世もすてて あなたのために...
  • 薩摩の女

    薩摩の女

    義理あるひとに 背を向けて別れてきたと 君は泣く雨がふるふる 天文館通の青いランプに 身をよせりゃああ 悲恋の旅の ドラが鳴る信じていたよ この胸にいつかは帰る 女だった肩へ廻した 男の腕にぐっと力を いれながらああ 仰げば燃える 桜島いままで泣いた かなしみはかならず俺が とりかえすやがて出船の 合図はあるが故郷で待...
  • 俺らしく

    俺らしく

    世間の風の 冷たさに悔し泣きした 夜もあるそれでも夢を あきらめずがむしゃらに ひたむきに 生きてきた誓う男の 心意気俺はやっぱり 俺らしくごめんといつも 言えなくて苦労おまえに かけたまま不器用者と わかっていても強がって 意地張って 生きてきた惚れた女は 一人だけ俺を支えた おまえだけ心は熱く これからも失くしたく...
  • 愛の道

    愛の道

    あなたの肩に 舞い落ちた冷たい雪は いつとける いつとけるふり返ることなどできぬと知りながら今日もゆくゆく 無念坂けわしき道 されど我が道 愛の道押させて下さい 車椅子あなたの頬に 吹きつける冷たい風は いつやむの いつやむの許されることならかわってあげたいと辛さこらえる 乙女坂けわしき道 されど我が道 愛の道押させて...
  • あじさい情話

    あじさい情話

    心変わりは 憎くても逢えばおまえが 離せまい俺の負けだよ 戻っておくれ明日に咲こうと ささやきかける花はあじさい おとこの泪夢で抱きしめ 名を呼べば枕つめたい ひとり寝の夜半の箱根の 湖畔を走る雨の糸さえ みれんを束ね窓にあじさい おんなの泪花で日暮れた 湯の街の朝は愁いの 始発駅泣いて手をふる あの女よりも逢えず別れ...
  • 舵

    奥歯かみしめ 男が耐える苦労吹雪の荒れる海負けてたまるか 沈んでなるか広いこの世の 海原を俺はこの手で 舵をとる灯り色した 情けがあればどんな闇夜も 恐くないつばさ可愛い お前はかもめ惚れて運命を 託すなら俺の大事な 舵になれ明日の光を 追いかけながら生きた数だけ でかくなれ波よ吠えるな 吹雪よ泣くな夢を積み荷の いの...
  • がまん坂

    がまん坂

    俺がやらなきゃ 誰がやる廻り道だぜ 風が吹く傷つきながらも 後振り向かず男なりゃこそ 辛くても今に花咲く アーヨイショがまん坂辛い涙が 枯れたなら嬉しい涙が 涌いてくるなぐさめ はげまし くじける心叱りながらも この胸に抱いて日暮れの アーヨイショがまん坂雨を降らした 雲が飛ぶ花を散らした 風がゆく破れて流れりゃ 男の...
  • 北の大地

    北の大地

    はるかなる 北の空木霊(こだま)も叫ぶ エゾ松林母の大地に 根を下ろし雪を吸い みぞれを背負いこの人生を アア……ア… 噛みしめる鈴蘭よ ハマナスよ出逢いの時を 信じて耐えた愛がそのまゝ 花となるその姿 その凛々(りり)しさが縛られた春の アア……ア… 扉を開けるギラギラと 燃えながら夕陽はうたう 大地の歌を汗と涙を ...
  • 終着駅は始発駅

    終着駅は始発駅

    背なかを合わせて あばよと言えばおまえの震えが 伝わるぜ死ぬほど惚れて 死ぬほど泣いた涙は頬を ぬらしても終着駅は 始発駅ふたりのしあわせ 祈っているよふり向かないで 行ってくれひとつの愛は 終ったけれど明日がおまえを 待っている終着駅は 始発駅函館止まりの 連絡船は青森行きの 船になる希望を捨てるな 生きてるかぎりど...
  • 一本気

    一本気

    まつりと聞いたら 血が騒ぐみこし担げば 光る汗咲いてる花より 散る桜涙もろくて 男前日本の男は誠 純情 一本気 一本気黙ってぐいのみ 手酌酒歌をうたえば 演歌節どしゃぶり雨でも 傘いらぬ濡れた笑顔が 男前日本の男は誠 純情 一本気 一本気惚れたらとことん 惚れぬいて決して女を 泣かせないふところ寒いが 見栄を張る嫌と言...
  • 酒語

    酒語

    こぼれ夜露か 涙のつぶかしみる今夜の 路地酒場振りむけば… いろんな途(みち)があったけど…これでいいんだ これでいいひとり生まれて ひとり行く長い道だよなァ 人生って奴は…さぞや憎かろ あの日のしうち惚れていりゃこそ 棄てて来た恋文を… 燃やせば蒼いうすけむり…泣くな未練な 影ぼうしひとつふたつと 数えてみたら心残り...
  • 柵

    勝手気ままに 育った麦は雪の重さに 耐え切れぬ足で踏むのも 根っこを張って強くなれとの 親ごころ辛い世間の 柵は男を鍛える 愛の鞭きれい事だけ 並べていたら惚れた女も 背を向ける愚痴を呑み込み 流した汗に他人(ひと)は黙って 従(つ)いて来る切れぬ浮世の 柵は男を育てる 向かい風楽に通れる 世の中ならば辞書に苦労の 文...
  • 十文字

    十文字

    おとこ行く道 十文字意地の七坂 越えて行く若さ遮二無二(しゃにむに) 目を凝(こ)らす通りすがりの 華を見てこころ和(なご)んで 振りかえる炎(も)える拳の その中に忍の一字を 握りしめうねる時代の 厳しさに少し無心を よそおって我慢ばかりは 遣(や)るせない僅(わず)かばかりの 情けでもこの身(み)命(いのち)を な...
  • 人生おけさ

    人生おけさ

    人は誰かに 生かされて今日という日を 生きている泥んこぬかるみ いいじゃないかなおさら闘志が 胸に湧く負けはしないさ… 人生おけさ他人(ひと)に頼るな 楽するななまじ近道 遠まわり苦労の先には 倖せが我慢をするのも 人の道急(せ)くなあせるな… 人生おけさ受けた情けも 恩もある切って切れない 緑もある明日という日に ま...
  • 人生山河

    人生山河

    思い通りに 通れたら苦労する奴 誰もない今日の一歩の つまずきは明日の三歩で 取り戻すたとえ他人(ひと)より 遅れても焦ることない 焦ることない 人生山河他人(ひと)の情けが なかったら生きて行けない 一日もそれをどこかで 忘れたら渡る世間が 通せんぼ敵は心の 中にあるいつか気付いた いつか気付いた 人生山河いくら辛く...
  • その名はこゆき

    その名はこゆき

    北の女を くどくなら秋の終りに するがいいひとり冬越す つらさがわかる女ごころに 日暮れが早い雨の雨の札幌 とまり木同志こぼれたお酒で書いたその名はこゆき北の女の さみしさは酔えばなおさら しみるのさ少しうすめの 水割りでいいそっと気づかう 小さな笑顔夜の夜の札幌 すすきの灯りネオンも切なく揺れるその名はこゆき北の女の...
  • 鼓動

    鼓動

    時の旅人よ 風の呼び声を聞けうつろわざる魂で この時代(いま)を生きろ嘆くなかれ 恐れるなかれ一筋の祈り やがて大河となり海原を渡り 大地に光放つだろう生まれしものに 生命(いのち)が在り生きてるものに “鼓動”がある...