• 前田俊明

    「1551」
  • 雨の港町

    雨の港町

    雨に煙った オランダ坂で夢にはぐれて 思案橋ひとりじゃつらい 旅だから追いかけてきてよ ねぇあなたここは長崎 霧笛の港町赤いレンガの 倉庫の陰にあなたいそうな 秋しぐれ港にあかい 灯がともりゃ寂しくないのか かもめ鳥ここは函館 心はエトランゼ長い桟橋 メリケン波止場いっそこのまま 外国へ意地をはるのが 女ならやさしく抱...
  • ひとり冬景色

    ひとり冬景色

    涙さえ 千切れ飛ぶこの胸が さむい鉛色した 窓を見上げればわたしも一羽の はぐれ鳥雪が降る 泣きながらひとり 冬枯れの海何処までゆけば 逢えるの あなた汽車は 走る「さよなら」の なぐり書き手の中で にじむ葉書一枚 たったそれだけで終わりにするのね 憎いひと雪が降る さみしさに白い 吐息がつもる別れるなんて 死ぬのと同...
  • 長良川艶歌

    長良川艶歌

    水にきらめく かがり火は誰に想いを 燃やすやらあなた あなたやさしい 旅の人逢うたひと夜の 情けを乗せてこころまかせの 鵜飼い舟好きと言われた 嬉しさに酔うて私は 燃えたのよあなた あなたすがって みたい人肌を寄せても 明日は別れ窓に夜明けの 風が泣く添えぬさだめと 知りながらいまは他人じゃ ない二人あなた あなた私を...
  • 矢車草 ~やぐるまそう~

    矢車草 ~やぐるまそう~

    あなたに出逢って あなたを愛し人恋う涙を 知りました矢ぐるまの… 矢ぐるまの…花はむらさき 秘めた恋ひとり手鏡 覗(のぞ)いては次の逢瀬を 待ちわびる女のせつなさ 逢いたさ辛(つら)さ一途に燃えてる 胸の炎(ひ)よ矢ぐるまの… 矢ぐるまの…花に託した この想いいのち重ねて 結ばれた夢をみました 今日もまたこんなに小さな...
  • 酒よ

    酒よ

    涙には幾つもの 想い出がある心にも幾つかの 傷もあるひとり酒 手酌酒演歌を聞きながらホロリ酒 そんな夜もたまにゃ なァいいさあの頃を振り返りゃ 夢積む船で荒波に向ってた 二人して男酒 手酌酒演歌を聞きながらなァ酒よ お前にはわかるか なァ酒よ飲みたいよ浴(あ)びるほど 眠りつくまで男には明日(あす)がある わかるだろう...
  • この指と~まれ!

    この指と~まれ!

    暗い過去を 置き去って寒い故郷(ふるさと) 捨てましたバスと鉄道 乗り継いで都会へ逃げて 三年過ぎて馴染めぬ街は 今でもひとり寂しい人は いませんかいたならこの指 この指と~まれ!過去は過去と 割り切って生きてきました 都会です慣れぬ暮しの その中で頼れる人も 出来ては消えていつも目覚めは 小雨の朝で寂しい人は いませ...
  • 冬子のブルース

    冬子のブルース

    酔えばはしゃいで たおれこみ俺のこの手で 寝るやつだった冬子 冬子 冬子…おまえと暮らした 町に来て吹雪あいての 酒をのむ霧笛が泣かせる 冬子のブルースホテルみたいな 船にのり旅がしたいと 夢ものがたり冬子 冬子 冬子…おんなの幸せ つかんだかいまも根なしの 浮草か歌えば沁みるぜ 冬子のブルース錆(さ)びた酒場の 洋燈...
  • さいはて噺し

    さいはて噺し

    海からひゅるひゅる 舞いこむ吹雪のれんをくぐれば 客ひとり柳葉魚(ししゃも)を炙(あぶ)る 煙(けむ)のなか俺を見つめる その女(ひと)は派手な服着て 髪を染めなれたしぐさで 酒をつぐ…訳あり女が 赤提灯に情(なさけ)の一文字 書きいれてだれかを待って いるというそんな噂が 気にかかり途中下車した 港町俺のあいつじゃ ...
  • 札幌哀愁

    札幌哀愁

    逢うたびあの娘は どこか儚(はかな)くて雪虫みたいな やつだった男ごころに 温もりをひとつ残して 消えたまま札幌哀愁今年も白い 冬がまたくるよちいさな溜息 思いつめたよにわたしのことなら 忘れてとほそい肩さき すり寄せてふたり路地裏 ネオン酒札幌哀愁あのとき俺が 抱いてやれたなら粉雪まいちる 夜のすすきのであの日の面影...
  • うきよ川

    うきよ川

    生きるつらさも 嬉しさも乗せて流れる 浮き世川過ぎたむかしを 振り向けばにじむ涙の ひとしずくどこへ流れる この私夢を下さい もう一度たとえどんなに 愛しても恋は儚(はかな)い 水の泡そっと流した 面影をなぜにお酒が 連れて来る窓にそぼ降る こぬか雨愛を下さい もう一度すがる瀬もない 胸もない口紅(べに)も淋しい おん...
  • 女ごころ

    女ごころ

    ともる灯りの あたたかさ浮かぶ面影 裏通り男意気地(いきじ)を ぶらさげながら肩で別れを 告げた人あきらめきれない 今もまだ女ごころは ひとすじに赤い傘さし 雨の夜駅に迎えに 来てくれたあんな人でも 時々だけど優しかったわ 誰よりも思い出たどれば また泣ける女ごころは いつまでも苦労承知で ついて行く決めていたのよ 最...
  • 郡上八幡おんな町

    郡上八幡おんな町

    母を泣かせて 故郷すてるそれが出来ない 恋ごころ郡上踊りで 知り染めた旅のお方を どうすりゃいいの三日三晩を 寄り添って郡上なみだで 袖しぼる明日の夢より あなたの胸に今を賭けたい 罪ぶかさ橋の下には 吉田川好きな気持ちは もう戻せない迷う思いを 叱るよに渡りなさいと 雨になる古い町です 噂が走る今日をかぎりの 腕枕祭...
  • 祭り女の渡り鳥

    祭り女の渡り鳥

    ねじり鉢巻 三社の神輿担ぎゆさぶる いなせぶり祭りに惚れたか 男に惚れたあんた追いかけ 渡り鳥今日は浅草 あしたはどこやら燃えて火となれ 祭りの女なんだ神田で 姿も形(なり)も見れば見るほど いい男やけども覚悟の 度胸と意地で粋に咲きたい 咲かせたいお神酒(みき)あおって 襷(たすき)をしめる色は小粋な 江戸こむらさき...
  • どうせこの世は成り行きまかせ

    どうせこの世は成り行きまかせ

    惚れて別れて また惚れて酒がとりもつ 縁もある遠い神世の 昔から男と女の 世界じゃないかくよくよしないで 気楽にゆこうどうせこの世は 成り行きまかせ他人(ひと)の情が 身にしみる都はなれた 夢酒場渡る世間にゃ 鬼もいる心に決めたら 男じゃないか泣き言云わずに 元気でゆこうどうせこの世は 成り行きまかせ夫婦盃(めおとさか...
  • 雪割橋

    雪割橋

    紅葉色づく 山の端をあなたと一緒に 見つめてた雪割橋に 秘めた恋ついてくならば この人とあの時私は 決めました赤いアーチの 鉄の橋忘れはしません 口づけを雪割橋の 思い出はいつでも胸に だいてます私をむかえに 来てほしい雪が割れても 二人には心をつないだ 橋がある雪割橋に かけた夢ふたりの愛よ いつまでも守ってください...
  • 酒場

    酒場

    どこにもあるような 酒場の片隅でひとりで呑む酒に あいつが眼に浮かぶ薄いしあわせを 酔ってまぎらわす女の背中の さみしさが泣いて 泣いてた…忘れないさだめに流されて さすらう港町酒場の止り木で あいつを見つけたよ抱いた夢ならば 捨てちゃいけないとはげまし合ったね ふたりして好きだ 好きだよ…思い出す俺でもよかったら 一...
  • 昭和のメルヘン

    昭和のメルヘン

    エプロン姿のお袋が七輪煽ぎ秋刀魚(さんま)を焼いたオレは育った そいつを喰って露地を横切り立ち上る煙のモクモク あの臭いほっこり気分さ 昭和のメルヘン就職列車に乗った日に誓った夢は叶ったろうか胸のつかえはレイテの海でおとこ命と 青春を咲かさず散らして逝ったひと涙を誘うな 昭和のメルヘンお前と指したな へぼ将棋覚えている...
  • 浪花の父子酒

    浪花の父子酒

    お前と呑むのは久しぶり肴は何でも いゝけれど色気がないのが淋しいね呆けたらあかんで 親父さんそろそろ枯れて エエ歳やのにやもめは辛い 辛いものなのか想い出すなァー。目元涼しくぽっちゃり顔で、着物がよう似合う女やったなァ。お袋さんのことかいな。確かに親父のいう通りや、めったに逢えへん人やったなァ。男で生まれて 来たからに...
  • 秋芳洞愛歌

    秋芳洞愛歌

    永遠(とわ)の国から 湧(わ)いてくる愛の清水に 吸いよせられて影がより添う 秋芳洞よああ この水の 流れのように澄んだ私を あなたにあげたい秋のリンドウ 春の蝶鳥の声さえ 静かに避けて何を語るか 黄金柱(こがねばしら)よああ 底知れぬ 闇路(やみじ)に光る石はそのまま この世の姿涙 涙を くぐり抜けいつかいい日が く...
  • 紀淡海峡

    紀淡海峡

    燃える夕焼け 二つの命溶けて流れて 沈む紀ノ川恋の名残りを さまよう胸に面影までも 消えてゆく紀淡海峡(きたんかいきょう) 鳴くように遠く汽笛が 汽笛が響く生きてゆけます 一人でだって涙かくせば 潤(うる)む紀ノ川あなたの嘘は 哀しいけれど女の恋は 命です重荷なんかに なるよりは私ひとりで ひとりで生きるこんな哀しい ...