• 前田俊明

    「1551」
  • おんな望郷歌

    おんな望郷歌

    声も 声も ちぎれて凍る十三(とさ)の湊(みなと)は 雪また雪ん中親にはぐれて 幾冬越えた破れ三味線 流れ旅よされ…よされ 撥(ばち)が哭く風に追われて アンア… おんなの望郷歌夢を 夢を 探してみても行く手遮(さえぎ)る 地吹雪雪あらし痛む指先 かじかむ心息を吹きかけ 春を待つよされ…よされ 空が哭く思い届けよ アン...
  • 北放浪

    北放浪

    旅は男を 無口にさせるいつか景色も 雪海岸へあてもないまま 行き着く先はどこの町やら 港やら吹雪隠れの 波止場に立てば波に今でも さらわれそうさはぐれカモメよ お前にだけはさらしたくなる 傷口をこんなやさぐれ ささくれだって酒に泣くもの 人恋しさに呼んでくれるな いとしい女(ひと)よ明日はどこやら いずこやら...
  • 散らず花

    散らず花

    やさしい男に 女は惚れてそのくせ訳ある ひとに泣くいいのいいのよ あなたとならばつらい運命(さだめ)に 泣こうとも咲いて儚い 散らず花女の柔肌 桜に染めてからだが火となる 雪の宿紅を引く手に 思いを込めて息をひそめる 月見窓あなた恋しい 散らず花ひと冬ふた冬 しのんで耐えて深山に紅増す 寒椿悔いはしません あなたとなら...
  • なきむし酒

    なきむし酒

    あなたが居なくちゃ 死んじゃうと追いかけてすがりつく 恋でしたおんななんて 水中花流した涙に 濡れて咲くあんなろくでなし 捨ててやったのお猪口一杯 強がって また泣くのあなたじゃなければ 抱かれても吐息よりため息が あふれますおんななんて 水中花未練の紅さが 燃えのこるもっと尽くしたら そばに居れたの?お猪口一杯 悔や...
  • 乱れ月

    乱れ月

    するりほどいた この帯は灯り落とせば 天の川どこに どこに流れて ゆきますか男と女の 帆かけ舟しゅら しゅしゅしゅ 修羅 朱朱朱雲が からみつく 乱れ月瞳とじれば 居るあなた闇におぼれて 死にたいの恋の 恋の未練を 消すように自分をいじめて 生きるだけしゅら しゅしゅしゅ 修羅 朱朱朱酔って 酔わされて 乱れ酒欠けてゆ...
  • 他人傘

    他人傘

    雨に濡れると 抱き寄せたやさしいあなたも 明日(あした)はいない身を退くことが 愛ならばここで背中を 見送るわつらいけど… つらいけど…追ってゆけない 他人傘罪なこの恋 続けたらいつかはふたりが 傷つくだけよあなたはそうよ あの女(ひと)とどうか暮して 倖せに悔やんでも… 悔やんでも…これが運命(さだめ)の 他人傘指で...
  • 螢火の恋

    螢火の恋

    忍ぶ恋ほど こころは炎(も)える三日(みっか)逢えなきゃ なおさらにおんな おんな 螢火 夜の川いのち重ねて 身も世も捨てて堕ちてゆきます 恋の闇この手この胸 口唇(くちびる)さえもひとり占めです 今日だけはおんな おんな 螢火 あぶな川うなじくすぐる あなたの吐息窓の上には おぼろ月帰したくない 別れの宿で涙かくして...
  • 紺屋高尾

    紺屋高尾

    花魁道中で ございます花の吉原 花魁道中(おいらんどうちゅう)ひょいと一目で 高尾に惚れた廓(くるわ)あそびは 高嶺(たかね)の花と知らぬは久蔵(きゅうぞう) 恋病(こいやま)いお医者さまでも 草津の湯でも恋の病は なおしゃせぬ一夜(ひとよ)添い寝で 語ってみたいそれにゃ十両の 金がいる捨て身三年 働きずくめ思いこがれ...
  • 三十年の歌語り

    三十年の歌語り

    楽屋暖簾の表と裏で 書かれた文字に色がある行(ゆ)くな 行(ゆ)くなと止めながら 背中の影を置いて出る後れ毛抑えた襟足さえも 歌の涙を誘いだす語りつくせぬ歌があり 辿りつけない芸もある抑えきれない儚さは 舞台の華と舞にする舞台照明(あかり)に背中を向けて 板に浮かんだ影を踏み泣くな 泣くなと言い聞かせ 歌の幸せ語り出す...
  • 白兎海岸

    白兎海岸

    風が織りなす 砂模様赤く燃えてる 日本海バスを乗り継ぎ 出雲路へやすらぎ求めて 夢探し…愛に愛に愛に 疲れて一人心ひとすじ 白兎海岸沖の漁火 儚くてこの身焦がした 夏の宵(よい)咲いて寄り添う ハマナスも散りゆく運命(さだめ)と 知りながら恋に恋に恋に 魅せられ二人遠いあの日の 白兎海岸雪に震えて 泣いている恋を失くし...
  • 礼文水道

    礼文水道

    花の浮き島 最果て航路漁船(ふね)が走れば 鴎(ゴメ)が追うあなた想えば 募る恋しさ 須古頓(すことん)岬こころ結んだ 連絡船をひとり見つめる 礼文水道風に耐え抜く 薄雪草はやがて綺麗な 花咲かす波の彼方で 霧に浮き立つ 利尻(りしり)の島よいつかあなたに 逢えるでしょうか…祈るおんなの 礼文水道遠い異国の 島影霞み沖...
  • 荒川線

    荒川線

    線路の向こうに 陽炎ゆれて猫が踏切 渡ります荒川線の 電車を見ればあの日の恋が よみがえる想い出・寄り道 鬼子母神(きしぼじん)あなたは私を 忘れましたか時には想って くれますか別れて三年 経ちました…桜の季節や 紅葉の季節泣いて笑って 喧嘩した面影橋の あのマンションもお洒落(しゃれ)なビルに なりましたあなたに今日...
  • 歌の神さま!!

    歌の神さま!!

    幼いころから 爺っちゃの膝で叩き込まれた この歌ごころ昭和クサイと 嗤(わら)わば嗤え涙 七彩(なないろ) 演歌だよ歌の神さまお手を拝借! 演歌だよ!祭みたいな 出逢いもあれば地獄みたいな 別れもあった惚れて尽くして 縋(すが)って転(こ)けてそれも人生 演歌だね歌の神さまお手を拝借! 演歌だよ!義理も人情も 廃(すた...
  • 春の夢

    春の夢

    重い荷物で 坂道登る汗と涙を みちづれにくじけちゃ くじけちゃいけない負けてはいけない明日を信じて 春の夢を見る遠く別れて 逢えない人に逢いに行きたい 行かれないどうして どうしていますか幸せでしょうか心に希望(のぞみ)の 春の夢を見る夢も消えそな 冷たい風に吹かれさまよう 夜の街迷わず 迷わず進もうひとすじ進もう明日...
  • ひとり鍋

    ひとり鍋

    木枯しひゅるひゅる 泣いてますお鍋がフツフツ 煮えてますおひとりさまの お鍋ですこころが寒く なる夜はなぜかお鍋に するのです好きでした あなたのことは何もかもちょっと淋しい横顔と あったかかった想い出とあれから何度も 見ましたよあなたの隣りに 居る夢をしあわせいつも 夢ン中今夜はどこに いるかしらそっとたずねる あな...
  • 古いタイプの女です

    古いタイプの女です

    みんながやめろと 言ったけどあなたと一緒になれましたなんのとりえもありません古いタイプの女ですそれでも愛してくれるならついてゆきます あなたの夢にふたりで向き合う ちゃぶ台で湯呑みはいつでも右側に茶碗左に置くような古いタイプの女ですわたしでよければ いつまでも置いてください あなたのそばにかなしいことなら 分けあってう...
  • 望み川

    望み川

    つらい世間の 荒波もお前いたから 乗り切れたお酒に酔っては 本音をもらしわたしをほろりと させるひと小さな借家(しゃくや)が ふりだしで昭和を来ました 望み川決めてよかった このひとに尽くしたいのよ 支えたい他人(ひと)にはわからぬ あんたの値打わかっていますよ わたしには笑いも涙も 分けあって添わせてください ひとす...
  • 雪の花哀歌

    雪の花哀歌

    春というのに 牡丹雪はらはらはらはらふたりの 肩に舞う惚れたというのが 真実(ほんと)ならなんでひとりに させるのよ掴(つか)むそばから 溶けてゆくおんな…儚(はかな)い 雪の花指の冷たさ 手のひらでやさしくやさしく温(ぬく)めて くれたひとあの日の想い出 倖せはみんな夢です 何もかも未練ばかりが 降り積もるおんな…切...
  • 京都 ふたたび

    京都 ふたたび

    ひとつ ひとつと 噂集めてたずねて来ました 河原町逢えて良かった 良かった逢えてこらえた涙が こぼれます京都ふたたび 巡り逢い心寄り添う 高瀬川いつもあなたに 甘え過ぎてた失くしていました 思いやり私ばかです ばかです私許してください 愚かさを京都ふたたび 巡り逢い沁みる鐘の音 東山もしもあなたに 誰かいるなら逢わずに...
  • 京都 別れ雨

    京都 別れ雨

    別れに涙 見せへんわ笑顔で送ると 決めていた傷つくことが 怖くってばかです私 強がりばかり…本気で愛した 人やから怨みはしません あんたのことは京都 八坂の 石畳小雨に消え行く 後ろ影忘れてなんか あげへんわあんたを毎日 思い出すはにかむ笑顔 広い肩面影そっと 心にしまう…幸せ私に くれた人後悔しません あんたのことは...