• 前田俊明

    「1551」
  • 京都二年坂

    京都二年坂

    しょせん女は 裏方さんや男はんとは 器が違うあなた叱って おくれやす女 細うで 店のれんうちにゃ重たい京都 つれづれ 二年坂バカな女の 詮(せん)ない愚痴と胸にしまって 両手を合わす秋を信じぬ 蝉しぐれ暮れてゆく空 見上げれば時の流れに京都 しみじみ 立ち尽くす一度失くして 身につくものよそうよ其処(そこ)から 見つけ...
  • 片瀬舟

    片瀬舟

    はぐれ季節に 雪ひとひらが冬を凌んで 蝶になる幸せひとりじゃ さがせないどこであなたは 誰を待つ春はどこ… どこにある…みれん温(ぬく)める 片瀬舟明日に流れる 浮世の川に涙おとせば 波が泣く情けの岸辺に 棹させばきっとあなたに 会えますか春なのに… 咲かぬ恋…灯りください 片瀬舟こころ置き去り 運命(さだめ)にたえて...
  • 水仙情話

    水仙情話

    同じ歩幅で 歩いたはずがいつかはぐれた あなたから当てのないまま ひとり来た水仙岬泣いて明かした 女の目には海の夕陽が なお沁みるひとつ違えば 次から次へ積み木崩しね しあわせは愛のもろさを 知らされた水仙岬もっと尽くせば 続いた二人先に立つのは 愚痴ばかり胸の未練火 消さないかぎりきっと遅れる ひとり立ち花も叱るか ...
  • 風雪花伝

    風雪花伝

    人がゆく道の裏に 花は咲く…昔そんなふうに おそわったもんです時代おくれだろうと世の中が捨ててしまった ものにこそ大事なものが ありはしないでしょうか奈落へ落ちた 不器用者(もん)がいつか咲かせる 桜花誠を洗い…誠を尽くす…それが男の 合言葉お噂は聞いて おりましたそちらこそ まっすぐなお人だ男の道の 風雪(かぜ)を背...
  • 冬のひまわり

    冬のひまわり

    夏の光に咲く花よりも季節はずれの花が 好きそう言って あなたに笑われたあれは 遠い日愛だけで 生きてゆけるなんて思っちゃ いないけど愛のない明日なんて 欲しくないから風に吹かれて 春を待つわたしは 冬の 冬の ひまわり雪の夜道を歩きながらすこし汚れた雪が 好きそう言って あなたに笑われたあれは 遠い日夢だけで 生きてゆ...
  • ふるさと帰行

    ふるさと帰行

    ひとりぼっちの 寂しさもいまはようやく 馴れました故郷出るとき 抱いて来た夢にむかって また一歩明日の行方が 見えぬ日は希望が心の 道しるべ春は桜 夏は蛍秋は芒 冬は小雪帰りたいけど まだ帰れない遠い列車の 笛に泣<他人の情けの あたたかさひとり暮しで 知りました弱音吐いたら 鞭になり足をとられりゃ 杖になる目には見え...
  • 浪花恋唄

    浪花恋唄

    あなたがこの世の 主役になれりゃ私は目立たぬ 黒衣(くろこ)でいいの尽くして見せます その夢を叶える為なら 命も捨てる浪花おんなは 大阪湾の海にも負けない海にも負けない… 深なさけ男の器は 心のひろさあなたを見ていて しみじみ思う我が身が火の粉を 浴びようと他人の不幸を 見捨てぬあなたいつか浪花の 大空仰ぐ通天閣より通...
  • むらさき日記

    むらさき日記

    ときめく夢の 日捲(めく)りは春がこぼれて 秋になる十二単(ひとえ)の 片袖しぼり恋に身を灼(や)き 澪標(みおつくし)女の性(さが)の 切なさは… 涙でひらく 紫の花紅(べに)ひく指の 先までも想いあふれて 待つ夜毎(よごと)月のしずくに 面影つなぎ恋に身を灼(や)き 澪標(みおつくし)まぎらす筈(はず)の 琴の音(...
  • 風やまず

    風やまず

    岩手山から のぞめば遥か南部盛岡 おれの郷(さと)裸ひとつで この世に生まれ夢に向かえば 苦労が荷物決めた道でも 迷うけど行けばわかるさ その先は馬鹿をする時ゃ 死ぬ気でやって悔いを残さず 歩きたい丸くなるほど 揉まれた命意地を捨てずに ここまできたが惚れていながら つらくする女房(おまえ)ひとりが 気にかかる街をうる...
  • 柵

    勝手気ままに 育った麦は雪の重さに 耐え切れぬ足で踏むのも 根っこを張って強くなれとの 親ごころ辛い世間の 柵は男を鍛える 愛の鞭きれい事だけ 並べていたら惚れた女も 背を向ける愚痴を呑み込み 流した汗に他人(ひと)は黙って 従(つ)いて来る切れぬ浮世の 柵は男を育てる 向かい風楽に通れる 世の中ならば辞書に苦労の 文...
  • 利尻水道

    利尻水道

    便りがいつしか 絶えたのは恋を始めた せいですか必ず帰るの 約束はその場限りの 嘘ですか支えなくして あなたどうして生きれば いいのでしょうか吹雪いて今日も 船はない利尻水道 日本海離れて暮せば 駄目なほど愛ははかない ものですか一緒に生きてく 幸せは私ひとりの 夢ですか憎い仕打ちを あなた恨めずいるのは 未練でしょう...
  • 女の花は散らさない

    女の花は散らさない

    月の雫(しずく)を てのひらに夢をひといろ 薄化粧この道はるか 歩いて行けば出逢える気がする いいことに梅はこぼれて 桜は散って椿は落ちても 女の花は死ぬまで散らない 散らさない…いつでも満開 花ざかり合せ鏡で ほつれ毛を指で梳(と)かして 紅をひくこころの中も お洒落でなけりゃ女は生きてく かいがない風がこぼれて 枯...
  • 灯籠流し

    灯籠流し

    波にきらめく 送り火が揺れてさみしい 夏がゆくめぐり逢わせの 不幸に泣いて水に流した わたしの恋よめぐるめぐる 季節はめぐる行く人送る人 想いをのせてめぐるめぐる 悲しみはめぐるあなたをいまでも 愛します髪を束ねた 襟あしをあなたきれいと 腕の中一夜(ひとよ)かぎりで あきらめきれる人じゃないのに 抱かれたかっためぐる...
  • ひとりしずか

    ひとりしずか

    湖は 青い香炉よたちのぼる 霧のなかからあなたの思いが こぼれて匂うそんな気がして 手にとればひとりしずかの 白い花白樺の 幹にもたれて草笛を 吹いてくれたねあなたのしぐさを 恋とも知らず遠く別れた あのときもここに咲いてた 想い花すき通る 水に透かせば今でこそ 見える昔も元には戻せず 指輪の跡も消えて淋しく 首を振る...
  • 奥入瀬川

    奥入瀬川

    出直すつもりの 旅発ちなのになんで未練が 袖を引くあなた忘れの みちのくは川の瀬音が 道しるべ奥入瀬川は 三乱(さみだれ)を越せば阿修羅(あしゅら)の越せば阿修羅の 波が立つどうして許した 苦しむだけの添えぬ恋だと 知りながら愛を重ねた 想い出に負けて塩瀬(しおぜ)の 帯が泣く奥入瀬川は 白糸の滝があなたの 滝があなた...
  • お立ち唄

    お立ち唄

    箪笥長持 宝船いのち華やぐ 金屏風涙こらえて にっこり笑う母の仕草が 目に痛いごめんねお母さん わたし嫁ぎます長持唄は 私のお立ち唄昆布かちぐり のし鮑心づくしの 縁起物母が歩いた おんなの道と同じ目線で 歩きたいありがとうお母さん わたし嫁ぎます長持唄は 私のお立ち唄情け七坂 越えるたび人は大きく なるという母の祈り...
  • 茜さす君よ

    茜さす君よ

    茜さす 君よ恋ごころ ほのかまだ逢えぬ その瞳月が照らすだろうめぐりあい わかれあい旅は続いてゆく生まれ来て 愛を知るだれも皆 空の下逢える日は いつか探してる だれかまだ触れぬ その指を赤い糸がつなぐめぐりあい わかれあい旅は続いてゆく戻れない 運命(さだめ)にも涙より ほほえみをめぐりあい わかれあい旅は続いてゆく...
  • あはは

    あはは

    「お前は独りで 生きられる彼女を守って やりたいんだよ」そんな言い訳 言いながらあなたは部屋を 出て行った行っちゃった 行っちゃったあはは あはは 行っちゃった泣くだけ泣いたら 笑うだけ弱音はけない いじっぱり鏡に向かって 百面相あの日の話しの 続きをするのいつか帰って 来るようでおかえりなさい 言えそうで馬鹿だよね ...
  • こころの海峡

    こころの海峡

    声を殺して 哭く海鳥よおまえもひとり 私もひとり拗ねてはぐれた わけじゃない夜の暗さが 恐かったあなた恋しい 港宿灯りを下さい おんなの夢をこころの海峡浅い眠りに 寝返り打てば海鳴りさえも 泣くなと叱る涙添い寝の ひとり宿窓を開ければ 日本海揺れる波間の 島灯り優しさ下さい あの日のようにこころの海峡凍えそうです 私の...
  • 高山情話

    高山情話

    萩の花咲く 山里にこぼれ散りゆく 恋の花咲いてひらいて 散ってゆく愛を誓った あの宿も今は思い出 寺町通り吐息せつない 高山情話未練ごころに 躓いてひとり佇む 赤い橋あなた忘れの 旅なのに何で心が 恋しがる遠いあなたの 面影揺れる揺れて儚い 高山情話日昏れ小径の 飛騨の里いつかはぐれて ひとり旅愛の終りを 告げるよに霙...