• 前田俊明

    「1551」
  • 片恋岬

    片恋岬

    ため息 ひとつ またひとつ霙 北風 睫毛が凍るあんたの胸で 素直に泣いた遠いあの日の ぬくもりを抱いて 抱いて 抱いて抱いて 抱いて 抱いてみつめる…沖を行く船 片恋岬さすらう 果てに 行きついた流れ水藻に 小さな陽ざしそそいでくれた 男の強さ生きてゆく気に させたのに夢は 夢は 夢は夢は 夢は 夢は 三日で…波が引い...
  • 北どまり

    北どまり

    向こうは凍てつく オホーツク赤いランプが 海沿いに揺れて遠去かる 揺れて遠去かるさいはて列車あなたの迎えを 待つくせにわざと強がり 意地を張る女ひとりの 北どまり男にゃよくある あやまちを許せなかった あの時は一人泣きに来た 一人泣きに来た別れも告げず馴れては来たけど 夜明けまで沖で流氷 哭く音に眠れないのよ 冬岬ほど...
  • 兄貴

    兄貴

    あんな男は もういないだから兄貴と 俺は呼んだのさ他人の痛みが よくわかる熱い涙も 持っていた兄貴 兄貴思い出してる 男酒惚れた女を 泣かすなといつか兄貴は 俺を叱ったよ尽くすお前の 顔見ればそんなお言葉が 身にしみる兄貴 兄貴風がつめたい 夜の町情け知らずの 巷でも夢を兄貴は 俺にくれたのさ瞼とじれば 聞こえるよ強く...
  • なぁ…お前

    なぁ…お前

    お前がいたから ここまで来れた運命の星に 生まれて育ち俺の宝に なった女房苦労ばなしが つれあいと言えば二人の 言えば二人の瞳がうるむやさしい心に 出逢って惚れた貴方の肩に つかまりながらまわり道でも かまわない貴方まかせの 幸せについて行きます ついて行きますどこまでも涙を連れ添う 人生航路お前の杖に ならせておくれ...
  • 北旅愁

    北旅愁

    北の岬の 日昏れは早く沖にチラチラ 灯りがゆれるあれは漁火 イカ釣り船かおんなごころの 恋の炎(ひ)かあなた忘れの 旅だから飲めぬお酒を 少しだけあなた飲んでも いいですかおんなひとり おんなひとり夢も凍える 北旅愁風が身を切る 岬の町はあなた生まれた 故郷ですねひとり訪ねる 私の胸は鉛色した 冬の海潮の香が 沁(し)...
  • 君恋酒

    君恋酒

    君恋酒を 飲む夜は胸がせつない心が…心が痛い好きで別れた 女ゆえに遠くなるほど 逢いたくて…愛し…愛し…愛し君の名今宵また呼ぶ君恋酒に ほろほろと酔って爪弾くみれんの…みれんのギター恋のさだめか はかなきは花のいのちか 短きは…夢の…夢の…夢の無情がそぞろ身にしむ君恋酒よ 火の酒よ夢で逢うのもこの世の…この世の罪か紅き...
  • 霧笛坂

    霧笛坂

    襟を立てても しんしんと風が素肌に 忍び寄る待って 待って 行かないで心乱して 立ち尽くすあなた愛しい あなた愛しい 霧笛坂せめてひと言 欲しかったきっと帰ると あなたから燃えて 燃えて 尽きるなら惜しくなかった 命まで涙ちぎれる 涙ちぎれる 霧笛さか闇に隠れて 船がなく愚図る心を かり立てる抱いて 抱いて そばにきて...
  • 人生情け舟

    人生情け舟

    渡る世間の 冷たさつらさこぼす涙の しょっぱさにがさなんのかんのと ノの字がふたつ人という字で 支えあう揺れてゆらゆら ねえあなた漕いでゆきましょ 人生情け舟おんなごころに リボンをかけて惚れたあなたに まるごとあげる紅はさしても 心は美人ふたり水棹に 手を重ね風にひゅるひゅる ねえあなた今日も吹かれて 人生舫(もや)...
  • あばれ船

    あばれ船

    時化がかじったおんぼろ船でヨー度胸ひとつの漁に出るあんた無事で戻るように バッと御神酒をふりまいてさあさお立ちだあばれ船昨夜あたしを抱いてた腕でヨー網を引くのか今頃はあんた呼んでほてる乳房のせめてぬくもり届けたい風も寒かろあばれ船惚れて惚れぬく荒波そだちヨー涙みせたら叱られるあんた迎え走る岬沖じゃ大漁の旗をふる今日は祭...
  • 和泉式部~鬼の舞

    和泉式部~鬼の舞

    黒髪の乱れもしらづ うち伏せばまづかきやりし 人ぞ恋しき人はアテルイ 安部王様か身丈五尺に 緋縅からめ判官殿が 夢に見た静やおだまき 白拍子剣 剣悲しい 鬼の舞故郷は日高見 和泉の里で西は栗駒 仙人峠 越えていったか 和泉の式部見えぬ都に 旅ぶ鳥は運命 運命悲しい 鬼の舞花は白梅 夢極楽寺渡てなんぼの 珊瑚橋五七の五の...
  • そんな街、北上

    そんな街、北上

    逢えば別れの 相去町を過去て忍べば 聖塚東風に誘われ 鳴く葦切までも愛し諏訪町 本通りそんな北上 リボン橋あたりふれ合い出逢いの 粋な街人の噂と 思ってみたが何処か気になる 青柳町通りすがりの 他人でさえもなにが未練で 振り返るそんな北上 広瀬川あたり見返りネオンの 似合う街花の盛りを 知らずに燃えた誓ったあの夜の 展...
  • 一度でいいから

    一度でいいから

    おまえと呼ばれた うれしさに熱い涙を かみしめる一度でいいから やさしい胸に胸にあまえて みたいのよ逢えてよかった よかったわあなた しっかりしっかり抱いててよ悲しい過去なら おれもあるいまのおまえが 好きという傷つきながらも それでもあなたあなたさがして 来たわたし逢えてよかった よかったわあなた しっかりしっかり抱...
  • 二度目の女房

    二度目の女房

    あなたが愛した その人のかわりになんか なれないけれど私でいいなら もう一度幸せそっと 見つけましょう二度目の女房と 言われてもつくしてみたい あなたなら男はひとりで いてはだめいい事あるわ これからだって私でいいなら また夢を二人できっと かなえましょう幸せ女房に なりました涙をすてて ついてゆく薄桃色した 着物きて...
  • ふたり花

    ふたり花

    あなたのために 生れて来たのかくれて泣いても 笑顔でいたい辛いこの世の 雨や風愛の陽ざしに 包まれながらあなたの胸の 小枝でそっと手を取り合うのよ ふたり花疲れて帰る あなたをいつも私の心で 慰めたいのかわす眼と眼の 暖かさ今の暮しで 幸せなのよ明日の夢が 花咲く町を探して生きたい ふたり花あなたの愛に 甘えてばかりた...
  • 夕月夜

    夕月夜

    明日を探して みようじゃないか微笑うその目が 苦労を飛ばすいつもしあわせ 遠まわりこれまで縁の ない女肩を抱かれて 涙ぐむひと春遅れの 夕月夜まるでここだけ しあわせぶりに浮かれ舞台の ひと幕みたいこれが固めの 盃よ一口つけて 咳込んで手もと乱して こぼれ酒嫌われそうです 夕月夜いずれその内 帰ろじゃないかどこか生まれ...
  • 母の餞(はなむけ)

    母の餞(はなむけ)

    写真帖開けば 幼い笑顔祝い重ねた 七五三蝶よ花よと 苦労も忘れ育てた娘の 門出に贈る過ぎた月日は 親子の宝 母の餞 母の餞 想い出ひとついつかお前も 子供を育てわかる日がくる 親ごころいいのいいのよ 元気で居れば望みはしないよ 孝行なんてふたり仲よく 暮らしてほしい母の餞 母の餞 変わらぬ思情三十路四十路と 連れ添い生...
  • こぼれ月

    こぼれ月

    紅を拭きとる グラスの淵に写る寂しい こぼれ月冬の恋でも いいのです一夜だけでも 生きられますと花は深山の 寒椿明日のことなど 言わないで 言わないで女以上ね 男の人は こころ遣いも 優しさも抱いてください 思いきり女ごころを 花くれないにりんと咲かせて 下さいねせめてひととき その胸で その胸で灯り落とせば そこから...
  • 黄昏

    黄昏

    あなたを愛して いればこそ生きてゆけます 茨の道もむらさき色した 黄昏に包まれながら ふたりして明日を夢見た あの頃の勿忘草が 今日も咲いてますあなたの心の 苦しみを分けて下さい 私にだけはむらさき色した 黄昏にかくれて泣いた いとしさは恋した女の 証明です胸の想いを 風よ伝えてよあなたのやさしさ 暖かさ今も切なく 覚...
  • 陽は昇る

    陽は昇る

    なんの苦労もないままに生きてゆけたら いいでしょに恨んじゃいけない 人の世を心の憂さを 雨風をあんた陽は昇る あんた陽は昇る愛する人がいるから 陽は昇る春は桜の花の下冬は小雪の軒の下季節がどんなに 移ろうと心の振子は 変わらないあんた陽は昇る あんた陽は昇る愛する人がいるから 陽は昇るこの身をまかせて ひとすじに心の熱...
  • 愛の行方

    愛の行方

    逢うほどに 君はかわいい やつだったふたりで過ごした 鎌倉の海ひき潮さびしい 砂のうえにもつれた足跡 ああ寄り添ってあれから秋へと 流れた季節愛の行方を愛の行方を波は知らない何処へでも つれて行ってと 困らせたほろりと一と粒 わがまま涙灯かげにふたつの 赤いグラス酔わせたこの俺 ああ悪いのか葉山の酒場は 想いでばかり愛...