• 前田俊明

    「1551」
  • 夏ひとり

    夏ひとり

    一生日陰の恋でもいいと心に決めて抱かれたけれどあなたの全部欲しがった罪な愚かな 女ですあなたとの三年は喜びでそしてそして ああ悲しみでさややさやさや 竹の道もう涙流さない…つもりです世間に背いた恋ゆえですか儚く散った 小さな命木漏れ陽ゆれる 石段に足を止めれば 滲む汗あなたとの三年は夢をみてそしてそして ああ諦めてゆら...
  • 幻夢のえれじい

    幻夢のえれじい

    好きだから 櫻の下であなた道行 笑顔のままに指をからめて 心を添えて瞼閉じれば 花吹雪幻夢のえれじい 束の間でいい春がきたよな にごりえの恋紅筆で 唇なぞりあなた想って 蛍になった愛し恋しと 命をせかす水にネオンの 憂き世川幻夢のえれじい ほろ苦だから夏に供養の にごりえの酒降る雪も 人恋しさにあなたすがって 色褪せて...
  • 花しぐれ

    花しぐれ

    別れる前に もう一度抱いてほしいと 泣いた女(ひと)花しぐれ 花しぐれ古都(みやこ)も 雨だろか甘える仕草が まなざしが離れないのさ お前に逢いたい漁り火ゆれる 北の宿鳥も寒かろ 冷たかろ花しぐれ 花しぐれ古都(みやこ)も 雨だろか窓打つ夜雨を しみじみと聴けばまぶたに お前が見えるよ愛しているさ 痛いほど忘れられない...
  • 人情横丁

    人情横丁

    昔気質で 極楽とんぼ涙もろくてお人好し人情横丁 裏通り持ちつ持ちれつ 袖すり合わせ縁を結んで 灯が灯る喧嘩神輿は男がかつぐばちは女の情で打つ人情横丁 夢舞台撥をさばけど色恋沙汰は後の祭りの 役ばかり世話を焼かせりゃ 四の五の云わぬ意気が売りもの 見せどころ人情横丁 泣き笑い住めば都の 合縁奇縁肩を寄せ合う 軒伝い...
  • 女もつらいよ

    女もつらいよ

    あんたに お酒を とりあげたならきっと ふぬけの 男(ひと)になる飲みなはれ 飲みなはれ浪花ちょうちん ぶらさげて苦労くの字の 夫婦(みょうと)やないか女もつらいよ ほんまにな ほんまにな…あんたに 喧嘩を やめさせたなら豆腐 みたいな 男になるやりなはれ やりなはれ通天閣を 蹴飛して惚れたホの字の 夫婦やないか女もつ...
  • 酒はほろりと…

    酒はほろりと…

    風の便りも いつか途切れてひとり見上げる ちいさな夜空時の間に間に 浮かぶあれこれ酔えば逢いたい 人がいるあなたのそばで飲みたいのあゝ今夜も酒はほろりと…国の言葉も いつか忘れてつくり笑いも 上手になった胸の隙間に 揺れるふるさと酔えば泣きたい 夜もあるあなたのそばで飲みたいのあゝ今夜も酒はぽつりと…窓の雫を 指で集め...
  • 北の海峡

    北の海峡

    別れはしない 離れない命と決めた 恋なのに涙か重い 荷物をまとめ流れて船に 乗り継げば北の海峡 冬の中この先生きる あてもなくほほ打つ雪に 泣けてくる女の夢を こわしたあなた立てないくらい 愛してた海よ私を 叱ってよ旅路の果てに かすむ灯は見えない明日か 未練火か振り向くたびに あなたは遠くふたたび逢える ことも無い北...
  • 呼子鳥

    呼子鳥

    雨にうたれる花は淋しくてわたしの心に似ていますひとを待つのはとても悲しくて色々色々想いがよぎるねえ誰か話を聞いて 少しだけでいいからねえ 通り過ぎた昔に戻りたい谷を渡ってせつなさ運ぶわちぎれ雲の空ないて来る日来る日もあなた待つわたし思いの限りを羽根に染め夏の夕暮れ恋しさ抱きしめて急いで飛び立つ迷いの森へねえ誰か伝えて早...
  • 冬の河

    冬の河

    いちずにあなたを愛している今もずっとあれから毎日せつなく哀しい月日は流れて夢の中私はひとりで涙する雪が散る 泣くよに風が鳴る 叫んで足どりを探してる 冬の河死ぬほどあなたを思慕っている今もずっとどうして私は生きたらいいのだろう凍てつく吐息に針の嵐刃を曝して身肌を刺す雪が散る 泣くよに風が鳴る 叫んであなたさえ奪いとる冬...
  • しあわせ春秋

    しあわせ春秋

    男の値打ちは 姿じゃないわまして上辺の 飾りでもあなたの不器用な 誘いでも伝わりますとも 女なら相合傘です お寄りなさいな人には見えない 荷物もあるわ降ろしたくなる あなたなら私もひと口 いいかしら口紅拭きとる 盃は愛々酒です お飲みなさいないつかは舞台も 変わってゆくわ渡る間に 春や秋思えば人生 長い橋これから二人で...
  • 花あかり ソロバージョン

    花あかり ソロバージョン

    待たせるだけで あの日からいくつの季節が 流れたろ夜が寒いと 花冷えの肩があまえる めぐり逢い思えば長い 冬の日も色づきそだてた 夢ひとつ逢いたかったと すがりつくしだれ桜の 花あかりあふれる愛を そそぐよ空ければグラスに 充たす酒酔って怨みを こめた目が胸にせつない 花の宿吐息もからむ 襟あしに花びらふたつの こぼれ...
  • 夢見酒

    夢見酒

    あなたのお荷物にならないようにいのち旁せばしあわせでしたおんなの彩月 花ごよみ知っているのね このお酒一杯いかが…一杯いかが…今夜は 夢見酒暖簾のむこうの宵町通りきれいごとでは 渡れなかったおんなの彩月 ふりむけば見栄もあります 古傷もある一曲いかが…一曲いかが…今夜は なみだ艶歌こころに化粧はしなくていいと酔った眸を...
  • いんかん・ありがたや節

    いんかん・ありがたや節

    今日も朝から いんかんがなけりゃ一日 はじまらぬ会社づとめに ハイ いんかんお届けものです ハイ いんかんいんかん いんかん ありがたやいんかん いんかん ありがたやいんかん いんかん ☆☆ありがとう役場・市役所・県庁に会社・団体・お国までいんかんなければ はじまらぬいんかんぬきでは 生きられぬいんかん いんかん あり...
  • 花嫁の涙

    花嫁の涙

    花嫁衣装が きれいですか少しは大人に 見えますかあなたの子供で 良かったと泣いたりするのは 可笑しいですかお父さんもっと笑顔を 見せてくださいあなた譲りの 優しさが好きだと 言ってくれた私はこの人と 歩いてゆきます白いドレスが 似合いますか結婚指輪が 見えますかわがままばかりで ごめんねといまさら言うのは 可笑しいです...
  • 花氷

    花氷

    三年あまりを おまえと暮らしたねこの先ひとりで ほんとにいいのかい優しさを ありがとう 真心を ありがとうふたりの時間を 閉じ込めて花氷 花氷冷たさに 耐えて咲くおまえは花氷帰ってくるなら いつでも待ってるよ今夜も 引きずる おまえの面影よ離したく なかった行かせたく なかった白紙に 戻せぬ 人生の花氷 花氷想い出よ ...
  • あばれ駒

    あばれ駒

    俺がやらなきゃ 誰がやる意地があっての 男じゃないかきっとつかむぞ将棋のこころ月もおぼろな 浪花の空に夢がはばたく 夢がはばたく男 三吉 あばれ駒破れ障子の 裏長屋今日も小春の 明るい笑顔着物(べべ)の一つも 買えない俺に愚痴もこぼさず つくしてくれる詫びて今宵も 詫びて今宵も男 三吉 みだれ酒勝つも負けるも 時の運今...
  • しずく海峡

    しずく海峡

    又逢うために さよならはたった四文字の あゝため息よ時計の針を 遅らせてあなたの出船の じゃまをするかもめ翔んでよ あの空遠くしずく海峡へ二合の酒で だらくして倒した徳利 あゝ振ってみる女はいちど 死ぬ程の恋してそれから 遊ぶのね夢を並べる 海よりひろくしずく海峡へひとりで唄う 漣(さざなみ)のこころの唄は あゝわがな...
  • おんな笠

    おんな笠

    あいつのことなら きっぱりきりり忘れましたと 気取っちゃみてもおんな心の 真中あたりぽろりポロポロ 雨模様ぽろりポロポロ 雨模様みれん街道 アア アア ア~ン おんな笠お一人ですかと 聞くのはやめてそれを忘れに 来た旅なのに知らぬ他国の とまり木酒にはらりハラハラ ぬれ睫毛はらりハラハラ ぬれ睫毛憂き世街道 アア アア...
  • 京おんな・みなこ

    京おんな・みなこ

    悲しいことは あらしまへんうちはもう 泣かしまへん加茂の河原の せせらぎに夢をひとつ 流します頬づえをついてはため息 夢まじり待ちくたびれても待ちこがれていた待ち暮らすことも 女の幸福と北一乗寺 下がり松おみくじは 吉どした恨む気持ちは あらしまへんうちはもう 泣かしまへん流し友禅 あでやかに恋の色に 染め上げる黒髪を...
  • 故郷へ

    故郷へ

    生まれた時から 青空なんか私にゃ 届かぬ とこだから暗い酒場を 流れて北へ涙よ あんたと 道づれにどこで死んでも 泣く人なんか海に捨ててよ この身体せめて海鳥よ 私の爪を運んでおくれ 故郷へ今度生まれりゃ 男になって私をのろうよ この世から夢を見たって ホテルの窓にゃひと夜の 灯りを ともすだけどこで生きても 暮らして...