• 前田俊明

    「1551」
  • 草枕

    草枕

    人の世の夢にはぐれて 行きくれて孤りつぐ酒 ひりひりとやつれた胸に 傷口に泣けよとばかりに しみわたる振りむけば咲かず終いの 恋いくつみれんほろほろ 盃におもかげ浮かべ のみほせばやるせぬ想いよ とめどなく歳月の流れ行くまま 流れ去る人の旅路の 儚さを身にしみじみと 抱くとき侘しや夜雨の 草枕...
  • 愛されて釧路

    愛されて釧路

    すねて すねて甘える しぐさが好きと言った 言ったあなたは 遠いひと夜風がつめたい 幣舞橋の川面におもかげ 浮かんで消えて心濡れます 霧の町愛して釧路 愛されて釧路銀の 銀の指輪を はずしたあとが女 女ごころを つらくする涙をかくした よそゆき顔にいまでもぬくもり のこっています未練さがして 港町愛して釧路 愛されて釧...
  • あんた逢いに来い

    あんた逢いに来い

    泣かずに待てと 肩を抱き始発の汽車に 乗った人一ヶ月二ヶ月(ひとつきふたつき) 待たされ二年…あんたを怨んで しまいそう夢で抱かれりゃ なおさらつらいあんた今すぐ 逢いに来い信じていても 雨の夜は胸を横切る すきま風一ヶ月二ヶ月 待たされ二年…誰かにすがって しまいそう他の心に なびかぬうちにあんた私を 抱きに来い心細...
  • 雪舞い橋

    雪舞い橋

    あなたの背中に 顔臥せて朝までいてよと 泣き濡れた雪舞いの… 雪舞いの橋のたもとのかくれ宿今日は酔えない 手酌の酒に恋のはかなさ かみしめる悲しい運命の 待ちぶせを知らずにほどいた花の帯雪舞いの… 雪舞いの夜がいまさら憎らしい消すに消せない あなたの匂い乳房にうなじに また燃える女に生まれた 倖せをはじめて教えてくれた...
  • 雨の夜

    雨の夜

    あなたひとりに かけた恋惚れておぼれた おんなの涙つらい逢いたい 死ぬほどもえたのよ今も残るぬくもり心淋しい 雨の夜傘にかくれた おもいでひとつもえてはかない おんなの命髪のしんまで あなたに抱かれたのせめて夢で逢いたい心せつない 雨の夜雨に泣いてる 私のこころとどいていますか あなたの胸にせめて死ぬまで だましてほし...
  • しのび宿

    しのび宿

    一緒になれない ひとだけどほれてしまった せつなさよ浮雲みたいな 恋ひとつおぼれて悲しい いで湯町夜にかくれて 逢いにゆくしのび宿あなたのこころに すむひとを今は忘れて くれますかふたりで咲いても 罪の花無情の夜風に 散る涙声をころして 泣きじゃくるしのび宿生まれてはじめて 知りました好きでそえない 悲しさをこの世のは...
  • 一輪ざし

    一輪ざし

    やせたおまえの 肩先に身の上話が 書いてある何も聞かずに 私を抱いて一輪ざしの 花のように身を切るような 浮世の風もあなたがいれば 暖かいふたり暮らせる この町が私にしてみりゃ 都です酒場小路を 花道にして手さぐりながら 夢をみるこの手に余る しあわせなんか欲しくはないわ この先も橋のたもとの 友禅流し一輪ざしの はな...
  • 恋文

    恋文

    電話をしても 前とは違う別れの言葉が 怖いから手紙を書きます冬路を旅する あゝ 頼りなさ文字も心も 乱れがちみちのく 雪舞う 夜汽車……何度も家(うち)の そばまで行って勇気がないから 遠見だけ手紙を書きます噂もきいてる あゝ 噂です情けないほど 好きだから返事はいらない あなた……宛(あて)なく駅を 降りてくように消...
  • 夢流れ

    夢流れ

    遠く近く さんざめく 海鳴りに息をひそめ だんまりで いる港北の町に ざらにある 名前じゃないし旅先で 耳にする おまえの噂恋に 恋に 恋に 恋に生きてるものだと 思っていたが顔がかぶさる 不しあわせどうして独りで いるんだよあゝ夢流れ春も知らず あの日から 哀しげに出船ばかり 見送って きたおまえ雪の多い 町なのに ...
  • 昭和生まれの風来坊

    昭和生まれの風来坊

    昭和に生まれた 風来坊各駅停車が 丁度いいちびちび呑めば カタカタ揺れる秋だなぁ 秋だなぁ 秋だなぁまたおまえを 泣かせちまったね男の心にゃ 虫がいる旅虫 酒虫 ひとり虫とろとろ酔えば シンシン積もる冬だなぁ 冬だなぁ 冬だなぁもう俺など 嫌いになったか汚れた川にも 水すまし四の五の言わなきゃ 生きられるとくとく 注げ...
  • 素晴らしき人生

    素晴らしき人生

    心の 痛みを 癒(いや)す帰らざる 想い出 たちよ挫折や 孤独を なめて今もなお 青春を 生きている君の 代わりは 誰も できないいつも ふたりで 夢を みてきた喜こびも 哀しみも 乗り越えてルルルル ルルルル ルルル素晴らしい 人生と 言えるように季節は 慈愛に 満ちて天(そら)高く 実りの 秋よふたつに 分け合う ...
  • 花あかり ~ワルツ~ ソロバージョン

    花あかり ~ワルツ~ ソロバージョン

    待たせるだけで あの日からいくつの季節が 流れたろ夜が寒いと 花冷えの肩が甘える めぐり逢い思えば長い 冬の日も色づきそだてた 夢ひとつ逢いたかったと すがりつくしだれ桜の 花あかりあふれる愛を そそぐよに空ければグラスに 充たす酒酔って怨みを こめた目が胸にせつない 花の宿吐息もからむ 襟あしに花びらふたつの こぼれ...
  • 室生寺

    室生寺

    どうしていいのかわからぬままにすがりに来ましたみ仏に教えてください室生さま女のかなしみ曳きずって朱塗りの橋を渡ります愛してしまえば燃えつくさずにおかない火の蝶恋の蝶いとしさ憎さの繚乱舞い夏にはみ寺のシャクナゲも一期は夢と咲いてます妻子を捨てさせ愛する人もなくして五重の塔の下救けてくだせさい室生さま深山のしぐれは罪ぶかい...
  • 心の糸

    心の糸

    そして陽が昇り 朝の幕があく 昨日までの悲しみ 洗い流すように覚えてて あなた 私がここにいることを忘れないで あなた 歩いた道のほとり心の糸を たどりながら過ぎし日を 重ねてみたい心の糸を 手さぐりながら夢の続き 捜していたい時を巻き戻すことが 出来たなら涙なんかみせずに 生きてこれたけれどありふれた日々を 送れるこ...
  • いのち川

    いのち川

    涙が赤く 染まるほど苦労をするよと いうあなた流れて行きます ついて行きます死ぬまで一緒よ はなれはしないわあなたはあなたは 私のいのち川心を燃やし 寄せ合えば冷たい世間に たえられる私のとりえは 何もないけどこの愛ひとすじ つくしてみせますあなたはあなたは 私のいのち川あなたを知らぬ その前の哀しい痛みは 忘れます愛...
  • 花あかり

    花あかり

    待たせるだけで あの日からいくつの季節が 流れたろ夜が寒いと花冷えの肩があまえるめぐり逢い思えば長い 冬の日も色づきそだてた 夢ひとつ逢いたかったとすがりつくしだれ桜の花あかりあふれる愛を そそぐよ空ければグラスに 充たす酒酔って怨みをこめた目が胸にせつない花の宿吐息もからむ 襟あしに花びらふたつの こぼれ紅恋に生きた...
  • 酔恋花

    酔恋花

    どうにもならない淋しさをまぎらすつもりの酒なのに酔えば女の 愚痴になり酔わなきゃ未練が尾をひいて北の港の こぼれ灯にかさねる面影 酔恋花逢わなきゃよかった あの人に言わなきゃよかった つよがりを酔ったふりして 外に出りゃ霙がいつしか 雪模様消しておくれよ なにもかも咲いても咲けない 酔恋花恋して涙を 知るたびに女はきれ...
  • 面影本線

    面影本線

    幸せそうだね 横顔がきれいに見えるよ 昔よりお前も一人で いるような気がしてはるばる 逢いに来た夕焼け北国 アカシアの並木はあの日の ままだけど夢は帰らぬ 遠い影白魚みたいな 左手のお前の指輪が 目に痛いご免なさいねと 泣いている小さな背中に 詫びながら想い出たどれば この胸に哀しい二人の 恋の跡風に揺れてる 日暮れ道...
  • 五月雨ワルツ

    五月雨ワルツ

    花の咲かない 人生に花を咲かせて くれた人このまま堕ちても 構わない宿の軒先 てるてる坊主さすらう二人のああ 五月雨ワルツ紙を拡げて 足の爪切ってあげてる 北の宿このまま運命に 身をまかす窓のアジサイ 淋しく咲いて心の傷あとああ 五月雨ワルツそっぽ向いてる 倖せもいつか振り向く 時もあるこのまま死んでも 構わない駅のホ...
  • 宇治川哀歌

    宇治川哀歌

    遣り水さらさら蛍が飛び交う闇を走ってあなたに会いに行くこれが最後ですあなたに抱かれたら何処かへわたしは消えてゆきます風が冷たくなりましたもうすぐ秋ですね話しかけてもきっとあなたは何も変わらない白い単衣の帯紐しめて明朝はたちます 霧の中辛いわこの恋ふたりのひとを愛するなんてわたしには出来ません心魅かれても辿れぬ愛(ゆめ)...