• 三木たかし

    「751」
  • 天使ぼろぼろ

    春一番が吹いた朝あの娘は行ってしまったよちぎれた紙が舞うようにふわりと街を出て行ったさびしいパブの片隅にぽっかり穴があいているあの娘が膝を抱きながらほほえみ投げたあの場所が天使ぼろぼろ泣きくずれさよならさえもなかったよアアア……アアア……百円玉の占いであの娘の行方たずねたよ表になれば又来るし裏ならこれで終りだよにぎあう...
  • 野菊の墓

    野菊の墓をたずねればさやさや風の音ばかり昔を教える人もなく流れに沈む渡し舟私はひとり 花を摘み心を重ねるものがたり悲しいでしょうね つらいでしょう私も死んだら花になる野菊の道をさまよえばとんぼの影が先を行く別れを惜しんだ渡し場も今では忍ぶものもないくちづけだけの初恋に私はポロリと涙する悲しいでしょうね つらいでしょう私...
  • 不幸な秋

    ガラスで指先を傷つけてしまった何かしら不安な予感親しいあのひとがこの世を去ったのはわたしがおろおろしていた頃だわ誰もが楽しくしてるのに悲しい便りがとどけられ夏は……突然 不幸な季節に変った私はハーモニカさびしく吹いている台風が来そうな日暮れ大事なお話を残しておきながらどうしてあのひと死んだりしたのかはげしくちぎれる夏の...
  • ほたる坂

    何もいわず あなたは背中向けて行きますほたる坂に初雪はらり舞います冬のはじめは心細くなります私は泣いてもいいのですか思い出せば みじかい夏と秋の間の夢のようなひととき消えて行きます冬のたそがれ 影も泣いてゆれます私の初恋 終りですかほたる坂を みかんが後を追っていきます指をはなれ 心を運ぶようです冬の夕べは凍りそうにな...
  • 津軽海峡・冬景色

    津軽海峡・冬景色

    上野発の夜行列車 おりた時から青森駅は 雪の中北へ帰る人の群れは 誰も無口で海鳴りだけを きいている私もひとり 連絡船に乗りこごえそうな鴎見つめ 泣いていましたああ 津軽海峡・冬景色ごらんあれが竜飛岬 北のはずれと見知らぬ人が 指をさす息でくもる窓のガラス ふいてみたけどはるかにかすみ 見えるだけさよならあなた 私は帰...
  • 時の流れに身をまかせ

    時の流れに身をまかせ

    もしも あなたと逢えずにいたらわたしは何を してたでしょうか平凡だけど 誰かを愛し普通の暮し してたでしょうか時の流れに 身をまかせあなたの色に 染められ一度の人生それさえ 捨てることもかまわないだから お願い そばに置いてねいまは あなたしか 愛せないもしも あなたに嫌われたなら明日(あした)という日 失してしまうわ...
  • 夜桜お七

    夜桜お七

    赤い鼻緒がぷつりと切れた すげてくれる手ありゃしない置いてけ堀をけとばして 駆けだす指に血がにじむさくら さくら いつまで待っても来ぬひとと死んだひととは おなじことさくら さくら はな吹雪 燃えて燃やした肌より白い花浴びてわたしは 夜桜お七さくら さくら 弥生の空に さくら さくら はな吹雪口紅をつけてティッシュをく...
  • 津軽海峡・冬景色

    津軽海峡・冬景色

    上野発の夜行列車 おりた時から青森駅は 雪の中北へ帰る人の群れは 誰も無口で海鳴りだけを きいている私もひとり 連絡船に乗りこごえそうな鴎見つめ 泣いていましたああ 津軽海峡冬景色ごらんあれが竜飛(たっぴ)岬 北のはずれと見知らぬ人が 指をさす息でくもる窓のガラス ふいてみたけどはるかにかすみ 見えるだけさよならあなた...
  • 時の流れに身をまかせ

    時の流れに身をまかせ

    もしも あなたと 逢えずにいたらわたしは何を してたでしょうか平凡だけど 誰かを愛し普通の暮らし してたでしょうか時の流れに 身をまかせあなたの色に 染められ一度の人生それさえ捨てることもかまわないだから お願い そばに置いてねいまは あなたしか 愛せないもしも あなたに 嫌われたなら明日(あした)という日失くしてしま...
  • 今度生まれたら

    今度生まれたら

    さよならを言うその度に 心が泣いてたわあなたと別れたあとで 椅子に寄せたこの頬切なさと恋しさが今 涙になってこぼれ落ちるこんなにもあなたを好きな私がいるなんて…お願いよ 夢の中まではどうか逢いに来ないでねたとえ罪でも 出逢えたことを 愛しむならばお願いよ 夢の中まではどうか逢いに来ないでねいつかこのまま逢えなくなる そ...
  • 夢のあと

    夢のあと

    帰るその日を いつまでも待つと日傘をまわした 君の笑顔振り向き振り向き 別れた道よあの日の約束も 夢のあと風の便りに 今は人の妻もう二度と逢えない はるかな人二人のためにと 津軽を立った夜汽車のときめきも 夢のあとひとり城跡に たたずんでしのぶ幸せを信じた 春のあの日誰もが認めた 幼なじみのせつない恋の日も 夢のあと...
  • 坂の上のレストラン

    坂の上のレストラン

    レストランの片隅ピアノ弾く 私の目にあざやかな その姿髪を切っても 見慣れたしぐさやさしげな 人連れて楽しそうに スープ飲んでるどうぞあなた こちら見ないでこの曲が終わるまでに胸の乱れ しずめたいからレストランの片隅ピアノ弾く 私の指で不幸ばかり かぞえると思いつめた 事もあるけど目の前に あなたには可愛らしく 坊やが...
  • 忘れないわ

    忘れないわ

    忘れないわ あなたを別れたあとも 胸に生きるわもしも ふたたび 恋をしてもあなたに 似てる ひとでしょう忘れないわ I'll Never Forget You愛したひとよ 忘れないわ忘れないわ いつまでも初めての恋 心に抱くわたとえ ひとときの 喜びでも愛してくれた あなただから忘れないわ I'll Never For...
  • 空港物語

    空港物語

    雨に煙った 夜の空港傷つく心を 膝に抱えてもしもあなたが 隣にいたら悲しい旅には ならないでしょう北の夜空へ飛び発つ 最終便で明日は見知らぬ都会(まち)に 佇むけれどもあなたもう一度 わたしのそばへ涙がこんなに 止まらないからGATE(ゲート)が開き 乗客(ひと)の流れに何度も振り向き あなたを探すもしもわたしを 呼び...
  • 砂のしゃぼん玉

    砂のしゃぼん玉

    あなたの愛の深さ 疑うことも知らずに暮らした月日が今は 砂のようにこぼれるひとつの嘘を許して 心を開いていたならいつかは笑い合えて 歩いていたかもしれないこの部屋のぬくもりと あなたのその匂い想い出に鍵をかけ 残してゆくけどありがとう こんな私に……愛をありがとう子供のままでいてね 誰かを好きになってもわたしのことは何...
  • 心の瞳

    心の瞳

    心の瞳で 君を見つめれば愛すること それが どんなことだかわかりかけてきた言葉で言えない 胸の暖かさ遠まわりをしてた 人生だけど君だけが いまでは愛のすべて 時の歩みいつも そばで わかち合えるたとえ あしたが 少しずつ 見えてきてもそれは 生きてきた 足跡が あるからさいつか 若さを 失しても 心だけは決して 変わら...
  • 花の時・愛の時

    花の時・愛の時

    君が部屋を出たあと ぼくはじっと動かないあたりにただよう 君の残り香を胸に吸い込み 酔いしれる君の弾いたギターの 細い弦は切れたまま読みかけの本は 投げだされたままそんなすべてがいとしい時には花のやさしさで つつんでみたいと思う時には愛のはげしさで 泣かせてみたいと思うまた逢えるのに 今すぐに逢いたくて切なくなる海の底...
  • 乙女のワルツ

    乙女のワルツ

    好きといえばいいのにいつもいえぬままに月がのぼる小道を 泣いて帰った白く咲いてる野の花をつんで願いをかけるどうぞ 愛があなたにとどくようにと好きなひとはいつしかほかのひとをつれて遠い町へ旅立つ 何も知らずに駅のホームのはずれからそっと別れをいってそれで 愛が悲しく消えてしまった小雨降る日はせつなくてひとり涙を流しつらい...
  • 愛人

    愛人

    あなたが好きだから それでいいのよたとえ一緒に 街を 歩けなくてもこの部屋にいつも 帰ってくれたらわたしは待つ身の 女でいいの尽くして 泣きぬれて そして愛されて時がふたりを 離さぬように見つめて 寄りそって そして抱きしめてこのまま あなたの胸で暮らしたいめぐり逢い少しだけ 遅いだけなの何も言わずいてね わかっている...
  • くちなし悲歌

    くちなし悲歌

    忘れていた夢を見たのよ あなたにまだそんな 気持ちになれる自分が 嬉しくて 可愛くて夢の上に 夢を重ねたのあれは梔子の咲くころ私は子供のころの お伽話が帰ってきたと 思ったわだって人は 淋しすぎるわ 独りじゃ目がさめて あなたがいると私は それだけで 過ぎた日のいやなことを 忘れられたわ甘い梔子の匂いに私は子供のころの...