• 西條八十

    「226」
  • 蘇州夜曲

    蘇州夜曲

    君がみ胸に 抱かれて聞くは夢の船唄 鳥の歌水の蘇州の 花ちる春を惜しむか 柳がすすり泣く花をうかべて 流れる水の明日のゆくえは 知らねどもこよい映した ふたりの姿消えてくれるな いつまでも髪に飾ろか 接吻(くちづけ)しよか君が手折りし 桃の花涙ぐむよな おぼろの月に鐘が鳴ります 寒山寺...
  • 三百六十五夜

    みどりの風に おくれ毛がやさしくゆれた 恋の夜初めて逢うた あの夜の君が今は生命を 賭ける君たそがれ窓に 浮かぶのはいとしき人の 旅すがたわれゆえ歩む 道頓堀の水の夕陽が 悲しかろ鈴蘭匂う 春の夜灯火うるむ 秋の夜泣いた 三百六十五夜の愛の二人に 朝が来る...
  • 恋の曼珠沙華

    恋の曼珠沙華

    思いかなわぬ 夢ならば何故に咲いたぞ 乙女の胸にあの日から 人知れず咲いた花ああ 切なきは 女の恋の曼珠沙華君を見ぬ日の 苦しさは燃える心の 沙漠の果に誰を待つ いじらしの紅の花ああ 切なきは 女の恋の曼珠沙華思いあきらめ いく度か摘んで捨てても 又咲く花よ君故に 狂おしく泣きぬれてああ 切なきは 女の恋の曼珠沙華...
  • 若き旅情

    若き旅情

    たったひとりの姉さんが遠くへ行った淋しさにあてなく旅に出たこころああ若き日 ああ若き日涙たたえて旅をゆく海の匂いのする町でたそがれ灯る灯をみればどこかに姉の居るようなああ若き日 ああ若き日波に鴎が飛んでゆく山にゆれてる白い百合海辺の紅い桜貝おもいでばかり目についてああ若き日 ああ若き日姉を偲びて旅をゆく...
  • 我が家の風

    我が家の風

    桜あかるい 日本(ひのもと)の民と生れて 伏しおがむ大内山の ふかみどり命たのしや 大君の御為に盡す 我が家の風若い瞳を 輝かせ友は出て征く 太平洋おくれは取らぬ 俺も征く海は男の 死にどころマストは招く 我が家の風夜のラジオの 報道に泣いた可愛の 妹よ仇はきっと 俺が取るなでる黒髪 兄弟(はらから)の誓いは燃ゆる 我...
  • 比島決戦の歌

    比島決戦の歌

    決戦かがやく 亜細亜の曙(あけぼの)命惜しまぬ 若桜いま咲き競う フィリッピンいざ来いニミッツ マッカーサー出て来りゃ地獄へ 逆落とし陸には猛虎の 山下将軍海に鉄血 大川内見よ頼もしの 必殺陣いざ来いニミッツ マッカーサー出て来りゃ地獄へ 逆落とし正義の雷 世界を撼わせ特攻隊の 往くところわれら一億 共に往くいざ来いニ...
  • 決戦の大空へ

    決戦の大空へ

    決戦の空 血潮に染めて払えど屠れど 数増す敵機いざ行け若鷲 翼をつらね奪うは今ぞ 土浦魂密雲くぐり 海原見れば白波蹴立つる 敵大艦隊いざ射て逃がすな 必中魚雷とどろく轟音 揚るよ火柱敵鷲来る 皇土を目ざし憎さも憎き かの星条旗いざ衝け肉弾 火を吐け機銃堕ちゆく敵機は 嵐の落葉か想い出たのし 白帆の故郷鍛えしこの技 攻撃...
  • トンコ節

    トンコ節

    あなたのくれた 帯どめの達磨の模様が チョイト気にかかるさんざ遊んで ころがしてあとでアッサリ つぶす気かネー トンコ トンコおもいざしなら そのままで洗った杯きゃ ちょいと水くさいもっとまごころ あるならばつけておくれよ 口紅をネー トンコトンコちらと三葉で ほうれん草ぜひに嫁菜と ちょいとくどかれてわたしゃ畑の 芋...
  • 乙女の戦士

    乙女の戦士

    青い空には 希望の雲があそぶ蝶々にゃ 小ちゃな夢がそうして そうしてうたう乙女の 心の中にゃ誰も知らない 可愛いい秘密誰か泣いてる ミモザの花がかわいそうにと 黒髪撫でたしっかり しっかり負けちゃいけない 嵐や雨に清く生きるが 乙女の誇り拭いてあげましょ あなたの涙乙女仲よし 手に手を組んでそうとも そうとも夢見ましょ...
  • 女子挺身隊の歌(輝く黒髪)

    女子挺身隊の歌(輝く黒髪)

    なびく黒髪 きりりと結び今朝もほがらに 朝露踏んで行けば迎える 友の歌ああ愛国の 陽は燃えるわれら乙女の 挺身隊撃てど払えど 数増す敵機北も南も 無念の歯がみ勇士想えば 胸痛むああ愛国の 陽は燃えるわれら乙女の 挺身隊可愛い工具に 頬すり寄せて花の命も 姿も要らぬ早く翼が 送りたいああ愛国の 陽は燃えるわれら乙女の 挺...
  • さくら進軍

    さくら進軍

    日本ざくらの枝のびて花は亜細亜(アジア)にみだれ咲く意気で咲け 桜花揚がる凱歌の朝ぼらけ天下無敵の荒鷲の姿たのもし 花の空意気で咲け 桜花君もみ空の 航空兵明日は初陣 軍刀を月にかざせば 散るさくら意気で咲け 桜花おれも散ろうぞ 花やかに慰問袋の まごころに咲いた銃後の 花の色意気で咲け 桜花日本男子(やまとおのこ)の...
  • 荒鷲慕いて

    荒鷲慕いて

    若き乙女の あこがれは雲にはばたく 銀の翼眉うつくしき ますらおが正義に勇む 飛行帽雄々し荒鷲 乙女の夢よ十字砲火も なんのその今日も敵地へ 翔りゆく勇士が胸に 抱けるはやさしき母の 肌守り雄々し荒鷲 乙女の夢よ凱歌揚がりて 月出でぬ散りし我が戦友 いまいずこ英霊永久に 安かれと名残りを惜しむ 低飛行雄々し荒鷲 乙女の...
  • 戦場花づくし

    戦場花づくし

    赤い襟章劔さげた可愛い歩兵さんは罌粟の花ちらり見あげる立ちすがたチョイト 粋な騎兵さんは百合の花青い月夜に濡れてたつ夜の歩哨さんは月見草咲いてからまる雲の峰チョイト 若い航空兵は藤の花波にうつした晴すがたおつな水兵さんは花あやめ咲いた荒野(あれの)の鬼あざみチョイト 敵のこわがる戦車隊朝がくるくる大陸に咲いてうれしい花...
  • トンコ節

    トンコ節

    あなたのくれた 帯どめの達磨の模様が チョイト気にかかるさんざ遊んで ころがしてあとでアッサリ つぶす気かネー トンコ トンコ言えばよかった ひと言がなぜに言えない 打明けられないバカな顔して また帰る恋はくるしい 朧(おぼろ)月ネー トンコ トンコ君と別れて ただひとり帰る夜みちで 煙草をすえば伊達のライターも 音ば...
  • 悲しき竹笛

    悲しき竹笛

    ひとり都の たそがれに想い哀しく 笛を吹くああ細くはかなき 竹笛なれどこめし願いを 君知るやそぞろ歩きの たわむれに購いてわかちし 想い出よああ花の笑顔も やさしく浮かびわれを泣かせる 歌のふし雲は流れて 還れども鳥は塒に 急げどもああ誰にあかさん 唇燃ゆる今宵男の 純情を...
  • さすらいのギター

    さすらいのギター

    たかだ一人の 女のために寝てはまぼろし 起きてはうつつああ みだれる絃よ 我胸よながれながれる 身の果てはどうせ野ざらし 雨ざらし月の色さえ 淋しい秋をギター抱えて 街から街へああ 流れる雲よ 初恋よ旅の燕も 帰るのに恋し故郷にゃ いつ帰る声も姿も うらぶれ果ててうたう街角 酒場のあたりああ 見果てぬ夢よ 若い日よなぜ...
  • 伊豆の七島

    伊豆の七島

    伊豆の七島 春雨濡らすけさの出船の 帆を濡らす泣いてね 泣いて見送る 御神火の煙りほのぼの 旅の船ハ どうしょか 椿の花が散る粋な旅衆に なぞかけられて娘心の とつおいつ忍ぶね 忍ぶ月夜の 相模灘波のうわさが 恥ずかしいハ どうしょか 椿の花が散る下田通いか 八丈行きか更けて汽笛が 身にしみる五十ね 五十三里は風便りハ...
  • 芸者ブルース

    芸者ブルース

    踊りましょうよ 抱かれて抱けばひろいこの世も 二人だけじっと握った 手と手のサイン知っているのも アー 二人だけ泣いていたのか わたしとともに壁のやつれた 影法師活けた牡丹の 花びら散って君に逢えない アー 日がつづく恋のブルース あなたと踊る夢もたのしい 春の宵浮名立て立て 立て立て浮名締めたこの手が アー 離さりょ...
  • こんな私じゃなかったに

    こんな私じゃなかったに

    ひろい世界に ただひとりなぜにあなたが こう可愛い君の寝顔に 頬あてて女ごころの 忍び泣きこんな私じゃ なかったにひとり寝る夜の 夢でさえ君と逢う日の ことばかり熱い両手で 抱きしめる紅の小夜着が 恥ずかしいこんな私じゃなかったにやっと別れて 小半丁ゆけばあふれる この涙逢瀬かぞえる 指さきもぬれてやつれて 春が逝くこ...
  • だから今夜は酔わせてネ

    だから今夜は酔わせてネ

    逢ったばかりで しみじみとなぜか情が 身に沁みる兄さんのよな 気がするのあなたがやさしい からなのよそうよ だから今夜は酔わせてネ想い出したか ないけれど想い出させる お酒なの純な昔に 泣けてくるあなたがつぐから わるいのよそうよ だから今夜は酔わせてネ逢うと逢わぬは ときの縁今日は仲よく 飲んでても明日は逢えるか 逢...