• 前田俊明

    「1551」
  • みちのく風酒場

    みちのく風酒場

    山背(やませ)がはしる 海鳴りほえる窓がきしんで ちらつく小雪旅の男が 熱燗ならべここで二人で 飲み明かそうと冗談めかして 目で笑うみちのく港の 風酒場雑音入りの ラジオがながす昔きいてた 哀愁列車旅の男の 酒のむ仕草まるであの人 もどったようで声さえはなやぎ 注ぐお酒みちのく港の 風酒場女が流れて 十年ちょっと喋るこ...
  • ひとり大阪

    ひとり大阪

    頬を優しく 濡らすのは雨も吐息の こぬか雨添えぬあなたと 何故あきらめる信じなさいな 自分のその目ひとり大阪 道頓堀の…灯が叱る世間隠れに 生きる身の想いかなわず 待とうともそれも承知の 海山千里恋の姿は 人それぞれとそっと励ます 道頓堀の…灯に泣ける雨が上がれば 月も出るあなた私の 道しるべ水の流れの 行くその先は晴...
  • 夫婦花あかり

    夫婦花あかり

    ひょんなことから ひとの縁あとの人生 決まるのね長い一生 あなたとならば笑顔取柄の 女になれるついてゆきますついてゆきます 夫婦花あかりいいのうわべは 不器用であなた根っこは そこにある派手に世渡り するひとよりも好きよ静かに 酒飲むひとが灯すふたりの灯すふたりの 夫婦花あかりまわり道して 今わかる遅い春ほど 見える春...
  • 渋谷川

    渋谷川

    並木橋から 渋谷まで歩けばすぐの 道だけどちょっと一本 裏通りあなたとわたしの 川がある人目につかぬ 川だよね誰もが知らぬ 恋ですね夜を… 夜を… 夜を流れるあぁふたりの ふたりの渋谷川みかん色した 街あかりいつもの店が 見えてくるちょうど一年 前ですねふたりの出会いは この店ね誰かにふられ 泣いてたね昔のことは もう...
  • 夢でも愛して

    夢でも愛して

    キャンドルライトの ちいさな炎みつめあってる あなたとふたりお前が好きさ 愛しているよあなたが好きよ 愛しているわ壁で揺れてる ふたつの影がそっと重なる そっと重なる 夢でも愛して「遅くなったね… 送って行こうか?」「いじわる!もう少し一緒にいたい…」「しょうがない奴だなぁ…」小雨に濡れてる 青山通りテールランプが 流...
  • この愛に生きて

    この愛に生きて

    あまりあなたが 軽すぎて押せば泣けます 車椅子使ってください この肩を杖になります この足が憶えていますか あのぬくもりをどうして切れましょうどうして切れましょう この絆つらい涙は 見せません見れば悲しみ 誘うからさだめの嵐が 吹こうともきっと幸せ 守りますぬくもり分けあい 今日から明日へいばらの道でもいばらの道でも ...
  • じょんがらよされ節

    じょんがらよされ節

    アイヤ アァー 三味線弾けば凍る指先 血がにじむ唸(うな)る地吹雪 半端じゃないが負けてなるかと 撥(ばち)が舞う津軽じょんがら よされ節アイヤ アァー 太棹(ふとざお)抱けば情け知らずの 雪つぶて撥で叩くな 心で叩け叱る師匠の 声が飛ぶ津軽じょんがら よされ節アイヤ アァー 吹雪に耐えて意地が支えた 芸の道汗と涙で ...
  • 石見銀山ひとり坂

    石見銀山ひとり坂

    別れの朝に 愛されるほどかなしい恋は ありません代官屋敷に 降る雨も五百羅漢に 散る花もあなたと ふたりの 想い出ばかり石見銀山 ああ ひとり坂忘れるための お酒の味は飲むほど薄く 醒(さ)めてゆく出雲の神様 怒らせてこころ乱れた この胸はあなたが 刻(きざ)んだ ノミ跡(あと)ばかり石見銀山 ああ ひとり宿季節の花に...
  • 石見のおんな

    石見のおんな

    海に添い寝の 鳴り砂も踏まれてキュッと 鳴くのですましてや遠い あの人を想えば涙 あふれます生きてくことは せつなくて石見(いわみ) 鳴り砂 琴ヶ浜根雪溶ければ 三瓶山(さんべさん)ユキワリイチゲ 咲くばかり雪より白い この花はかなわぬ恋を 知ってます想い出だけが いとしくて石見 遥かに 日本海涙たどれば 銀の道夜風の...
  • 越後母慕情

    越後母慕情

    あなたを愛した ひとでしょう許してあげます 許します母を泣かせて 子供を生(な)してはじめて染みた 親ごころあゝ東京に…越後とおんなじ 雪が降る二階の窓から 出入りする真冬のくらしは つらかった母は日向(ひなた)で お蚕(かいこ)さんのまゆだま紡(つむ)ぎ 手をよごすあゝ十日町…トントンカラリの 機(はた)の音この子を...
  • 露地の花

    露地の花

    右に曲れば ゆき止まり真すぐ進めば くだり坂そんなふたりの 人生だけど苦労片手に 咲かせた花は路地の花です ねえあなた風邪で倒れて 泣いた日はあなたの強さで 癒(いや)されたこれが絆と いうのでしょうかだれも知らない 暮らしでいいの路地の花です わたしたち夫婦契りの 盃も交さず幾歳(いくとせ) こえたやらなみだ色した ...
  • 恋暦

    恋暦

    いろいろお世話に なりました今夜 京都に 帰りますあなたと暮らした 乃木坂あたり窓に 師走の 別れ雨ひとりで 閉じます 恋暦二年と二ヶ月 惚れぬいて酸いも 甘いも 噛みしめたあなたのほかには あなたはいない胸に 未練が 雨宿り千切って 千切れぬ 恋暦祇園の育ちが 東京の水に 馴染んだ 明け暮れはあなたに寄り添い しあわ...
  • 昭和・男道

    昭和・男道

    くやしまぎれの 冷や酒二合呑んで抑える 肚の虫意地を通して またつまずいて雨に打たれた 裏通りあきらめるなよ 悔やむなよ…呑んで 愚痴るな 男だろ死ぬの生きるの 身を切るような恋もあったさ 夢も見たつらい時には 笑って耐えろがまんくらべさ 人生はあきらめるなよ 悔やむなよ…呷る 冷や酒 また二合風に逆らい 押し戻される...
  • 深川ブルース

    深川ブルース

    粋な男の 面影が浮かんで消えてく 隅田川渡りきれない 渡れない江戸の名残の 永代橋で木遣り一節 心に響くここは仲町 恋の町 涙町揃い浴衣で 牡丹町両手を合わせる 不動さま添えぬ運命(さだめ)と 知りながら胸を焦がした 水掛祭りスカイツリーに 寂しさ揺れるここは富岡 出逢い町 別れ町寒い心に 灯をともす檜の香りの ママの...
  • 倖せの坂道

    倖せの坂道

    わたし…女のひとになるんです真綿のような 心になってすがる恋より あしたを選び普通に暮らせる 普通に暮らせる 生き方を探しましょう… 探します母と歩んだ 母と歩んだ 坂道で秋桜みたいに 静かに咲いてつらいことでも 笑顔にえくぼ綺麗な涙に 綺麗な涙に 話しかけ写しましょう… 写します母にもらった 母にもらった 手鏡にわた...
  • くちなし慕情

    くちなし慕情

    織部(おりべ)の花瓶に 梔子(くちなし)を挿せばいつか夕陽に 染まる路地...練馬、北町 三丁目こんな名もない お店でも帰るあなたの まぼろし待って今日も掛けます 麻(あさ)のれんちょっとがひと月 半年も過ぎてけりをつけなと 言うお客...いいえ無邪気な 男(ひと)なのよ誰か道草 させるだけすぐに脹(ふく)れる おとな...
  • 親友

    親友

    蛇口をひねって 水を斜めに飲み干してついでに涙も こすった夜更け…死にたいなんて 呼び出しながらつまりは酔って いつもの惚気(のろけ)…ちょっとは気づけよ 私もあいつに夢中なくらい仕方ないね 道化だね 狡(ずる)いあの女(こ)は親友だものともかく綺麗で 裏と表は昔から男の目を惹(ひ)く 仕種(しぐさ)が巧(うま)い…思...
  • 会津・城下町

    会津・城下町

    磐越線(ばんえつせん)に 揺られて着いたここは若松(わかまつ) みちのく路(じ)会津の町は 想い出ばかりどこまで行けば この恋に再び逢うこと できますかせめて教えて 城下町はもう春ですあの日と同じ お堀に映るそびえ立ちます 鶴ヶ城会津の町は ぬくもりほしくひとりで歩く 蔵の町あなたの優しい 面影に紅葉(もみじ)色づく ...
  • 江差情歌

    江差情歌

    北の海原(うなばら) 時化(しけ)てはいても夜明け波間に 飛ぶかもめ海が好きだと あんたは沖へ長い冬です 寒い肌ハァ~ 夢でも 逢いたいよハァ~ 夢でも 抱いとくれ寄り添い暮らせる 春よ来い江差追分(えさしおいわけ) 凍(しば)れる町も春が近いと 鳴くかもめ汐(しお)の匂いの 半纏(はんてん)まとい網を繕(つくろ)う ...
  • 男の忘れもの

    男の忘れもの

    俺が年(とし)だから あいつもいい年バーの片隅 それでも逢いたい…何がふたりを 切れさせた鈴なりの麗人(おんな)に 瞳(め)が眩(くら)みつづけてどじだろ どじだぜ …男の忘れもの横で寝た頃は 愛とは知らずに罪な生傷(なまきず) あいつに負(お)わせた…俺を静かに 赦(ゆる)すよりその胸の怨みを 打(ぶ)ちまけてくれた...