• 前田俊明

    「1551」
  • 麗人の歌

    麗人の歌

    夢はやぶれて 花嫁人形華美(はで)な袂が 恥かしや覚めて浮世の 窓見ればみんな泣いてる ああ人ばかり告げぬ想いを さみしくこらえ君と行く夜の 小ぬかいとしお方の 肩たたく雨がわたしで あああったなら籠に飼われた 緋総(ひぶさ)の鳥が強い女と なる朝はこころ筑紫の 波の上うかぶ白帆に ああ虹が立つ...
  • ふるさとしぐれ

    ふるさとしぐれ

    山は夕焼けサー 野道は小焼けヨー川に木の橋 下駄の音俺が生まれた あの空あたりいつも帰るよ夢で帰るよ あかね雲胸にほろりと ほろりとふるさとしぐれ俺とあの娘(こ)はサー 野菊を摘んでヨー石の地蔵さん おがんでた丸い小石の 十円玉を二つ供えて両手合わせて ねがいごとそれはないしょの ないしょのふるさとしぐれ電話しようか ...
  • 娘に贈る感謝状

    娘に贈る感謝状

    娘が嫁ぐ 晴れの日にしぐれがなぜか心を濡らし 袖に降るお下髪(さげ)の髪が 高島田育ってくれて ありがとう涙をこらえ娘に贈る感謝状瞼の裏に 今もなお走っているよ娘の赤い 三輪車畳に座り 泣きながら両手をついて あいさつを言われる前に娘に贈る感謝状故郷のおやじ おふくろも門出の孫のきれいな姿 みておくれ絆を胸に 花結びこ...
  • 熱海、そして雨の中…

    熱海、そして雨の中…

    大人同士の恋は 秘密がいいの雨も目かくしするわ ハーバーライトあなたが好きなの せつないほどに泣いたら肩を 優しく抱いて二人だけの熱海 そして雨の中黒いあなたの傘と 私の赤は目立ちすぎると言って あなたの中に港のはずれは 淋しいけれどこころは熱い このくちびるも二人だけの熱海 そして雨の中お酒飲みたい気分 渚のあたり少...
  • 雨の熱海

    雨の熱海

    雨の熱海で 待ちわびるいまかいまかと いで湯宿遅いあなたが 気がかりで着物に蛇(じゃ)の目で 駅まで来たの日暮れ 人波 うしろ影もしや車で 来てるかと思い直して 引きかえすいつも私は あわて者叱ってほしいの 可愛い奴と灯(あか)り糸川(いとがわ) なみだ色梅と桜は 熱海だと花で口説(くど)いた あなたです一度信じた 男...
  • 今想えば

    今想えば

    もう君と 会わなくなってどれくらいたつだろうか時々机の中から君からの手紙だして読むことがあるよ踏みきることが出来なかった あの頃の僕この間 昔の仲間たちと会って話したよ つまらないことさ僕達のことが話にでて君のこと幸せに暮らしていると 聞いたもう君と 会わなくなってどれくらいたつだろうか時々机の中から君からの手紙だして...
  • 女坂

    女坂

    身丈の着物の私をつれて母は黙って背負子(しょいこ)で歩く山道いつも聞かされたのは一つ覚えの夕焼け小焼け何が生きてて しあわせか母の顔では 知りかねたあの日けわしく思えた道を今あなたとなら たどってみたい行く坂 はるかな女坂私も母に似てきそう湯上り子供ら寝かせる声でやっとその日が終ったような祭りも盆も変らぬ色の絣(かすり...
  • 女のうなじ

    女のうなじ

    お酒に酔った 嘘でもいいわ最後の女と 言われたい泣きたくなるほど 好きだからお願いも一度 抱きしめて夢がふるえる 女のうなじ逢えない夜は じぶんを抱いてなみだを浮かべる いくじなし背中が寒くて 眠れずに夜風にほどいた 洗い髪あなた恋しい 女のうなじ哀しみさえも 幸せだからあなたの女で いたいのよなじんだ匂いが 欲しいか...
  • 涙めぐり

    涙めぐり

    そうよ 女は 涙で出来てるのだから 泣いても 泣いても懲りないのああ しとしと 降りしきるああ 涙が 降りしきる駄目な人だけど あなたが好きでした愛と 別れは 背中合わせねめぐりめぐって いつかは幸せにそうよ 女は 寄り道できないのいつも あしたに あしたに向かうのよああ ゆらゆら 揺らめいてああ 涙が ゆらめいて夢を...
  • 雨おんな

    雨おんな

    なぜかしら 私 雨おんな大事な時には 雨が降る不思議よね 私 雨おんなあなたと出逢った あの夜(よる)も二つの傘が 一つになって肩寄せ歩いた 段葛(だんかずら)二つの傘が 一つになって私の恋は 始まったなぜかしら 私 雨おんな出かける間際(まぎわ)に 雨が降る不思議よね 私 雨おんなあなたと別れた あの夜(よる)も一つ...
  • 七尾恋歌

    七尾恋歌

    何かひとつの 言葉でも残していって 欲しかった七尾にそっと 雪が 雪が 雪が降る聴こえるようです ひとり寒かろと田鶴浜(たつるはま)から 声がする季節(とき)が過ぎれば 過ぎるほど温もりばかり 恋しくて七尾の雪が あなた あなた あなたならこのまま埋もれて ずっと眠りたいせめて涙が 消えるまで寄せて返して また寄せる忘...
  • 会津のおんな

    会津のおんな

    みちのく生まれは 深なさけ抱かれる気持に 迷いはないわ雪の夜道を つめたい指に息を吹きかけ 迎え傘……いいの逢えたら 倖ですと駅へ小走り 会津のおんな若松あたりの 湯の郷へ人目を忍んで 遠出をしたい罪な契りと わかっていても淡く咲けない 寒椿……いいの私も さだめのままに燃えて散ります 会津のおんな風花みたいな 恋だけ...
  • 遠野炎歌

    遠野炎歌

    山が哭いたら 吹雪になってふたりの足跡 消してゆく惚れた同志の みちゆきは峠づたいに 闇の中許されぬ 恋でいい――抱いて…抱いて…抱きしめて燃えて…燃えて…燃えあがる……遠野の果ての 夢一夜蒼い焔よ 白馬になってふたりを乗せて 舞い昇れ契りかわせば この肌を染める雪さえ あたたかいみれんなど ないのですいまさら惜しむも...
  • 我慢船

    我慢船

    おやじの背なに しばられて波を枕に 子守唄おとこ度胸を 仕込まれたゴメだ船出だ 東(あずま)丸エンヤラヤーの 我慢船沖には重い 鉛雲くるぞひと荒れ うけてたつ命しらずの この海じゃ恋はよせよせ 仇になるエンヤラヤーの ドンとゆけ荒波かぶり 突き進め山背(やませ)風なら なおさらだおやじゆずりの ド根性腹におさめて 舵を...
  • 浪花裏通り

    浪花裏通り

    義理の貸し借り あればこそ渡る世間も うまくゆくほんまもんやで 味のれんここは浪花の 人情酒場俺と酒との 酔いどれ裏通り浪花おんなの やさしさを月もみていた 法善寺そうさ今でも 忘れへんネオン道頓堀(とんぼり) 人恋酒場俺とあの娘(こ)の おもいで裏通り酒はいのちの 水やから呑んで明かした あの時代やけにしみるぜ 流行...
  • 父さんのマフラー

    父さんのマフラー

    父さんの 形見のマフラーそっと首に 巻いてみる抱きしめられた 思い出と優しい笑顔が 目に浮かぶ時にはけんかも したけれど大好きでした お父さん働いて 育ててくれた夜もろくに 眠らずにお返し何も できなくてこの胸チクチク 痛みますも一度娘に なれたなら今度はしたい 親孝行父さんの 形見のマフラーそっと頬に 当ててみる慣れ...
  • なでしこの花のように

    なでしこの花のように

    なんにも苦労を 知らない他人(ひと)に女の心が わかるでしょうか夢の夢だと 笑うけどいいのあなたと 夜風に耐えて咲いてみせます この恋をなでしこの花のように… 花のように綺麗に咲いてる その花影で流した涙は 尊いものよ母の言葉が 響くよな小春日和の 夕焼け空よ…強く生きるね これからもなでしこの花のように… 花のように...
  • 慕情の宿

    慕情の宿

    瞳(ひとみ)に輝(かがや)く 千灯祭(せんとうさい)は燃(も)えて儚(はかな)い 宵待(よいま)ち灯(あか)りひとり来たのを 悔(くや)んでいるのあなたあなた恋(こい)しい 春木(はるき)の川に揺(ゆ)れる面影(おもかげ) 赤沢(あかさわ)の宿(やど)愛(いと)しさ憎(にく)さが この身(み)をせめる琴路(ことじ)、瀬...
  • も一度呼ばせてだんな様

    も一度呼ばせてだんな様

    風に巻かれた 木(こ)の葉(は)のように時の流れが 早すぎますね私の大事なだんな様 だんな様変わる季節(きせつ)の 音聞(おとき)きながら小さな秋だと あなたがはしゃぐ今も変わらず 陽(ひ)だまりの道愛(あい)が見えます 夫婦(ふたり)の愛(あい)が私の大事なだんな様 だんな様泣きたかったら 泣いてもいいと微笑(ほほえ...
  • 明日花~あしたばな~

    明日花~あしたばな~

    雨に打たれて 寄り添いながら花も咲く日を 待ちわびる逢えて良かった あなたに逢えて迷わずに 歩いてくふたり 一輪 明日花背のびしないで この身の丈に似合うしあわせ あればいい肩を並べて あなたと肩をいつの日も 離れずにいつか 一輪 明日花辛い涙も 笑顔に変えてふたり重ねた 春や秋夢を追いかけ あなたと夢をくじけずに 生...