• 木下龍太郎

    「337」
  • 明日川

    明日川

    苦いばかりの 酒なのにまして今夜は 涙割り恋が終った あの胸を逃げて流れる 水まかせ運命(さだめ)預けた 明日川いつか貴方の 心には知らぬ誰かが 住んでいた愛の支えを 無くしてはいくら背伸びを してみても先が見えない 明日川どこで道草 しようとも春は必ず やって来る夢を捨てなきゃ しあわせの岸にいつしか 流れつく女ごこ...
  • 嵯峨野巡礼

    嵯峨野巡礼

    愛し合っても 実らぬ恋のせめて最後の 想い出づくり嵯峨野巡礼……桜はらはら 祇王寺よ先へ延ばせば 延ばすほど別れはつらく なるものを庵(いおり)のひと間 あなたと借りて隠れ住みたい 三日でもいくら力を 合わせてみてもやはり勝てない宿命(さだめ)の三文字(みもじ)嵯峨野巡礼……笹がさやさや 直指庵(じきしあん)ほんの短い...
  • 花しずく

    花しずく

    ささえる愛が あればこそ生きられました 今日までは露の重さに 散り急ぐ花のいのちの 私ですこれからは これからはあなたの心で 咲かせてくださいやさしくされた 想い出が浮かんで来ます またひとつ弱い女に 人の世はなんで冷たい うしろ指別れても 別れてもあなたのその夢 叶えてくださいとどかぬ愛で 終るとも祈っています しあ...
  • 地吹雪情話

    地吹雪情話

    初めて履いた カンジキに足を取られて 道に這(は)うなんでこんなに 荒れるやら津軽 地吹雪 雪嵐(あらし)惚れたあなたの 後を追う女のこころを 通せんぼ行くなと叱る 母の手を払い除けたも 恋のため親の代わりに 頬を打つ津軽 地吹雪 雪飛礫(つぶて)負けちゃいけない 泣いたならなみだの氷柱(つらら)が 胸を刺す凍(しば)...
  • 飛行機雲

    飛行機雲

    どこに落として 来たんだろ若い時には あったけど旅の途中で 手離した夢と言う名の 忘れ物他人に拾われ ないうちに早く見付けて くれないか空に地図描く 飛行機雲よどこにどうして いるんだろ時の流れに 流されて二度と帰らぬ 青春を共に過ごした あの女はいまは不幸か 幸せか様子見て来て くれないか白い線引く 飛行機雲よどこに...
  • こよみ坂

    こよみ坂

    お前は宝と 貴方が褒めるなんで取るのよ 私の科白隣で支える その手がなけりゃ知らずに終わった しあわせは影踏みながら一緒に歩いた こよみ坂泣かせもしたなと 貴方が詫びるいいえ私が 至らぬせいよいいことばかりの 人生ならばどこかで解けた 絆糸いろいろあった想い出綴りの こよみ坂懲りずに来るかと 貴方が笑う当り前です 道連...
  • 神輿なんだよ人生は

    神輿なんだよ人生は

    人と人とは お互い様に支え合うから 生きられるひとり天下で 威張ってみても人は誰かに 担がれなけりゃ生きて行けない 一日も神輿なんだよ 人生は粋に見えても 花棒だけがけして祭りの 顔じゃない一目届かぬ 後ろで担ぎ陰で支える 男の値打ちいつか気が付く 世の中も神輿なんだよ 人生は長い一生 土砂降り雨もいい日ばかりは 続か...
  • 秋吉台

    秋吉台

    掴んだつもりが いつしか消えたあなたの愛は 蜃気楼旅に逃れた 秋吉台は見渡すかぎりの 草の海支えを失くし さまようだけの私はまるで 難破船繕えなかった 広がり過ぎて二人の恋の ほころびは尽くし足りなさ 秋吉台であなたに詫びては 忍び泣き幸せだった 想い出だけが心に浮かぶ 走馬燈一緒に捜せば 見付かる夢も捜せはしない ひ...
  • 釧路湿原

    釧路湿原

    愛の暮しも 月日が経てばどこかでボタンの 掛け違い釧路湿原……荒野をめぐる 迷い川別れたはずの あなたの胸にいつか心は 後もどり二人掛りの 幸せ積み木一人じゃ出来ない 崩れたら釧路湿原……夕陽にしぼむ エゾキスゲ女の夢と 一日花はなんでそんなに 散り急ぐ二度とあの日に 戻れぬ旅は地図なし当てなし ひとり旅釧路湿原……明...
  • 夢割酒

    夢割酒

    キープボトルの あなたの名前やせた小指で またなぞるひとり枕じゃ 寝付かれなくていつか覚えた 酒の味夢の破片(かけら)を グラスに入れて苦さ薄める 夢割酒よ私なりには 尽くしたけれど届かなかった あなたには悔いを残して 別れて来たがいまは苦労も なつかしいレモン代りに 想い出輪切りそっと浮かべる 夢割酒よひとり暮しと ...
  • なごり船

    なごり船

    お前が泣くから 呑むほど苦い今夜の酒は 涙割り元の笑顔に 戻っておくれこれきり逢えない 二人じゃないさしばし別れの なごり船お前が泣くから うるんで見える港に浮かぶ 波止場月男ごころを 信じておくれ夜毎の夢路で 通ってくるさ同じ想いの なごり船お前が泣くから 出船を告げる霧笛がまたも 貰い泣き無事を祈って 待ってておく...
  • 坂本龍馬

    坂本龍馬

    いくら手足を 縮めてみてもしょせん日本は 狭すぎる菊と葵を それぞれ担ぎ子供みたいに なぜ騒ぐ土佐のいごっそ 龍馬の目には世界が見える 桂浜壬生の狼 新撰組を避けて京では 通れない惚れた貴方の 身代わりならば死んで見せると 目が笑う同じ龍の字 名前に付いたお龍は可愛い 恋女房花と散りたい 惜しまれながらまして男の 一生...
  • 紅水仙

    紅水仙

    列車を乗り継ぐ 旅路の駅にこころ迷わす 春の花似合うと貴方に 褒められた口紅色した 紅水仙よ愛していりゃこそ 身を引く恋はなおさら荷物が 重くなる小さな指輪も 外してみれば軽さ寂しい くすり指幸せでしたと 口紅で鏡に残した 走り書き暮らした月日は 短いけれど笑顔でめくった 夢暦急げば間に合う 乗り継ぎなのにわざとひと汽...
  • 北銀河

    北銀河

    夜汽車の中で めぐり逢う別れた貴方に 久しぶりいまでも好きな 人だからどこかの駅で 途中下車さいはて本線 根室行どうする どうする祈る窓には 北銀河小さな愛の つまずきでいつしか他人に 逆もどりわがまま過ぎて お互いに気付かなかった 思いやりさいはて本線 隣り席どうする どうする二人見上げる 北銀河諦めながら 心待ち貴...
  • 母ごよみ

    母ごよみ

    母のやさしい手枕で眠りつくまで 子守唄夢で 夢で 目覚めた時はいつもさがした母の胸こころやすらぐ おもいで暦ひとりせっせと晴れ着縫う頬にひとすじ ほつれ髪とても とても 温かかった日向みたいな 母の愛知らず知らずに あふれた涙苦労話もあるだろにこぼさなかった 愚痴ひとつ嫁ぐ 嫁ぐ その日が来たら持って行きたい 母ごころ...
  • 最終霧笛

    最終霧笛

    女のいのちの 黒髪で男ごころを 繋ぎたいすがる想いの 願いごと出船の銅鑼には 届かない憎いのよ 憎いのよ・・・港はみれんの 最終霧笛預けた私の 部屋の鍵わざと貴方は 忘れてく旅の途中で 捨てるともそのまま持ってて 欲しかった憎いのよ 憎いのよ・・・港はみれんの 最終霧笛女は波止場の ゆりかもめ男気ままな 海つばめ叶う恋...
  • SANOSANOSA(さのさのさ)

    SANOSANOSA(さのさのさ)

    稽古帰りの 柳橋出会い頭の 鉢合わせいろは「に組」の粋な哥兄さん 小頭で纏持ちSANOSANOSA SANOSANOSA惚れたホの字の 流行風邪手櫛でまとめる ほつれ髪恋の大川 しぐれひと降りじれったい ええ 憎い人木遣りくずしに 爪弾きで合わす三味の音 屋形舟謎をかけても野暮な哥兄さん とんちきの石頭 SANOSAN...
  • 壬生狼の女

    壬生狼の女

    誠つらぬく 新撰組をなんで壬生(みぶ)狼(ろ)と うしろ指鬼も恐れる 貴方だけれど無事を祈って 陰願い手桶で浴びる 寒の水「貴方は新撰組局長、近藤 勇さま。剣を取れば誰にも負けない強いお方だけれどその命 どうぞ粗末になさらないでください。貴方と生きられるのなら 一生日陰の壬生狼の女でいいのです。 近藤さま…」人を斬った...
  • 漁火の宿

    漁火の宿

    わかれ盃 なみだで干して返すお前の 移り紅海に揺れてる 灯火(あかり)のように燃えて死ねたら いいと言う窓にちらちら 漁火の宿肌を初めて 交わした夜も同じ今夜の 宿枕髪の乱れを 恥らいながら梳(と)かすお前の 肩越しに燃えてあかあか 漁火の宿貸した手枕 お前は外しひとり夜明けに 旅支度わかれ化粧の 鏡の中に映る灯火(あ...
  • 北のめぐり逢い

    北のめぐり逢い

    誰より愛して いるくせに今日まで寄り道 まわり道女ごころの 裏側を読めずに別れた 分からず屋せめて せめて詫びたい あの女(ひと)に雪降り止まぬ 北のめぐり逢い一緒に行けない 弱虫を叱っていいわと 泣いていた足手まといに なることを恐れたあげくの 言い訳か頬を 頬を殴った 夜のよに雪降り止まぬ 北のめぐり逢い男のつまら...