• 木下龍太郎

    「337」
  • 津和野川

    津和野川

    馴染んだ指輪を 三日だけ外す女の くすり指一度限りの…貴方と旅に 出たのです罪を忘れて 寄り添えば影も重なる 津和野川殿町通りの 掘割はあやめ模様の 水鏡許し合っても…女の朝は まぶしくて何度 手櫛で 梳かしても映る昨夜の ほつれ髪石州瓦に 降り出した雨も泣いてる 名残り宿妻で通した…今夜で旅は 終わりです持って帰れぬ...
  • 天塩川

    天塩川

    旅の終りは 一番遠い駅を選んだ 時刻表愛の残りを 捨てに行く稚内行 宗谷本線つらい私に つき合うように窓の下には 天塩川積み木細工ね しあわせなんて支え切れない 崩れたらたとえ一度は 繋げても日が経てばまた 糸は解(ほど)ける憎めないから なおさら憎い顔を浮かべる 天塩川北のはずれの 終着駅は先へ乗り継ぐ 汽車はない旅...
  • 鳥取砂丘

    鳥取砂丘

    潮の匂いに 包まれながら砂に埋れて 眠りたい失くした後で しみじみ知ったあなたの愛の 大きさを鳥取砂丘の 道は迷い道ひとりで生きて 行けるでしょうか…。指のすき間を こぼれて落ちた砂と同(おんな)じ しあわせは愛されぐせが いつしか付いて愛することを 忘れてた鳥取砂丘の 風に尋ねたい私に罪が あるのでしょうか…。二度と...
  • 男の花道~玄碩と歌右衛門

    男の花道~玄碩と歌右衛門

    舞台は役者の 命でも捨てねばならない 時がある義理ある方の 頼みなら芝居の幕を 降ろしても行かにゃならない 男道「皆々様に この歌右衛門 一生のお願いがございます。狂言中半(なか)ばではございますが、私めが一生かけても返せない、恩ある方の死ぬか生きるかの瀬戸際でございます。私が行かねば、その方は腹を切らねばなりませぬ。...
  • 運命橋

    運命橋

    地図がないから 人生はどちら向いても 迷い道まして女の 細道はいつも手さぐり 夢さぐり浮き世の川を 越えるには渡らにゃならない 運命橋やっと掴んだ つもりでもまたも幸せ 肩すかし私なりには 尽くしたが傷を残した 憎い人川面に映る 三日月が涙で崩れる 運命橋長い雨でも この世には決して止まない 雨はない女ごころの やすら...
  • 居酒屋サンバ

    居酒屋サンバ

    どっち向いても 世の中は腹が立つこと しゃくの種明日は明日の 風よ吹け酔って今夜は 憂さ晴らし煮込み 板わさ 肉豆腐目刺し 枝豆 冷奴サンバ サンバ サンバ サンバ縄ののれんも踊ってるサンバ サンバ サンバ サンバ居酒屋サンバこんな私を 振るなんてあいつ見る目が ないわよねそのうち後悔 するように乗ってみせます 玉の輿...
  • 赤垣源蔵・徳利の別れ

    赤垣源蔵・徳利の別れ

    一升徳利を 手土産に雪降る中を 饅頭笠これが今生の 別れなら酒で敷居は 高けれど兄をたずねる 暇乞い(セリフ)義姉上さま 赤穂浪人呑んべえのこの赤垣源蔵やっと仕官が叶い、お別れに参上致しました。兄上がお留守とあらば、そこに掛った小袖を兄上と思い、別れの酒を一献傾けとうござりまする。人は一代 武士はその名を惜しめ 末代も...
  • 天野屋利兵衛

    天野屋利兵衛

    男同士の 約束ごとは髪に書かずに 腹に書くご恩ある身の 大石様の隠しことなら 頼みなら口が裂けても 漏らしゃせぬ天野屋利兵衛は 男でござるここで一言 漏らしたならば赤穂浪士の皆々様の長の苦労が 水の泡吉良の屋敷へ 討入り道具妻子に類が 及ぼとままよ知らぬ存ぜぬ 押し通す命 命捨て身の 天野屋利兵衛(セリフ)「えゝ! 去...
  • 大前田英五郎

    大前田英五郎

    馬鹿な片意地 互いに張ってなんで大事な 命を捨てる野暮な喧嘩を 度胸で分けて顔で治める 男伊達生まれ上州 生まれ上州 大前田「意地だ 義理だと角突き合わせて親から貰った大事な躰、粗末にしちゃあいけませんぜ。ここはこの大前田の顔に免じて引いちゃあくれませんか。」悪さしたのも 若気の至り付いた綽名が 火の玉小僧二度と抜かぬ...
  • 幸福予約

    幸福予約

    切れてなかった 絆の糸は思いがけない めぐり逢いやはりお前も 別れた後で捨てなかったか 鍵だけは愛の暮しを もういちど今度こそ 今度こそ二人の名前で 幸福予約冷たかったろ 世間の風はひとり歩きの 女には縫ってやるとも 時間をかけて残るこころの 傷あとは愛の続きを 始めからもう二度と もう二度と取り消し出来ない 幸福予約...
  • 沓掛道中

    沓掛道中

    擦れて痛むか 草鞋の紐が旅はつらかろ 女には世話をかけます 浮き世の縁で足手まといの 母子(おやこ)連れ夫婦もどきの 旅姿 お絹 沓掛 時次郎「渡世の義理とは言え お絹さん 私(あっし)はご亭主をこの手に掛けてしまいやした。償い切れねぇ罪ほろぼしの真似事に お内儀(かみ)さんと太郎吉坊は 沓掛の時次郎 この身に代えて一...
  • 浮夜舟

    浮夜舟

    人目忍んだ はずなのになんで邪魔する 月明かり帯をこの手が 解くまでうしろを向いてて くださいね何度 逢う瀬を 重ねても女 恥じらう 浮夜舟声を潜めて いるものを岸で鳴くのは 川千鳥堪え切れずに 乱れたら私を叱って くれますかそっと身を寄せ 強い手に胸を預ける 浮夜船帰り支度を 急がせて西に傾く 月の影紐で身体を 結び...
  • 上州子守唄

    上州子守唄

    赤城下ろしの 空っ風やくざ渡世にゃ なお沁みる罪も恨みも ない人を斬らにゃ通れぬ 上州路男 板割 浅太郎泣かぬつもりが 男泣き(セリフ)親分 叔父貴、三室の勘助は私が斬って参りやした。叔父貴殺しのその罪と忘れ形見の勘坊は私が生涯 背中に背負って参りやす。泣くんじゃあねぇ 勘坊。男が泣いちゃあ 赤城の鴉に笑われらぁ…。同...
  • 夫婦坂道

    夫婦坂道

    俺でいいかと お前に訊けば貴方だからと うなずいた狭い部屋でも 大きく見えた何もなかった 振り出しは夫婦坂道 夫婦坂道腕を引いたり 引かれたり思い通りに ならない夜は荒れて何度も 八つ当り工面上手な お前の酒に酔ってやる気が また起きた夫婦坂道 夫婦坂道共に泣いたり 笑ったり夢に賭けてる 貴方に賭けて従いてここまで 来...
  • 酒情話

    酒情話

    胸の傷など 月日が消すと誰が言ったか うそっ八酒場 とまり木 泣き雀思い切る気で 呑んでる酒が酔えば恋しい 人にする「心がわりをした人を いまでも恋しいなんて。思い切るために呑んでるはずなのにあの人のいいことばっかりを想い出させてしまう。お酒って お酒ってさあ…。」いくら私が つとめてみても直せなかった 浮気ぐせおんな...
  • 夢列車

    夢列車

    湯気の向こうに おふくろの大根刻む 音がする心の中まで 温まる味噌汁匂う いろり端あの頃のふるさとへ乗って行きたい 夢列車惚れていたのに あの娘には届かなかった 恋ごころ手紙を燃やせば 泣けるほど煙が沁みた いろり端遠い日の思い出を追って行きたい 夢列車南部鉄瓶 その中に親父の好きな 燗徳利家族で囲んだ 卓袱台は話も美...
  • 浜酒場

    浜酒場

    舵を取らせりゃ 北海一と他人(ひと)の噂は 掛値(かけね)なし貴方(あんた)必ず 戻って来てねここが母港(ぼこう)の 浜酒場船を案じて 赤提灯に今日も願いの 灯をともすお酒入れば 大法螺(おおぼら)吹くが決して言わない 嘘だけはそこに惚れ込み 許したつもり男嫌いの この肌を嫁に来いとの 約束破りゃ二度と暖簾は ぐぐらせ...
  • 出逢いを求めて~十和田湖へ~

    出逢いを求めて~十和田湖へ~

    人はどうして 北にあこがれ人はどうして 旅に出るのか流れる雲の 地図をたよりに私もまた 北を旅する愛する人との 出逢いを求めてああ 十和田湖の 湖畔の乙女にああ その人に 逢える日祈りたい人はそれぞれ 北にやすらぎ人はそれぞれ さがしつづける名もない花に 道をたずねて私もいま 北をさすらう愛する人との 出逢いを求めてあ...
  • さいはて海峡

    さいはて海峡

    旅を一緒に する気でしょうか…船の後追う 北かもめ似た者同士の 道連れならばいまは気強い 私にはなみだも凍る さいはて海峡罪は私に あるのでしょうか…愛を終わりに させたのはやすらぎ欲しがる 女の夢はきっと荷物ね 男には心で詫びる さいはて海峡遅れようとも 来るのでしょうか…女ごころの 海明けは凍えた両手を 暖炉にかざ...
  • 母しぐれ

    母しぐれ

    お腹痛めた 愛し子を憎くて手放す 親はない悔いているはずいまだってどんなに月日 経とうともすすり泣くよに 降る雨は私の目には 母しぐれいいえ他人の 空似だと言い切る口許 震えてたうわさ尋ねた 居酒屋の女将の頬の 泣きぼくろ紺の暖簾を 濡らしてたあの夜の雨も 母しぐれわが子見捨てた その罪の罰なら充分 受けたはず恨み忘れ...