• 木下龍太郎

    「337」
  • 夜汽車

    夜汽車

    すがるお前を 叱りつけ無理やり乗せた 終列車迎えに行くから 故郷(こきょう)の空で身体(からだ)を治して 待つがいいああ 夜汽車よ 急げ!泣き濡れた 顔を見るのが つらいからつらいからごめんごめんな その肩に苦労の荷物が 重すぎた親御(おやご)に逢ったら 伝えておくれ俺が一言 詫(わ)びてたとああ 夜汽車よ 急げ!振り...
  • 陽炎

    陽炎

    しずく哀しいかかり湯を何度も浴びて髪を梳くあなたの匂いは取れたでしょうか北のはずれの湯の宿は窓の下まで 日本海ひとり枕で 眠るのに温もりさがす 手が憎いあなたと暮した 長さでしょうか灯り落とせば潮騒の音がひと際 日本海湯気で曇った 天窓の朝陽が肌に 紅を差すあなたの愛から 醒めたでしょうか夢はかげろう 泡雪の波の花散る...
  • 丹波越え

    丹波越え

    恋に逃れて 行くことを京都では丹波越えと言うのですあなたと二人のみちゆきで本当は越えて みたかった空蝉の この世の旅に花を散らして 風が立つ胸の残り火 消えるまで終らない 丹波越えの続きです幸せどこかで すれ違い身を引くように 出来ている忍ぶ坂 忍んでまとう花はむらさき 旅衣女に生れた 歓びを束の間知った 夢一夜道連れ...
  • 志乃

    叶うものなら 暖簾(のれん)を捨てて従(つ)いて行きたい 恋一路(こいいちろ)かんにんぇ かんにんぇきつう きつう かんにんどすぇ京に生まれて 京に死ぬ志乃(しの)は哀しい 老舗(たな)育ち手描(てが)き友禅(ゆうぜん) 京友禅(きょうゆうぜん)を脱いで畳んだ 乱れ籠かんにんぇ かんにんぇきつう きつう かんにんどすぇ...
  • 堂島川

    あかん時こそ 商人(あきんど)ならば勝負時(どき)やと 精を出す遅い帰りを 堂島川の月と一緒に 今日も待つ愚痴が嫌いで 負けん気の強い貴方(あんた)に 強い貴方に 惚れ直す親も老舗(しにせ)も 恋ゆえ捨てて持ったひと間の 新世帯何も無くても 貴方(あんた)の夢が私(うち)の支えや 生甲斐や派手にやりまひょ 曽根崎で呑ん...
  • 利休絶唱

    利休絶唱

    天下人でも 頭を下げてくぐる数寄屋の にじり口人に上下の ないのが茶の湯千利休の 点(た)てる茶は侘(わ)びと寂(さび)との 黒茶碗明日のある身を どうして絶ったお吟哀しや 痛わしや親の想いが 解るか花も咲いたばかりの 詫助(わびすけ)が今日も一輪 泣いて散る造り物なら いつかは朽ちる天にそびえる 聚楽第今宵詰腹 切ら...
  • 風花の宿

    風花の宿

    雪になれなれ 海にも積もれ明日の出船が 止まるまで添えぬあなたと分っていても思い切れずに すがりつく窓にひとひら ああ 風花の宿これが最後の 短い一夜せめて燃えたい 燃やしたい濡れて冷たい 湯上がり髪を梳かす鏡の やせた手に櫛が重たい ああ 風花の宿燃える漁火 泣く潮騒の海に別れの 朝がくる眠るあなたを 起こさぬように...
  • 君待草は咲いても

    君待草は咲いても

    約束は 約束は別れるための なぐさめかひたすらに ひたすらに信じていまも 待つものをあの恋は 帰らない君待草の 花も咲くのに死ぬよりも 死ぬよりもこの世の愛の 強いことこの胸に この胸に教えてくれた 人なのにあの恋は 帰らない君待草の 花も咲くのにいまはただ いまはただ忘れるだけが しあわせか哀しみを 哀しみをこころに...
  • 国定忠治

    (台詞)「赤城の山も今夜を限り、生れ故郷の国定の村や、縄張りを捨て、国を捨て、可愛い子分の手前(てめえ)達とも別れ別れになる道途(かどで)だ。」強い者だけ 大手を振って渡る世間に 横車押して追われて今宵限りの 赤城山月を浮かべた 水盃を干して忠治の 男泣き『たとえ義理でも 親子の縁を切って来たのか 渡世ゆえさぞや辛かろ...
  • ひとり雨

    連れは一日 遅れて来るとその場つくろう つくり言湯宿にいつか ひとり雨泣きに来たのを 気付かれまいと女ごころの あー 見栄を張る呑めもせぬのに 頼んでみたがやはり余って 燗冷ましひと夜が長い ひとり宿障子閉めても 雨音までがまたも貴方の あー 声になる湯冷めしたのか 髪まで冷える添い寝するよに 抱き枕夜通し窓に ひとり...
  • むかい風

    苦労を避けて 歩いてもツケは後から 従いてくる嵐に背中を 向けないで渡りゃ陽のさす 道がある男の明日を つくるのは寒い世間の 寒い世間の 向い風尻っぽを巻いた 負け犬になんで他人が 腕を貸す傷つきながらも 立ち上がる意地に女は 惚れるもの男の明日を つくるのは頬を打つよな 頬を打つよな 向い風笑って胸に 風を受け凧は天...
  • 寄り道酒場

    酔って羽目でも 外さなければ重いばかりよ 肩の荷はそうよ…ここは人生 寄り道酒場聴いてあげるわ 愚痴ばなしお酒は お酒は 心の洗い水恋の傷なら 一つや二つ持っているのよ 誰だってそうよ…ここは止まり木 寄り道酒場覚えあるわよ 私にもお酒は お酒は 未練の忘れ水他人は他人だと あせらず行けばいまに変わるわ 風向きもそうよ...
  • 螢火海峡

    私と海と どっちが大事無理を承知の 尋ねごとあなた あなた 行かないで女ごころの 未練火が螢となって 船を追うホー ホー 螢火海峡テープと同じ 港の恋は汽笛ひとつで 捨てられるあなた あなた 大好きよ消すに消せない 残り火が螢のように 身を焦がすホー ホー 螢火海峡しあわせ一夜 泣くのは千夜帰るその日は いつのことあな...
  • とっとり恋物語

    お前を前から さがしていたのさ貴方に逢うため 生まれて来たのよ知らない間に 結ばれた絆と言う名の 赤い糸離しはしない離れはしないああ 鳥取 若桜橋ふたりの恋物語女の全てを 貴方にあげたい男の生命を お前に賭けたい近くにあるのも 知らないで倖せたずねて 遠まわり離しはしない離れはしないああ 鳥取 智頭橋ふたりの恋物語お前...
  • 嫁入り峠

    親の欲目と 世間は言うが似合うお前の 高島田世話になったと 礼など言うが泣かぬつもりが 男泣き嫁入り峠をナー ああ 峠をヨー越えりゃ他人の 花になるもしも母さん この世にあればあれもこれもの 晴れ支度せめて人並み する気でいてもこころ届かぬ 男親嫁入り峠のナー ああ 峠のヨー影に済まぬと 手を合わす後の心配 するより先...
  • 雪割桜

    こころの傷など 元通りこの手で縫って やると言ういいの本当に 本当に信じても貴方の愛の ぬくもりに世間の冬は 厳しいが蕾ふくらむ 雪割桜近くの誠は みえなくて遠くの嘘に あこがれる馬鹿ね女は 女は夢見鳥貴方の愛の やさしさに片意地張って 遠まわり咲く日遅れた 雪割桜一度は過去ある 女でも一生従いて 来いと言ういいわ短い...
  • 北の恋祭り

    土佐の男は 黒潮育ち度胸磨いた 向う見ずたとえ遠くに 離れていても通うこころは 海つづきヤーレン ソーラン ヨサコイ ソーランヨサコイ ソーラン ヨサコイ ハイハイ年に一度の 祭りならよさこい ソーラン ああ 恋祭り北の大地に 育った花は耐えた分だけ きれいだよ夏が来るのを 指折り数え見せてやりたい 雪の肌ヤーレン ソ...