• 前田俊明

    「1551」
  • うぐいす

    うぐいす

    まるで私の 身変わりに命しぼって 鳴きじゃくるうぐいす うぐいす もういいの愛し恋しで 明け暮れて未練断ち切る 術もない愚痴や弱音を こぼせたらお酒なんかにゃ すがらないうぐいす うぐいす 鳴かないで思い出すから あの人をひとり淋しい はなれ茶屋ひとり寝返り 打つ度に肌があなたを 恋しがるうぐいす うぐいす 飛んで行...
  • 波止場雨情

    波止場雨情

    心結んだ 桟橋なのにふたりを引き裂く 橋になるあなたお願い 行かないで風よあの船 引き止めて波止場しぐれて 波止場しぐれて啼(な)く汽笛灯(あか)りこぼれる 待合い室で涙で見つめる 時刻表ふたり暮らした 長さだけ未練ばかりが からみつく波止場しぐれて 波止場しぐれて人もない逢えば別れの 運命(さだめ)が憎いいつでもしあ...
  • やすらぎの酒場

    やすらぎの酒場

    夜更けの 店の灯りの寂しさに男心が つらくなるそっと揺らした グラスには夢の破片(かけら)だけ今夜は なぜか帰りたくない冷たい部屋に酒を静かに 注ぐ女(ひと)の微笑(ほほえみ)が沁みるよ やすらぎの酒場まぶたに 過ぎた月日を浮かべればむせぶ煙草の ほろにがさ人を傷つけ 傷ついて悔やむことばかり今夜は なぜか帰りたくない...
  • 追分みなと

    追分みなと

    春は来たけどヨー 江差の海に惚れたあんたは 帰っちゃ来ないふたり離れて 三年三ヶ月(みつき)今も忘れず 待ってると伝えておくれよ かもめ鳥ヤンレサかもめ鳥翼あるならヨー 海峡越えて翔んでゆきたい 都の空へひとり恋しい 名前を呼べば港日暮れて 夜が来て涙で滲(にじ)むよ 漁火がヤンレサ漁火が北の浜辺にヨー ハマナス咲けば...
  • こころ川

    こころ川

    なみだ雨降る 世間の川は好きなだけでは 渡れない人眼きにして うしろを歩くわたしを叱って 抱き寄せたあなたと生きて いいですか…こころ川酒に浮かべた おんなの夢をそっと両手で 温める負けちゃ駄目だと やさしく庇(かば)うあなたの情けが 嬉しいのも少し飲んで いいですか…こころ川きっといつかは 許してくれる人の噂も 世の...
  • 哀愁運河

    哀愁運河

    泣いていないか 恨んでないかおまえを独り 残したことを小樽 ガス灯 哀愁運河明日(あす)の見えない 恋だから理由(わけ)さえ告げず 別れた北の街荒れていないか つらくはないか酔えない酒に 溺れてないか未練 粉雪 哀愁運河恋の名残りが 追って来るまぶたに滲む たそがれ北の街呼んでいないか 捜してないかはかなく消えた 幸せ...
  • ゆれて遠花火

    ゆれて遠花火

    無邪気な恋 あれは夏まぶしすぎる あなたがいたの涼風(すずかぜ)立ち いまは秋なぜ黄昏に 泣くのよ傷 ひとつない 青春などこの世にないよと 言われて恋花火 ゆれて遠花火はかなく消えて行(ゆ)く さだめに夢花火 遠花火ああ あなたに 逢いたい髪型変え 口紅も別な女性(ひと)を 真似したけれど心だけは そのままにただ想い出...
  • 横浜ハーバーライト

    横浜ハーバーライト

    息が切れるほど あなた探したのサヨナラさえ 言わないまま 消えてゆかないでおねがい もう一度 抱きしめに来て追えば逃げてゆく それが恋ですかひとり 風の中泣き出すように ついてく ハーバーライト横浜 きっとこの街は 誰もが旅人横浜 きっと私から あなたも旅立つの…白いドアを開け ホテルのロビーで窓辺の席 あなたの乗る ...
  • 木の葉舟

    木の葉舟

    はるか千里の 海原を渡る蝶さえ いると言う逢いたさが 舟になり恋しさが 漕ぎ出すのあなた あなた 心の人だからさがす海峡 木の葉舟港あかりが 映し出すにがい涙の 想い出をせつなさに 寄せる波はかなさに 鳴くかもめあなた あなた この世のしがらみにうねる海峡 木の葉舟いくつ悲しみ 越えたなら風の噂に たどり着く逢いたさに...
  • たつのくち恋歌

    たつのくち恋歌

    白山(やま)はひぐれて 湯の宿はあなた待つ町 たつのくち湯殿の湯けむり いじわるですか早くかえして 愛しいお方胸に切ない いで湯恋歌 恋の宿花の菖蒲で 夏が来る丘のあか松 蝉しぐれ虚空蔵太鼓(こくぞうだいこ)の こだまに揺れて未練あかあか 面影しのぶ加賀の裾野に おんな恋歌 恋の夢恋の結び目 わかれ目を結びなおせば た...
  • あゝ坂本龍馬

    あゝ坂本龍馬

    土佐は狭いぞ 江戸へ出て俺は日本を 洗濯いたす夜明け間近な 幕末維新大志抱いて 命を賭ける世界をめざす あゝ…坂本龍馬惚れたお龍と 寺田屋に世間しのんだ 灯りが暗いついてくるのか 刃(やいば)の下をくぐり抜けても 絆は切れぬ情けに生きる あゝ…坂本龍馬怒涛逆巻く 海原が俺の出番を 待ってるものを望み半(なか)ばで 身を...
  • やさしい日々

    やさしい日々

    すごく不安な 寂しい夜もそばにあなたが いるだけで心がそっと 落ち着いた甘えていたの… ごめんなさいもう一度だけ もう一度だけ幸せ顔で あなたと共にあなたと共に 過ごしたい「泣きたい時は 胸貸すよ」涙でぬれた その胸に包まれながら 眠ってた甘えていたの… 温もりにもう一度だけ もう一度だけやさしい日々を あなたと共にあ...
  • さすらい港町

    さすらい港町

    霧笛がせつない ため息ならば夜霧は恋しい 涙だよ愛に嘘など ないけれど今は出来ない 倖せにさらば…おさらば… 可愛い女(ひと)よ釧路 青森 流れて石巻夕陽の海峡 出てゆく船に未練のしぶきが 降りかかる過去の傷もつ この俺にゃ綺麗すぎるよ あの純情(こころ)さらば…おさらば… やさしい女よ明石 舞鶴 流れて糸魚川ふるさと...
  • 奥能登ひとり

    奥能登ひとり

    あなたが この町 旅しなければ泣かずに 暮らした はずでしたここは奥能登 鉢ヶ崎(はちがさき)いで湯の郷で 燃えた恋…みんなあなたに あげたのになんで置いてく みれんの涙昨夜(ゆうべ)の嵐が 散らした 紅葉(もみじ)ひとひら 荷物に 忍ばせるここは奥能登 葭ヶ浦(よしがうら)ランプの宿の 秘めごとを…昔ばなしに しない...
  • はぐれ雲

    はぐれ雲

    あんな野暮天(やぼてん) おさらばと下駄を蹴飛ばし ケリつけたなんで今さら 旅の空祭りばやしの 笛の音(ね)に胸のほの字が また燃える……呼べば泣けそな 呼べば泣けそな はぐれ雲ねじり鉢巻き 左巻きお鈍(にぶ)すぎるよ 甲斐性なし追って来たって 知らないよやけでつよがり 並べても花を手向ける 目に涙……見ないふりして ...
  • 夜泣酒

    夜泣酒

    夜よおまえを みちづれにひとり手酌で 呑むお酒逃げる男が 悪いのか尽くす女が 馬鹿なのか愚痴を注ぎ足す 夜泣酒胸のすきまに 風が吹く酔えば酔うほど 傷に泣くめぐり合わせに 背かれて春が過ぎたら また冬が情つれづれ 夜泣酒酒のしずくは なみだ味みれんお猪口に 残るだけ不幸ばかりを 追いかけていつも幸せ 遠まわり外は時雨の...
  • 秘恋傘

    秘恋傘

    枝垂(しだ)れ桜の はじらいをのぞく篝火(かがりび) 円山月夜(まるやまづきよ)待てど暮らせど 逢えない恋人(ひと)に焦(じ)れるおんなの 花乳房まるで人形… 恋人形どうか逢わせて 京の春名残り螢(ほたる)の こぼれ火が闇に糸ひく 曼陀羅(まんだら)川よしのび逢わなきゃ いけない背中(せな)にすがるおんなの 細いゆびま...
  • 夢桜

    夢桜

    新妻(にいづま)きどりで あ・な・たと呼べばちょっと照れてる よこがおが好き北向きの あゝ三畳一間(ひとま)いいのあなたと 一緒ならいつか咲きます 咲かせましょ倖せ 夢桜ないない尽(づ)くしと あやまらないでそれを承知で 惚れたんだもの気にしない あゝなんとかなるわ傍(そば)にあなたが いるかぎりきっと咲きます 咲かせ...
  • 湯の町みれん

    湯の町みれん

    ついて来るかい 行きますと天城を越えたあの夜は還(かえ)らぬ まぼろしか小雨の修善寺 湯もやの桂橋あゝ思い出を 捨てながら こみあげる女ごころの涙雨 湯の町みれん遠く聞こえる 蝉(せみ)しぐれ淋しさ誘う面影さがして さまよえば狩野川(かのがわ)せせらぎ 女の愛の日があゝなつかしく よみがえる この胸にひとりいとしさ抱き...
  • 夢灯籠

    夢灯籠

    木漏(こも)れ日淡い 石段をあなたとのぼる 秋の暮れふたりの幸せ 逃げないように社(やしろ)の前で 祈ったの灯籠(とうろう)の灯りが あゝ風にゆれる私の愛の 夢灯り冷たい風に散る 落葉風邪でもひくと いけないよあなたはコートを 私の肩にやさしくかけて くれました灯籠(とうろう)の灯りが あゝ炎(も)えて見える女の胸の ...